第8話 サークル探し
親睦会をやる予定だったのだが蓮は熱が引かず悪化してしまった妹の看病で来れなくなってしまい、友達作りを一つの大学での目標にしている雪葉にも用事があるから『やっぱりまた今度しよう』と断られてしまった。
履修の本登録まで時間はまだあるのでそれまでは気負いせず大学生活を楽しもうと思っている。
まずはその一つである交友関係の拡大の下準備としてどんなサークルがあるのかを見に行く事にした。
蓮はバイトを沢山するらしくサークルには入らないと言われた。
確かに俺もバイトはしなければならないのであまり活発に活動するサークルは避けようと思いながらサークルを探すことにする。
片っ端から声を掛けるのも良いがしっかり自分に合っていそうな雰囲気のサークルに入りたかったので一度遠くから勧誘エリアを眺めてみる。
サークルには公認と非公認があり、公認のサークルの場合、部費的なものは出るが勧誘時は決まった場所でしか行ってはいけないという決まりがあるらしい。
あっちでは男の集団が女の子にばかり勧誘に行っている。
あそこでは簿記習得サークルが何やら難しそうな説明をしている。
すぐそこでは桜の咲く季節では珍しいスキーウェアを着てウィンタースポーツサークルの勧誘をしている。
サークル観察を遠くからしている俺のところに一人の小柄な可愛らしい子が話しかけてくる。
「あの、僕のサークルに入ってくれませんか」
サークル勧誘、ぼくっ子の先輩……。美男子とも取れるような容姿。
元から金髪なのかと思わせるほど似合っている透明感を持った金色のショートボブに長いまつ毛をクッキリ二重に具えた美貌を持つ小柄な先輩。
足も色白で細く、この子がミスコンとやらに出れば優勝出来るなと思ってしまうほど可愛らしく、美しい。
つい紫都香さんと比べてしまうが、恐らくいや、間違いなく髪を染めない代表と染める代表としてこの学校の二大美人となっていただろう。
公認サークルではないのだろうか……。
サークル勧誘エリアから離れたここまで勧誘にわざわざ来てくれたので少し話だけでも聞いてみよう。
「なんのサークルなんですか?」
独特なサークル名しかわからなかったので当たり障りのない単純な質問をしてみる。
「えっと、その、まだ決めてないんですけど。色々サークルです」
何をするサークルかもまだ決まっていないサークル……何故そんなサークルが存在出来ているんだ? 活動許可を得ているのか? それとも同好会かな?
「今までやって来た活動の例とかは無いんですか?」
「実はまだサークルとして設立していなくて……僕は今年からこの大学に入った一年生で自分に合う雰囲気のサークルがなさそうだったので自分で作ってみようかなと思っていて、今そのサークルの一員を探しています」
まだサークルとしては、というより同好会も含めた活動団体にさえも届いていないということか。それであの勧誘のエリアには行けなかったと……。
つまり今は雰囲気合いそうな人を誘っている段階で、活動内容は後から決めようと思っているだろうか。
「さっきからこの見た目だから女の子と勘違いされて他のサークルに勧誘されるばかりで声を掛けられなくて、だから君が最初に声を掛けた人」
……男、なのか。美男子に見えそうな女の子ではなく女の子に見られてしまう美男子ということか。
俺に声を掛けてくれたということは俺はこの子に認められたってことだよな。
「今の所何人くらい集めようと思っているんですか?」
「五人以上ですかね? 万が一サークルを大学側に公認にして貰う場合、この学校では最低五人以上と決まっているらしいので」
「なるほど。俺は活動のスケジュールの柔軟性が高ければ入ることは出来ると思います。活動内容によってはアレですけど……」
「活動内容はまた、考えます。活動スケジュールも今はまだ……。また今度会った時に誘います。だからその時まで他のサークルを見に行っても入るのは一度待って貰いたいです」
履修の本登録が終わってからは忙しくなる可能性もあるけど今は特に忙しくする予定もない。
それに強制で入れと言われている訳でも無く、他のサークルを見に行っても良いと言われているので別に断る理由もない。
何より名前も知らない彼に対して俺も嫌に感じることは無かった。
「名前だけでもお互いに知っておこう。俺の名前は上田悠といいます」
「僕の名前は
「やっぱり同い年だしタメ語の方が自然だよね。同い年で敬語はちょっと不自然だしさ」
「じゃあ僕もタメ語で話しま……話すよ!」
それから俺は雪斗がどんな人を入れたいのか、今考えてる範囲でどうしていきたいのかを聞いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます