第14話 サークル(もどき)会議
授業、隣に雪葉は居ない。昨日の話し合いでは途中で帰ってしまったが一度距離を取ってくれたらしく少し離れた所で授業を受けている姿があった。チラチラこちらを見ている気がするが迫られる恐怖がないのであまり気にならない。
昨日の夜、紫都香さんは雪葉には気を付けた方が良いと言われたけど雪葉の方から距離を取ってくれているので気を付ける必要はないと思った。
授業が終わり家に帰ろうと大学の校門の方へ向かっている所、呼び止められる。中性的な声で俺の知り合い……となると雪斗か。声のする方を向くとショルダーバッグを肩に掛けた雪斗が居た。
「今って時間ある?」
「今日の予定は無いし、時間あるよ」
「じゃあ、サークルの話をしたいから校門を出てすぐにある信号を渡った先のファミレスに行かない?」
あ、そういえば俺もサークルメンバーを確保したことも言ってなかったような……。
「俺も話したい事あったし、行こう!」
二人で目的のファミレスに向かう。中に入っても待つことは無く昼食時と夕食時の間ということもあって席も空いていた。
座ってすぐに注文するメニューが決まったので呼び出しボタンで店員を呼ぶ事にする。
「ご注文をお伺いします」
聞き覚えのある声、顔を上げると注文を取りに来た店員……蓮の姿があった。
「あ、蓮。ここでバイトしてたのか。雪斗、今日話したいって言ってたのはこの人がサークルに入ってくれるって話だったんだ」
「久しぶり、悠。実はここがバイト先だったんだよ。……それよりその子は?」
蓮は俺の対面にいる雪斗に視線を向ける。
「あぁ、サークルに誘っておいたのに言ってなかったな。この人は藍住優斗っていって俺が蓮を誘ったサークルを作り始めた本人。いわばサークル長みたいな人」
「初めまして、優斗です。気軽に優斗って呼んでください。僕も今年から大学生になったので呼び捨てで大丈夫です」
「あ、宜しくお願いします。オレは葵崎蓮って言います。……同級生なんですね。分かりました。じゃあオレの事も蓮って呼び捨てで大丈夫です」
いや、注文を取りに来たのに個人的な話しを始めたのは俺だけどさ……仕事中なのにこんなに話していても大丈夫なのか……?
「シフトがあと少しで終わるから、その後オレも合流してもいいかな?」
「「もちろんいいよ」」
返事をすると蓮が去って行こうとするので引き留める。
「待って待って、注文できてないから」
雪斗はくすっと笑みを零し、蓮は顔を俯かせながら注文をどうぞと言って来た。
無事注文することが出来た。
俺と雪斗はご飯を食べにきたわけでは無かったのでドリンクバーと二人で食べるようにフライドポテトを注文した。
「それで、雪斗は何か話あったりする?」
蓮が居なくなってもジュースをズルズル飲みながら話を続ける。
「まだサークルとして成り立っていないけど、親睦を深める為に何処かに行きたいなって思ってて、その話し合いをしたくて」
確かに親睦を深める為にどこかへ行くっていうのは効果的な気もするが、どこへ行くにしても肝心のメンバーについて改めて確認すべきだろう。
「もう一人サークルに誘った子もいるけど……それでも四人なんだよ。それにその子は女の子だからもう一人女の子が居て欲しい」
「言うのが遅くなっちゃったんだけど実は、僕も一人勧誘することが出来たんだ。曖昧な説明だけど真面目に聞いてくれてこの人なら仲良く出来そうだなって思って来て欲しいといったらあっさり承諾してくれてね」
「また、男が増えたって感じ?」
「実は今日の本題っていうのは何処かへ行きたいっていう話ともう一つあってそれは彼女と顔合わせをして欲しいからだったんだ」
彼女、つまり女の子が来るらしい。となれば人数も五人だし人数比も偏ることは無くなる。
蓮がシフトを終える前にその雪斗が誘った女の子が現れた。髪は黒髪ボブで服装はダボッとしたTシャツとパンツ、身長は低く雪斗よりも明らかに小さい華奢な体格をしていた。
「ボクの名前は
ソワソワしながら嫌われないように、まるで相手の沸点を伺うかのように自己紹介する星さん。過去に何かあったのは間違いない。でも今それを追求するべきではないと流石の俺でも理解しているので普通の自己紹介をされたように振舞う事にする。
「よろしく、俺の名前は上田悠。悠って軽く呼んで良いからね」
「は、はい!」
ボクいじりをされなかったのが嬉しかったのかハキハキした返事をしてくれた。
その後、蓮も加わって話し合いがスタートした蓮は話し合いに入って間もない間はさっきまで働いていたバイト先から帰らず居続けるということに恥ずかしさを感じていたが割とすぐに慣れたようだった。
ここまで人数がそろっているのなら雪葉だけが話し合いに参加できていないのは少し可哀想な気がする。
最終的にゴールデンウィーク中に動物園か水族館へ行くことが決まった。
「この話し合いを雪葉っていう俺が勧誘した女の子にも伝えておいていいかな」
「うん、そうしてくれると嬉しい。まずは皆の仲を深めることが重要だと思うから」
「女の子が他にもいたんですね!! 仲良くなれたら嬉しいな」
「じゃあ、グループラインを作るから、そこにまた日時とか詳細を連絡して行こう」
話し合いはそこで終了し、解散した。
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