第36話 紫都香さんとデート
今日は紫都香さんとデートすることになっていた。
紫都香さんに事前にどこに行きたいかを聞いてみたところ、学生みたいなデートがしたいと言われた。俺は誰かと付き合ったことが無かったので調べながらデートのプランを考えた。
「まずはご飯を食べに行くんだっけ」
「はい、一緒に食べたいって言ってた学食を食べに行こうと思います」
紫都香さんはこの間、俺が大学の食堂でお金を貸した事を話した時に一緒に学食が食べたいと言っていたので最初は学食で腹ごしらえをすることにした。
大学に着き、食堂へ向かう。大学内を歩いている学生もちらほら見かけるが休み時間ではなく講義の時間という事もあってか比較的少ない。
食堂内もまた人は多くなく、料理を持って席が空くのを待つなんてことはせず席に着く。
「悠くんは何にしたの?」
「俺は豚丼です。これって昔からあるメニューらしいんですけど。紫都香さんは食べた事ありますか?」
「一回だけ食べた事あるよ。美味しかったんだけどね、ちょっと胃もたれしそうだなって思ってそれ以降食べてない」
「そうだったんですね。紫都香さんは何にしたんですか」
「わたしは悠くんがさっき選んでる時におすすめしてくれた冷しゃぶうどんにしたよ。……一口あげるね」
うどんの一口は難しいと思いながら有難くいただく。
「俺も一口上げますね。一口なら胃もたれもしないと思いますから」
貰った分紫都香さんにも返して食事を進めた。
「次は映画を観に行くんだっけ?」
食事も終わり食堂から出た所で紫都香さんが次の予定を確認してきた。
「はい! 紫都香さんとこの前観ていた映画の続編が今やっているらしいのでそれを観に行こうと思ってます」
仲が深まった関係の人と行く映画は効果的だとネットに書いてあったので映画を観ることを今日のデートのイベントの一つとした。
隣の人の顔が見えるくらいの暗闇の中で映画を観る。また、その後に映画の感想を言うという名目でカフェにも誘いやすい。
映画館へ向かう途中、紫都香さんがそっと手を伸ばしてきたので俺はすぐにその手を取って繋ぐ。繋いだ瞬間、紫都香さんは嬉しそうに微笑んだので俺もその表情を見ているだけで幸せな気分になった。
映画館に到着してチケットと飲み物を買ってからシアターに入る。
席は真ん中あたりを選んだが俺の左隣にも紫都香さんの右隣にも人は来なかったので気にせずに映画を観ることが出来る。
俺は前作を紫都香さんと見た時にあまり頭に入っていなかったので再度観てから来たので一応内容は頭に入れることが出来ている。
シアター内が暗くなり、映画が始まった。俺は紫都香さんが映画に夢中になっている姿を眺めてしまう。このままでは映画の内容が頭に入ってこないと思い、映画に集中することにした。
俺は右手を肘掛けにおくと紫都香さんの左手と重なってしまった。このシアターでは座った人の左側がその席の肘掛けになっているので俺が間違えた、と重なった手を離そうとすると紫都香さんに掴まれる。
俺は重なった手に向けていた視線を紫都香さんの顔の方へ移動させる。紫都香さんは映画が映っているスクリーンに視線を向けている。
視線は他を向いているのに手を離す気配が全くない。仕方なく俺は手を重ねた状態から繋いだ状態にする。
繋いだ手をそのままに俺もまたその状況に慣れたので映画をじっくり観る事にしていた。
物語の山場が終わった辺りで紫都香さんは俺と繋いでいる手をもじもじさせたので、離したいのかと思って手を広げる。しかし、紫都香さんの手は離れるのではなく俺の開いた手の指と指の間に空いている隙間に指を入れて来た。
そして再度手を繋ぐ。今度は映画館に向かっていた時とは違い恋人つなぎで手を繋いだ。
エンドロールも終わり、完全に映画が終わったシアター内。未だ席に座ったままの俺と紫都香さんはこの後どうするかを話し合った。……もちろん手は繋がったまま。
「近くにカフェがあったしそこでゆっくりしない? 今はデ、デートなんだし」
映画が終わり、明るくなったシアター内で顔を赤くする紫都香さんの顔ははっきり見えた。
「そ、そうですね。カフェ、行きましょうか……」
調べると近くにカフェがあったので映画館から移動し始めた。一度手を離したのでカフェに向かう間はもう手は繋がないのかと思ったが映画館を出て数歩だけ歩いた辺りで思い出したかのように手を繋いでくる。
俺を待つのではなく紫都香さんから繋いできたことにびっくりしたものの俺も繋がれた手を握り返した。
外では恥ずかしいのか恋人つなぎではない繋ぎ方で並んでカフェに向かって歩き出す。
カフェで俺はカツサンドを、紫都香さんはパイナップルジュースを注文した。映画の感想を語りながら、互いの注文したものをシェアしながら休憩をした。
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