第25話 2泊3日の修羅場 3
痛いの飛んで行けを要求してくる有佐。
おでこを思い切り壁にぶつけていた様で赤くなっていた。仕方なく痛めた所をふわりと触り満足が行くように例の如く呪文のような文章を唱える。すると満足したのか不満足なのか表情では分からないがすっかり痛みは引いたようだ。
さっきまでの雰囲気から一変、四人はようやくダイニングテーブルに腰掛けてお茶を飲みながら話す体制になることが出来た。俺が求めていたしっかりとした話し合いの場だ。
しかし、一つ問題点がある。それは話合いに俺が入れない、ということだ。
「つーまーり、運命の人に電車で再会したから一緒に住むことになったってことですか? どう思う、詩ちゃん」
「え、えーっと、私に内緒で一緒に住むっていうのは嫌だった。勿論私にちゃんと知らせてくれるのなら構わないんだけど」
「うーん、有佐が求めてた解答とは違うんだけど……。だめ! 有佐と詩ちゃんがいない時に二人で住むのは禁止です!!」
「私は今教えてくれたし、大目に見てもいいんじゃないかなぁって思うんだけど。ただお兄ちゃんが私にも甘えさせてくれるんだったら……」
詩は椅子から立ち上がり斜め前に座っている俺のところへやって来ると膝を床につけて俺の太ももに頭を乗せて来る。
「ちょ、ちょっと待って下さい!! わたしの意見はどうなるんですか? わたしは運命の王子様である悠くんと一緒に居たいんです。貴女の意見は通しません。ずっと悠くんの側にいます。なんと言われようと居続けます」
俺が言葉を発しようとする前に詩から二人に提案が持ち上がった。
「料理対決っていうのはどう? もうすぐお昼ご飯の時間になりそうだし」
俺の太ももに頭を乗せながら呑気に話す詩。可愛らしくて撫でたくなったので二人にバレない様にそっと髪を撫でる。詩がヘヘッと声を出すも、二人は決着を着けることに必死になっている様で気付かない。
「「お昼ご飯何がいい」」
二人の顔が同時にこちらに向くのでびっくりして後退りしてしまう。
「じゃあ、オムライスが食べたいかな」
「悠くん!!」
「うっ、オムライス……」
俺は詩も好きな料理でぱっと浮かんだオムライスを言っただけだ。しかし、なんということか、紫都香さんが一番最初に俺に教えてくれた料理……。一番得意だからすぐ美味しいオムライスの作り方教えてあげると言われた。
狙ってオムライスと言ったわけではない。
しかし、明らかにやらかしたなと感じた。それでも紫都香さんの笑顔を見てしまっては今更違う料理で、なんて言える訳もなく俺はさっきまで太ももに頭を乗せていた詩を膝の上に乗せて料理が終わるまで待った。
出て来たオムライス。紫都香さんのオムライスはふわふわの卵がチキンライスに乗っかっていて俺が作り方を教えて貰った時に見たあのオムライスだった。
対して有佐の方のオムライスはというと、チキンライスの上に卵焼きが乗ったものだった。なぜ卵焼きなんだ……。
「あの、卵料理を卵焼きしか知らなくて……だから卵を焼いて上に乗せちゃった」
料理の見た目は紫都香さんの圧勝だった。次は味だ。
俺と詩は横に並び、食べ始める。
俺はまず、一度食べたことのある紫都香さんの方を食べた。詩は先に有佐の方を食べた。感想は俺も詩も美味しいだった。俺は口の中で溶けるほど卵がなめらかでチキンライスと相まって美味しかったという感想。詩の方は甘くて美味しかったという感想。
次は交換して食べ比べてみる。確かに卵焼きに砂糖が入っていて意外と口も拒否することは無く食べ進めることが出来た。詩の方はと見ると『おいひぃ』と小さい声で呟いていた。
俺が料理の内容をオムライスに決めてしまったせいで出来レースの様な勝敗を決めてしまった。
「やったぁぁ。悠くんこれからも一緒だよ」
紫都香さんは余程嬉しかったらしく抱き着いて来る。俺もそれを避けることなく受け止める目線の先に有佐が映る。
「いやだ。有佐のお兄ちゃん……離れて行っちゃいや」
俺は紫都香さんに抱き着かれたまま有佐の所へ数歩歩いて近づく。
「俺は離れないから。ずっと有佐のお兄ちゃんだから」
俺は一つ上の幼馴染として有佐にそう伝えた。しかし、どうやら違う意味にとらえたのか不敵に笑い出す有佐。何を勘違いしているのだろうか。有佐が何かブツブツ呟いているが小さくて聞えない。
「有佐のお兄ちゃん……有佐の物……有佐だけの物……有佐が一番」
お昼ご飯も食べたことでこれからどうするか、という話になる。
「何かしたい事ある?」
まずは俺が話を回す。三人によって話の方向が行方不明にならない為に俺が取り仕切る。
「2日間泊まることになるんだったら相手の事を知るべきだと思う」
紫都香さんが親睦を深めるための何かをしよう。と提案してくれる。
「お兄ちゃんこの前段ボール送られて来たよね。その中にゲームが入ってなかった?」
俺は届いた日に早速、紫都香さんと二人で遊んでいた事を思い出す。
「確かに届いたよ」
「うんうん。そうだと思ったよ。私が全部中身を入れたからね」
ちょっと待てよ、中身を全部詩が入れたってことはあの手紙ももしかして詩が入れたのか?! 母さんと父さんは来てる事を知ってるのか……?
「なあ、詩。母さんと父さんは詩がこっちに来てる事知ってるのか?」
「え、勿論内緒で来たよ」
あ……。
――――――――――
ついに5万字を超えることができました!!
あと1週間で5万字を更に投稿しなければならないので連投があると思います。(まだ一ミリもかけてませんが……)詰め詰めになってしまい申し訳ないです。ここまで呼んで下さっている方には感謝しかありません。是非最後まで読んで下さるとうれしいです。
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