3.取るべき行動

 解放されたリーシャによって、エリナが災厄の魔女になったことを知った


 エリナは完全に自我が消え去る前に、リーシャを逃がしてくれたそうだ。


 アフロディ―テとなったエリナは、覚醒したその日に、二つの町と三つの村を焼き尽くした。


 もはや、セレナ王国はエリナを討伐対象としてしか見ていない。


 すぐさまカイン王子の手によって討伐隊が編成される。


 その討伐隊に俺は組まれていない。


 大切な肉親を討たなくていいようにと、カインに配慮されたのだ。


 それ以外にも、感情に流された俺が、隊の足を引っ張る可能性を考慮したのもあるだろう。


 どちらにせよ、俺の存在は邪魔でしかいない。


「ルーク、お前は自領に戻って待機していてくれ。わかっているとは思うが、勝手な真似はするなよ」


 カインの念を入れた言葉に従うしかなかった。


 言われた通り、俺は自領であるクランベル領に戻った。


 領にある屋敷の自室から夜の空を眺め、逃げることのできない現実を受け入れようとした。


 国とアフロディーテとなったエリナとの戦いが始まって、二週間が過ぎた。


 風の噂では、エリナは戦いで徐々に傷を負い、力を失いつつあるそうだ。


 もうすぐ決着が付くと、セレナ王国の民は安堵している。


 エリナの死で国が喜ぶ。そう考えるだけで、やり場のない怒りがこみ上げた。


 しかし、俺にできることは何もない。


 俺はただ毎日、時が過ぎるのを待つだけだった。


 だが……日に日に増していく、悲しみ、怒り、絶望と希望が絡み合う感情が、俺を突き動かす。


 月の光が雲に遮られることなくセレナ王国を照らす夜の世界に、俺はエリナと会うため、馬を走らせた。


 エリナが今どこにいるのか俺にはわからない。


 それでも馬を走らせずにはいられなかった。大人しく屋敷に閉じこもっていられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る