第6話

手紙を本邸に、送ってから数日がたった。


「今日も本邸から、手紙は届いていないか?」

「はい。届いておりません」

「そうか」


数日経っても、返ってこないと言うことは、大した用事では無かったと言うことだろう。


もし返事が返って来ていたら、流石に断る訳にはいかなかったから、行く事になっていただろう。


それにしても一体何の為に、呼ぼううとしていたのかは、分からずじまいか。


まぁいい。分からない事を、これ以上考えても分かるわけないのだから。


それよりも、今後の計画を立てなければな。アース帝国では、15歳からが成人だ。その後平民は働き、貴族は学園に行ったりなどする。


初等科から、行かせる家もあるようだが、殆どの貴族は、高等科から行かせる家が多いい。


学園に行くの一つの案だが、アース帝国にある学園に行く必要はない。行くならば、ダイナス島にある、学園都市に行く事にするだろう。


他の選択肢としては、10歳から慣れる冒険者になるか、傭兵になるかのどちらかだろう。もしくは、別邸で一生過ごし、裏で暗躍するかだ。


商人と言う選択肢もあるわけだが、商売は面倒臭いからな。前世で商売したら大変な事になったからな。あまりにイライラし過ぎて、商談相手を殺してしまったりとか。色々あったものだ。


まぁ将来の事は後々考えるとして、そろそろ従者が欲しいな。前世では他人を信用してはないなかったが、使える奴は傍に置き従者として使っていた。


「俺一人だけだと詰まらんからな」


一応候補と言うか、どうやって従者を手に入れるかは考えている。


それは召喚魔法だ。


召喚魔法は、自分の魔力と生贄を捧げる事によって、この世界、もしくは別世界の魔物や悪魔、上手くいけば神などを呼び寄せる事が出来る。


存在が強い者を呼び寄せる為に、より膨大な魔力が、質のいい生贄が必要だ。すぐ手に入る生贄に関しては、人間が一番いい。


魔力に至っては、俺が魔術師になれば解決する事だが・・・・問題は人間の方だ。何処かの街を襲い、皆殺しにすれば早いのだが・・・・そうすると国が動く可能性もある。

そうなると・・・面倒だ。


ある程度の人数がおり、目立ちにくい村でもあればいいのだがな。俺は別邸から、あまり遠くまで出た事がないからな。


ここは、俺よりも長く生きている者に聞くのが、一番だ。


「おい、メイド。」

「はい」

「この辺でも、少し離れた所でもいい、何処か人数が多く、目立ちにくい村はないか?」

「・・・人数が多く・・・・目立ちにくい村ですか・・・・一つ心当たりがあります」

「何処だ?」

「この別邸の近くに森があるのはご存知じですよね?」

「ああ」

「森の中に入ると、おおきな木があります。その木に突っ込んでください」


大きな木?そんなのあったか?


「突っ込むだと?」

「はい。木にぶつかっても構いません。気にせず突っ込んでください。そうすると事である場所に出ます」

「ある場所?」

「そこは・・・・人間が隠れ住む場所ラール村があります」

「人間が隠れ住むだと?何故隠れなければならない?」


何故わざわざ森の中に、村を作り隠れ住む必要がある?普通は何処かの国に所属するのが普通だ。冒険者などの例外もあるが。


「はい。村とは国に所属し、その土地を納めている、領主に税を払うのが普通です。ですが森の中に隠れ住んでいる、人族は異教徒と呼ばれ追放された一族です」

「異教徒・・・か」


このユータニア大陸には、女神テレーシアを絶対とする、テレーシア神聖国がある。


女神テレーシア以外にも、神は他にも存在しているらしいが、テレーシア以外の神は認めず、他の神々は異端の神と言われている。それらを信仰している者どもを、異端教、異端信者と呼ばれている。


「はい。あの国は、異教徒を決して許しません。見つけ次第始末されるか、民衆の前で公開処刑されるかのどちらかです。見つかった人々は、殺される前に逃げるか、別の地に隠れ住むかのどちらかと言うわけです」


「ふむ・・・・分からんな。何故逃げる必要がある?見つからず隠れて居ると言う事は、それなりの魔法使いもいる訳だろう?」


戦える魔法師だって居るはずだ。剣士だっているだろう。なのに何故戦わない?


「・・・・確かに戦えるでしょう・・・・ですが、異教徒の方々は争いたい訳ではないのです・・・・戦いたい方もいるでしょう。ですが無駄な血を流したくない方もたくさんいるんです。ただ自分達が、信じる神を信仰したい人達もたくさんいるんです」

「フッ 弱者の考えだな。いや、そもそも弱いのが悪いのだろう。この世は強くなければ生きてはいけないのだから」

「・・・・」


そう。この世は弱肉強食。勝ったものが全て正しい。敗者は勝者に従わなければならない。それが世の摂理なのだから。


「それで。どうしてお前が、その村の事を知っている?」

「・・・・マイが教えてくれたからです」


声に少し怒りの感情が混じっている。


「誰だそれは?」

「あ、あなたが!先日殺した!!!!!!!!メイドです!!!???」


激怒したのか、声に怒りが乗っている。


「あ〜〜思いだした。スパイの女か。何故そこまで怒る?あいつはスパイだったのだぞ?仲間が殺されたからか?」

「私はマイが、スパイだったなんて、知りませんでした!!ですが殺すなんてあんまりです!!」

「あまいな。そのあまさが命取りになるのだ。そして、俺に逆らう人間など生きる価値などないのだ。お前も覚えておけよ」

「あ、あなたには人の心がないんですか!?」

「そんなもの、とうの昔に捨てている」

「・・・・分かりました。もう私からは何も言いません」

「お前も覚えておけ。裏切りには死で償ってもらうからな。下がって良い」

「・・・・失礼いたします」


怒りを抑えながら、ドアノブに手をかけ出ていく。


それにしても、あの森に村があるとは、思いもしなかった。大きなな木の中にあると言っていたな。


そもそも森に入り、俺が気づかなかったと言う事は、それなりの結界魔法の使い手、もしくは古代魔道具の類かもしれんな。


「・・・・まだそこに行くのは危険かもしれんな。もう少し強くなってからにするか」


これで召喚の生贄に必要な材料は揃った。後は慎重にいくとするか。


「そうと決まれば修行でもするか」


俺は部屋にこもり、魔法の練習をするのだった。


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