第五話:王女の実力
師匠との特訓1日目が終わった夜のこと。
私には攻撃手段ができた訳だけど。
「自動的に防御してくれる盾があれば・・・」
思い描く勇者像を考えると、だいたい片手に盾を持っていた。
それを自ら、敵の攻撃を防御するために弾いているのを想像していたけど私の戦闘スタイルにはあまり合わない。
「ウォータブレード」というこの世界には馴染のない魔法を無自覚に作ってしまったから、どうにか防御できる魔法がないか考えている。
もう辺りは寝静まったのか、しんとしている自室のベッドで横になっている。
「でも、あの盾って一方向にしか守れないよねえ」
ゴロゴロと寝返りをうち、無い頭にある知識を振り絞ろうとした。
寝返りをうつとベッドサイドテーブルにはランプがあり、それが目に入った。
その形は、卵のような形をしており、私の脳内には鶏の卵でいっぱいになった。
「卵、卵の殻・・・おお、これだ・・・すやあ」
私は思いついたことで全てが解決し、の〇太くんもびっくり早寝で夢の旅へ誘われるのだった。
最近の夢は決まって、戦うばかりの夢に変わってしまった。いつの間にか戦闘狂のような脳内になってしまったのか。何度も魔法を放ち、武器で突いて、血にまみれた。
* * *
聖歴1998年12の月。マーロウの冬は若干肌寒くも、雪は降らない。
特訓をし始めて、既に4か月ほど経った。課題の日が近づいていると、日が過ぎるごとに実感する。
毎日切っては殴られ、蹴られるもちょっと位のことでは死ななくなった。というか、卵から連想した魔法で死ななくなった。
私のオリジナルに生み出す魔法が目まぐるしく、成長を手助けしてくれた。
その度、師匠は驚いて説明を求められるのが既に面倒まである。
私たちの装いは冬服となり、今日の訓練はなぜか王国兵と共にある。
「王女殿下、ライスカンスラー様、フェヒクンストマイスター様に敬礼!」
「はあ!」
号令の通り王国兵たちは一斉に敬礼をする、誰一人ズレることもなく正確に同時だった。こんな大勢の軍隊を見るのは初めてだ。
「今回は王女殿下の視察も含まれている!気を引き締めよ!」
「はあ!」
あれ?これ視察とかいうやつ?師匠が年末にもっと効率的に訓練をしましょうと言ってきたからここに居るのだけど。
・・・あと、このナントカスターさんって聞いたことあるけど、この女の子は知らないや。
髪は真っ黒で、私や師匠よりか小柄で、目はブラウン。この子も今日は特訓をしに来たのかな?
「ウンディーネ様、お久しぶりです。今日もお美しい」
言った側から話しかけてきた・・・!こんな可愛い子、私は知らないです。
えっと、えっと、記憶を呼び覚ますんだ!
ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。
宰相の娘だった。幼いころ会ったことはあるけれど、一緒に遊んだとかそういう類の記憶はなかった。ただ顔を合わせただけみたい。
「どうもありがとう。こんなにも大きくなって・・・」
あれ、私の口から物凄いおばさんくさい言葉が出た。
それを聞く、ローレ・フォー・ライスカンスラーは目を丸くしていた。
「ウンディーネ様はユーモアでいらっしゃる」
「えへ、へへ・・・」
こんな可愛い子から褒められるなんて、とよく考えてみたらユーモアって褒められてるのかな?なんてどうでもいっか位に、口からは気持ち悪い笑い声が漏れてしまった。
「気持ち悪いですよ、ウンディーネ様」
「気持ち悪いとは失礼ですね」
今日も師匠は不敬なことを口走る。でも人前なのか口調が敬語になってる。
その瞬間にローレはクスクスと笑っている、ああ天使だあ・・・。
現実引き戻されるように師匠は兵士たちに挨拶をする。
「私はスリー家のローザモンドだ。今日は貴重な時間を共有して貰えることを光栄に思う」
「おお・・・」
師匠が挨拶をはじめると、なぜか兵士たちが声を漏らしている。そんなに師匠って有名人なのかな?まあ、兵士たちは平民も混ざっているから貴族からの有難い挨拶みたいなのに思われているのかもしれない。
「そして、ここにおらせられるのは共に訓練を行うウンディーネ王女殿下だ!」
え?ええええええ!?
視察で来たんじゃないの?
「おお・・・俺、初めて王女殿下をお目にかかれた」
などと様々なことを兵士がボソボソと言っている。
「それと知る者も多いだろうが、フォー家の令嬢、ローレ嬢だ。魔法を見て貰うといい」
ローレちゃんは魔法に精通しているのかな。こんな可憐な少女が魔法の天才とか、そういうのだったら魅惑的だ!是非ともお友達になりたい・・・!
色んな魔法見せて貰えたら改良しがいがあるかもしれない。
私は好奇な目をローレに向けるも、気づく訳もなく。
「皆さん、今日もよろしくお願いいたします」
今日も・・・?ローレちゃん、こんな可愛い顔して何とかブートキャンプやっちゃう人なのかな。凄い向上心だ。でも魔法使いにそんな筋肉いるのかな。
「ウンディーネ様、」
珍しく師匠が耳打ちしてくるものだから、びっくりして飛び跳ねてしまった。
なに、そんないつもとは違う行動をするなんて。
「どうしたんですか、師匠?」
「ローレ嬢は、勇者養成学校での成績は主席です。この様な発言を聞かれる訳には、いかないので小声で。ノーム王子殿下より強いです」
「へえ・・・!!」
ローレちゃんの好感度は爆上がりした。
王子より強くて、可愛いそして可愛い!二度言うくらいに可愛い。でも、そういう事は私より年上なのか。幼く見えるなあ。
「魔法だけの対決であれば、私は負けると思いますので。彼女の魔法を沢山見ておいてください」
師匠は耳打ちを終えると、兵士たちに向き直る。
「では、訓練をはじめて下さい。有意義な時間にしましょう」
挨拶を終えると兵士たちは2手に分かれていく、剣術組と魔法組で訓練は別みたいだ。師匠は片方へ、ローレは逆の方へ行った。
ローレちゃんの魔法を見ろということは、とりあえず着いて行けばいいのかな。
「魔法士団のみなさん、訓練をはじめましょう」
ローレについていくと、その場を取り仕切っている。日頃から面倒を見ているのか、兵士たちは素直に取り掛かっている。
兵士たちは、少し離れたところにあるよく分からない石板に向かって魔法を打ち始める。
その石板に魔法が命中すると、魔法は石板が吸い取った。
「おお・・・、魔法の訓練はこうするんだ」
「ファイアショット」
「ウォーターボール」
「ウインドカッター」
「サンドブラスト」
「ホーリーアロー」
「ダーククロウ」
兵士が一列に並び、個々に扱える魔法を行使している。目標となっている並ぶ石板
は変わらず魔法を吸収し続けている。
吸収した石板に変化があるとしたら、それぞれ吸収したとき何色かに発光すること。
ゆっくりとローレが私に近づいて一礼し、発言する。
「王女殿下、あの石板は魔力石カカシと言われるもので訓練用に作られたものです」
「ふむふむ」
こんな所にも魔力石が使われているんだ。便利だね~。もしかして、ヨハンが作ったのかな。
「発光する色で威力が分かります。赤は初級程度、緑は中級、青は上級。虹色は超級となっています」
「それで魔法の強さが分かるなんて、便利な物が出回ってるんですね」
「ふふ、魔法使いは虹色を目指すことを目標に日々鍛錬されています」
ふふって言った!ふふって!可愛い~。
「王女殿下も、一度体験されてみませんか?」
「え、私が?」
「ローザモンド先輩が魔法を見て差し上げて欲しいと仰っていましたので、僭越ながら私が今日の先生ということです」
「ローレちゃんがそういうなら~」
「ローレ・・・ちゃん?」
あんな鬼畜師匠より可愛い師匠の方がいいよね、と舞い上がっていたせいで私はつい「ちゃん」付けで呼んでしまった。
でも、そんな事を気にする私ではなく、魔力石カカシがある1レーンに着く。
「ではいつも通りに、お願いします!簡単に壊れるものではないので思いっきりで大丈夫でーす!頑張って下さい!」
ローレは大声で私に助言してくれている。
黄色い声があるのって最高!いつもの私とはちょっと違うかも?
カカシに向き合い、訓練をはじめようとすると兵士たちは訓練の手を止めて注目している。
その目に気付く訳もなく、魔法に集中した。集中というか緊張に近い何かがある。だってローレちゃんがいるから。
魔法剣を鞘から抜き出し、刀身に水を纏わせる。ここまではきっと今まで通り。
でも、ローレちゃんに良いところ見て欲しいあまり強い魔法をイメージした。
日々の師匠との訓練を思い出す、かつ今出せる一番強い威力。
私は魔法剣をひと振りすると素早い斬撃がカカシに向かって飛んでいく。
すると命中したカカシは爆散して粉々になってしまった。
「これが、王女殿下の実力・・・」
周囲は声を揃えて同じことを呟いていた。
* * *
こちらは継結がいた世界のXXXX年12の月。
砂塵病はパンデミックを起こし、病を隠蔽してきた政府は情報公開を余儀なくされた。日本政府は緊急事態宣言を発令し、有識者会議が行われるも対抗策を講じることもできず批判の的になっている。
日々病室のベッド上には舞い散る砂が散乱している。
砂塵病で生まれた砂を研究していくと未知の元素が含まれていると分かった。
未知の元素は「魔力」と呼称されるようになった。
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