第八話:ここはサウナですか?
散々な称号を手に入れた。
半ケツのプリンセス。
どこで使い道があると言うの。漏れなく露出狂となってお縄になってしまう。まだ子供だからセーフ?いやいや、私の尊厳というか羞恥心がそれを許さないだろう。
「それにしても・・・暑い」
私は父親というか国王の手伝い中、異様な暑さを体験していた。この国王、何故か特に運動をする暇もなさそうなのに蒸気を出している。不思議な身体だ・・・。
そんなボヤきには聞く耳持たない、第26代国王ヴィルヘルム・ウルフ・ゲウィッセンハフト・アルス・ヨナス・レオン・マクシミリアン・フェリックス・パイパイ・ポンポイ・プワプワプ・パメルクラル・クラリロリ・ポップン・プルルン・プルン・ファミファミファ・ペルタンペットン・パラリラポン・ポロリン・ピュアリン・ハナハナピ・ゼロ・ナガイマン。
父親の名前をフルネームで言える自信ない・・・。私の名前は短くてよかった。
早くもこの新生活にも嫌気が差してくる。このサウナ状態の部屋に暑苦しい男と2人きりなのだから。社会進出は難しいと肌で感じていた。私って社会不適合者だったんだ・・・。
「ディーネ、ここの計算を頼む」
「うん」
「ディーネ、ここの清書を頼む」
「うん」
ウンディーネだから、うんって返してみたのは、伝わる訳もなく。
何をしているのかというと、何故か分からないけれど国家予算・決済、国庫の計算と公文書の代筆をさせられている。なんで?
そして私が文書を代筆、計算を行うために日本語や算用数字を書いているつもりなんだけど異世界語に変換されている。そんな力ないはずだけど、便利で助かる。
「手が止まっておるぞ」
「は、はい・・・」
このなりで、最終計算は誰かに任せず国王は自分で行っているらしい。って、今は私にやらせてるんだからサボりでは?
いけない、いけない。
今日の目的を忘れるところだった。この世界の情報収集をせねば。ウンディーネはどこまでの情報を持っているのか分からないが、それに頼るしかない。
急に「この世界について教えて」なんて言った暁には、どんな目で見られるか分からない。
さてさて。情報の海に飛び込もう。
私が住んでいるのは、ナガイマン王国というらしい。自然に囲まれ林業、畜産業、海産業も行われている。世界全体から見ても国土的には2番目に大きく、それなりに幅を利かせている。
この世界の文明は魔法で賄われている部分も多く、
変わった文明が発展してるんだなあ。
だから魔力を持つ者は魔力を売るという商売もあるみたい。でもその魔力は高貴なものと考える貴族も多いため、貴族間ではやる人はいない。
魔力石の多くは貴族が所有、売買している。魔力とは天使が齎した、尊いものだから、それを蓄積できる石の管理は貴族が出しゃばっていると聞く。想像すると足元を見てくる、お貴族さまの顔が浮かぶ。あ、私の方が位は高いから全然怖くなくなった。
「ディーネ、これも頼む」
「はい、って重っ」
「落としたら足を潰すことになるぞ」
私はなぜ真っ黒な重い石板を持たされているのか、バケツを持ち廊下に立たされている気分。情報収集って終わりが見えないよね、そもそも生きていくには何が必要なの?とりあえず常識ってやつ?
・・・そういえば、時々出てくる祈りってなんだよ。って感じだよね、わかる。私もそう。知っていて常識みたいだから、再び記憶の引き出しを開けていく。
【昔むかし、とある天使と人間が恋に落ちました】
昔話始まったんだけど・・・って、誰!?この声!?
【天使と人間は種族を超え、片時もお互いのことを想い忘れたことはありません。
天使の間では、それがセンセーショナルな恋だと一部の天使で流行しました】
童話みたいなのに横文字やめてもらっていいですか?
【そこで本気で恋をしていた天使は怒り、偉い天使に人間と結婚しても良いか許しを求めに行きました。しかし、偉い天使はそれを許しません】
禁断の恋だったって話?オアツイデスネー。
【酷く悲しんだ天使と人間。結婚は出来ないと聞きつけた、ナウイヤングな天使たちは】
なんか急にチープになった。
【人間たちに贈り物や、欲しい物を与え、手を打とうとしました】
手付金みたいな感じかな、金に物言わせるのは嫌いではないけど。それで?
【本気で恋をしていた天使は、その人間に祈りを授けました。自分のことを忘れて欲しくないとの思いに、それは子孫にも永遠に身につくものとなりました】
祈りは天使からの贈り物だった訳ね。
【が、偉い天使は激怒しました。その中には人間に贈ってはならない物も混ざっており、天使間で戦争が起きてしまいました。これが第一次天使戦争です】
童話から歴史の勉強に早変わりしてるじゃない。
「ディーネ、その石板に魔力を込めてくれ」
げ、急に国王によって現実に引き戻された。
国王から湯気は消え、熱気も去ったように見える。そんなことはどうだっていいか。
魔力を込めろだって?やったこともないんですが。お手本とかあってもいいんじゃ・・・無理そう。めっちゃこっち見てる。早くしろと言わんばかりだ。
ぐぬぬ・・・。
こう?石板に手をかざしてみるが、ウンともスンとも言わない。あれれ~?おかしいぞ?
こういう時は何て言うんだっけ、えーっと、ちちんぷいぷいではないし・・・。
「ピリカピリララ?」
黒い石板は光を纏い、石板には色彩が、動きが付いていく。なにこれ、小型テレビみたい。映し出されたものを見ていると、SF映画の様な内容だった。
それは大群の魔物が歩き、空は飛翔体の生物が渦を巻き、その中から大きな翼を生やす何かが地上を見下ろしている。場面が変わると瓦礫と化した地上、火災で建物が倒壊していく光景に逃げ惑う人々。
この場面どこかで・・・、ゴツン。殴打耐性が発動しました。
「コラ、むやみにお前は見るべきじゃない。これ以降は私たちの仕事だ、これは王族としての責務であり処理すべき事案である。お前もいつか分かる日が来るかも・・・、来て欲しいのが切実な願いだが」
王族の責務とか、なんとかかんとか、長く語り始めた。ナガイマン、話長いよ。
ところで、今日は1日この国王と付きっ切りで過ごしているけど。
こちらの世界にきて、外もまだ見たことはないし、まあ王族だからお忍びとかになりそうだけど。
私はウンディーネの記憶の棚を調べる。
私は膨大な記憶に耐えられるのか心配で仕方ない、脳が耐えきれず廃人になったりしないよね?大丈夫?
ええい、そんなことは言ってられない。この子の記憶がなければ私は城でどう過ごすべきか分からないし、国王にぶっ飛ばされるのはごめんだ。腹をくくれ、継結。
ウンディーネ・ゼロ・ナガイマン、これまでの一生を丸裸にしてやるんだから。
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