第6話 「このあと何か用事ある?」①

「真島くんさ、このあと何か用事ある?」


 ある日の放課後、帰り支度をしていると、


 杏野さんが、いきなり声をかけてきた。


 僕は、いわゆる帰宅部だ。特に決まった用事がある訳ではない。


 とは言え、早く家に帰って、新しく始まったスマホゲームのイベントに、参加したい気持ちも確かにある。


「あの…、用事って程ではないですけど…」


「じゃあ、決まり。ちょっと、ついて来て欲しい所があるの」


 渾身の笑顔で、強引な決断を下された。


 しかしながら杏野さんのこの笑顔に、誰がいなと言えるだろうか…


 もちろん僕にも言えやしない。


 クラスメイトの注目を浴びながら、腕を引かれて連れ出されてしまう。


 そうして、ここは、


 ひと駅隣りの、地元の小さな遊園地。


 何処ぞの有名テーマパークとは違い、こんな時間からでも、大体のアトラクションは回れてしまう。


「あの…、ここで何を…?」


「ここなら、たくさん人が集まるでしょ?」


 電車の中でも、ずっとテンションの高かった杏野さんが、最高の笑顔を僕に向ける。


 参考までに、僕も杏野さんも、徒歩通学だ。


 だから何だって話だけど。


「人がたくさん、ですか?」


「うん」


「平日のこんな時間に?」


 どう考えても、人がたくさん居るとは思えない。


 そんな僕の質問に、杏野さんが不思議そうな表情を浮かべた。


「それって、関係あるの?」


 これは本気で言ってるのだろうか? どういう反応を返したら良いのか判らない。


 だからここは、話を変えることにする。


「そう言えば、結局ここで、何をするんですか?」


「そんなの、ひとつしか無いじゃない」


 輝くような笑顔を向けられ、呼吸も忘れて魅入ってしまう。


 ひとつしか……無い…


 それってもしかして、杏野さんとデー…


「魔法使いを探すのよ」


 ………………ですよね。


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