009ある養子と…?/マカミ領にて
「今日は
うだるような夏の暑さ。容赦なく降り注ぐ陽光に疲弊する奴隷たち。
「知っての通り、
「衝撃に強い」
「正解。採掘作業の際には要注意の商品だ。靭性の低い魔鉱石は細心の注意が必要となるが、この蛍火石はハンマーをものともしない。人力で採取不可能な鉱物は
顎を使って
「多脚式採掘用立体起動型外装魔導具、通称『
大蜘蛛を模して組み立てられた鋼鉄。鋼の六脚を駆使して操縦席を包むメインが持ち上がり、器用に脚を動かしながらクルリと一周回って見せる。全長10.5メトル、全高3.4メトル。軽礬石を叩き伸ばして作られた装甲。前足にあたるアームには魔鉱石の採掘手段として使用するブレードが備わっている。
かなり慣れているのか、まるで本物の生物のように操縦者が操る。脚部からキリキリと音が鳴っており、それが鳴き声のように聞こえた。男子の心を掴んだようで座って聞いていた奴隷達の中から挙手が上がる。操縦方法は順番通りに教えるから、そうリーダーらしき人物が宥めた。
「キミ達は此処での採掘作業は初めてだったね。この鉱山では一部毒素と■■■■濃度の高い危険地帯がある。いわゆる鉱山病というヤツさ。ジェムラッシュって知っている?数百年前に鉱山ブームで魔鉱石の採掘する人間が増えたの。まあ異世界人が後先考えずに採掘してくれたお陰で、普通の鉱山病から掛け離れた代物と化し、ボク達後世の人間が苦労する破目になったんだけど」
班ごとに分かれた後、簡単な地図を渡すと続ける。読み書きが出来る奴隷の数は限られているが、絵を用いた地図なら彼らでも読めるのだ。バツ印は行き止まり、ドクロマークは毒素が溜まりやすい場所。
「採掘場に限らず鉱山は複雑に入り組んでいてね、匂いが濃い・空気が淀んでいる…そういう道の先は行き止まりだ。覚えておいて」
「
◆◆◆
○七つの子❘よくってよ!
○わんわん❘何でお嬢様言葉なんだよ
○七つの子❘罰ゲームで強制的に
○七つの子❘お嬢様言葉にされましてよ
○わんわん❘神性高い上司ヤバいよな
○ぴょん吉❘俺ら最弱神は手も足も出ない
○猫ですよ❘もおおおおおおおおおおおお
○猫ですよ❘仕事が多いやることが多い!
○猫ですよ❘エブリデイくそったれい
○わんわん❘どの部署も繫忙期だな
○ぴょん吉❘あんちゃん、起きたー?
○お揚げ君❘皆さま、ご機嫌よう!!
○わんわん❘お前もかよ
…そうだった、昨日…いや一昨日からか。神様達のコメントに自動読み上げ機能を反映させたから、滅茶苦茶騒がしいところで目が覚めた。半身を起こした俺は、げんなりした顔をメニュー画面へ向ける。
○ぴょん吉❘強制お嬢様ズ、解呪いつ?
○お揚げ君❘1時間後くらいでしてよ
○七つの子❘皆様、助けてくださいまし
○猫ですよ❘弱小神じゃ無理だよ…
自動読み上げ機能、何つーか肉声じゃないから違和感すごい。そのうち慣れるかな…というか、何だろう…さっきの夢にしてはリアルっていうか…あれも奴隷時代の俺の記憶なのか?ワーグナーのおっさんは出てこなかったけど。あのリーダーっぽい人、誰なんだろう。顔を思い出そうとすると霞がかかって消える。
軽く伸びをして、綺麗な布団を見下ろす。ヤマトの爺さん…マカミの養子になって数日。奴隷時代よりも待遇が良くなった環境に身を置いて数十時間。言葉に出来ない違和感が何とも言えないが、これが普通の生活なんだ。与えられた服、与えられた個室。今日もマカミの人間として――転生者とバレずに生きていこう。
隣接する王国と帝国に幾度なく反旗を翻し、独立すべく立ち上がった地方が存在する。彼らは度重なる重税と王命に異を唱え、その支配から逃れるべく――幾度も二大勢力と戦争した。生き残った貴族は独立を宣言し、小さな公国を生み出した。その公国を統べる初代国王が崩御した後、新たな後継者は宣言した。
同盟を結ぶ全ての貴族による議決の導入。かの公国は姿を変え、現在では浮島諸侯同盟と呼ばれている。王を戴かない、多数決で物事を決める制度。この考えは異世界転生者が関わっているともされているが…真相は闇の中である。その浮島諸侯同盟の領内は、大きく分けて五つの勢力が支配している。
王国から追放されし魔女
帝国の赤き血を引く翼竜
亡国の遺志を継ぎし巨狼
公国と袂を分かれし死神
皇国への復讐を誓う幽鬼
その殆どが公爵・侯爵と位の高い貴族だが、異質なのは翼竜だ。持ち前の話術と商才だけで伸し上がった商人。諸侯同盟領内に留まらず、他国への人脈も持つ。無論【翼竜】というのは二つ名だ。本当の名前は別にある。それを語るのは、また別の機会にしよう。
この世界に於ける二つ名とは、名誉と同時にアイコンである。ネームドと言えば分かりやすいだろうか。各地に設置されたギルド、そこに所属する冒険者をランク付けするならば最高峰のS。国に一人か二人、いるかいないかの人の域を超えた怪物達。国家間の戦争で投入されるネームドによって勝敗が左右される…切り札。
王国と帝国が浮島諸侯同盟に手を出さなくなったのも、星歴767年の時点で最高峰のネームドが五人集まっているからだ。幸か不幸か、この五人は領地拡大に対して興味が薄い。彼らが領土を欲しない限り、眠る虎の尾を踏まない限り。浮島諸侯同盟が自ら戦火を広げることはないだろう。
数百年前に海へ沈んだシキ国。地図から消えた国、今そこにあるのは。何処までも続く海。二大勢力である王国と帝国、その国境ラインと化した海域。その頭上に浮遊する島を治めるのが【巨狼】――マカミ家である。かつて異世界からの来訪者が侵略者を討ち果たしたとされる、転生者の血を引く武人。
国境線を守るよう位置するのは、マカミ領。はためく旗に記されしは、天輝く星を喰らわんとする狼。その家紋を見た王国軍と帝国軍は今でも恐れを抱く。かつてこの世界に降り立った異世界人、その偉業と数々の所業を。誰しもが口を揃えて言う。諸侯同盟のオオカミに気を付けろ、と。
さもなくば丸呑みにされるだろう
○わんわん❘諸侯同盟の説明、こんくらいか?
○猫ですよ❘五大勢力以外にもあるけど
○猫ですよ❘他は腰巾着みたいなもんだから
〇ぴょん吉❘でも無視できない連中だからね
神様の説明を聞きながら、俺ことアシュレイ゠アスカは朝餉を掻き込んでいた。保護されて大分経過し、お粥を卒業したので今は白米を頬張っている。はし?いや箸か。今まで使ったことのない道具に悪戦苦闘していた日々だったが…何とか使えるようになったものだ。
○お揚げ君❘あんちゃん、あんちゃん
(何?)
○お揚げ君❘どうよ、何か思い出した?
(全然)
俺の記憶は戻る気配がない。前世に関する情報も、思い出そうとすればするほど靄がかかって何も見えない。さっきの箸も良い例だ。神様から道具の説明を聞きながら、ヤマトの爺さんに使い方を教わっていた時も。そういえばそうかも…と言う感じで、何となく体験したような気がする。みたいな感覚を抱いただけだった。
マカミ家は先の説明通り、数百年前に飛ばされた転生者の子孫。どうも彼?彼女?…初代でいいか。初代マカミは前世の未練が強かったらしく、故郷である日本を彷彿とさせる衣食住で満たしたらしい。らしい、と言うのも俺の記憶が欠けているからピンと来ないのだ。この箸も最初見た時「なんだこれ」だったし。
今いる間も日本みたいな建築らしい。タタミ?っていう何か独特の香りがする床…床なのか…?よく分からない敷物?の上でメシを食っているけど。なーんも思い出せん。推定・日本人って神様の読みだけど当たっているのか怪しくなってきた。いや本当に覚えてないし、思い出せないから「へー、そうなんだ」で終わるんだよな…
「……俺、本当に日本人だったのかな」
白米を飲み込んで、お椀を見下ろす。神様が言うには記憶とは何かと紐付けられていて、匂いや味で蘇ることもあるそうだ。だけどタタミの香りも、白米の味も、箸の感触も――琴線に触れることはなかった。
〇猫ですよ❘あんちゃんあんちゃん
(何?)
〇猫ですよ❘今思い出せなくてもさ、
〇猫ですよ❘他のことで思い出すかも
〇猫ですよ❘だから気を落とさないで
もしかしたら朝食はパン派だったかもだし、と神様同士の会話が加速していく。会話…会話なのかな、コレ。パン…パンかぁ……奴隷時代に食べたような、あのカビの生えた硬いヤツ。アレもう一回食えって言われたら無理だな…
(浮島諸侯同盟って、リーダーとかいるの?)
〇ぴょん吉❘リーダー…リーダーかぁ
○猫ですよ❘ここ多数決で決めるんだよね
○わんわん❘リーダーはいないというか
○わんわん❘円卓会議、って言えばいいのか?
元々は一番力を持っていた公国が引っ張っていたけど、誰かの影響で権力を分散させたらしい。多数決を導入させたのは、俺よりも前に転生した人間。まあ…確かに決定権が一人に集中していると色々あるだろうなぁ…
(でもさ、意見が真っ二つに割れることあるじゃん?)
〇ぴょん吉❘そこは最終決定権よ
ん?どういうこと…と言いかけた俺は視線を感じ取った。といってもスキル<気配察知E>に引っ掛かっただけなんだが。顔を上げた俺の視界に入ったのは、廊下と繋ぐフスマ…引き戸……どっちだ…何か扉っぽい板が開けられている場所。そこから此方を見ている少女が立っていた。
「……」
「むぐむぐ…おはようございます」
「……………………」
慌てて白米を飲み込み、笑顔を浮かべて挨拶する俺。それを無視する女の子。ぷいと顔を背けて扉の向こう側へと消えて行った。
〇ぴょん吉❘嫌われているねぇ
〇七つの子❘あんちゃん、何したの
〇お揚げ君❘そういう年頃では?
〇わんわん❘かもな
〇猫ですよ❘大丈夫、あんちゃん?
まあ、その…うん。流石にそろそろ傷付きそう。溜息を零して朝食を再開する。ヤマトの爺さんに引き取られて数週間。エイル・ナイトレイを破滅の未来から救うため、まず第一歩としてマカミ陣営に溶け込むことを目指す。そんな俺が頭を抱えているのは、義理の姉――テューラ゠ナラ・マカミに現在進行形で嫌われているのだ。
◆◆◆
「待ってよ、姉ちゃ~ん」
女中さんに食器を渡して、俺はテューラ゠ナラの後を追う。振り子時計のように高く結い上げた髪が左右に揺れる後ろ姿。ゆっくり振り返った義理の姉は、ものすごく不機嫌そうな顔を俺に向けてくれた。
「姉ちゃん、何処行くの?」
「……」
「そういえば俺、ずっと訊きたかったんだけどさ。姉ちゃんのこと何て呼べばいい?テューラ?それともナラ?俺みたいに合体してテューラ゠ナラって呼ぶ?」
「…………ウザい」
そう呟いたのと同時に、俺の存在を無かったことにして再び歩き出した。呆気に取られて立ち止まる俺。でも直ぐに姉の後を追う。
「ごめん…もしかして、姉ちゃん呼び嫌だった?お姉ちゃんが良い?」
「アンタ、いきなり家族になれって言われて直ぐに受け入れられると思っているの?」
振り返ることなく冷たい言葉を浴びせるテューラ゠ナラ。虚を突かれた俺は何も言い返せない。
「何でお爺様がアンタみたいな奴を引き取ったのか知らないけど。あたしはアンタを認めないから」
そもそも距離の詰め方おかしすぎ、苛立った声が背中越しに聞こえた。ようやく俺は理解した。いきなり新しい家族として顔合わせして数週間。出身不明、経歴不明、駄目押しの記憶障害。下手したら他の勢力が差し向けたスパイ…かもしれない存在。そりゃテューラ゠ナラは直ぐに受け入れられないだろう。
そう考えると今までの義姉が放つ刺々しい言葉は筋が通っている。そうだよな、よく分からない奴が急に擦り寄ってきたら「何だコイツ」になるよな。マズったな…なるべく早く馴染むようにって、ちょっと早まったかもしれない。今から挽回すべく軽く咳払いをし、改めて足早に移動する姉を追いかけた。
「――お待ちになって、お姉さま!」
「そういう意味で言ったんじゃないわよ馬鹿!!!!」
◆◆◆
「ほらほら!動きが止まってるっスよ!!」
軽やかな音とともに、砂利を踏みしめる音が響き渡る。渡された木刀を振るい、俺は後方へ飛び退く。やりにくい。何か丸っこい白石が敷き詰められた中庭で稽古を付けて貰っているから、足場に気を取られて剣筋に集中出来ない。そうこうしているうちに距離を止められ、俺は必死に攻撃を避ける。
あ、これスキル頼りで避け切れないヤツだ。俺の固有スキル<生存本能>だけじゃ足りない。というより稽古付けてくれる人のスキル構成を見る暇が無い!対策が取れない!!<鑑定眼A>を使う隙さえも与えないとか、俺より敏捷が上なのか…現役
「いつになったら
「基本のキも出来ないド素人を乗せる訳ないっしょ!!」
○わんわん❘乗れる訳なかろう
○お揚げ君❘教習所行かずに運転するレベル
○七つの子❘知識ゼロで教習車乗せられるか
〇猫ですよ❘標識も読めない状態だぞ
〇ぴょん吉❘路上教習になんて行かせねえよ
前世の記憶が無いから教習所情報を流されても解かんねえよ!!!
「ほらほらほら!オレから一本取るんでしょ!」
「う、うぅ~…っ やってやらぁ!!」
当たり前だけど真剣は使わない。俺が死ぬ。ここに来てからスキル<剣術>を取得したので、そろそろランクEに上がって欲しいんだが一向に上がる気配がねえ…!木刀を握り直し、稽古相手――リカルドさんへ挑んだ。支給された靴が砂利に埋まる。上手く走れないのがもどかしい。それでも、いい加減一本取りたい。
俺は剣を振ると見せかけて術式を発動。青魔法F・低位術式 《
リカルドさんは涼しい顔で俺の術式を避ける。はなっから当てる気はない。予備動作に入るタイミングを少しでも遅らせれば良いのだから。距離を詰めながら 《
「よっしゃあ!もら――」
一気に懐に入った俺。下から木刀を振り上げようとする俺の視界に、不敵に笑うリカルドさんが映った。
「え――」
気が付けば目の奥で火花が爆ぜた。宙に舞う身体。何が起きたのか分からず、大きく目を見開くことしか出来ない。リカルドさんが握っている木刀。半分になった刀身では俺に届かないはずなのに、どうして。ゆっくりと吹き飛ばされていく俺。スローモーションで動く世界。そのまま背中から地面へ落下し、激痛に顔を歪めた。
「ぐえっ」
リカルドさんによる見事なアッパーカットが決まった。俺が持っていた木刀も真っ二つ。顎を撃ち抜かれた俺は壁際まで転がっていく。白塗りの壁に激突した俺は完全に伸びた。うええ…目が回るぅ…何か神様達が酔ったとか何か言っているけど、それどころじゃねえ…
「ほい、オレの勝ち~」
アシュレイ君、大丈夫っスか?そう言いながらリカルドさんが近付いてくる。心配してくれるのはありがたいけど、せめてもう少し手加減して欲しい。え?何?折れたはずの木刀が伸びた。それが未だに納得いかねえ…!現に刀身の半分は俺の近くに転がっている。どういうこと?
ぐるぐる回る世界が止まった。逆さまになったリカルドさんが覗き込んでいる。いや、俺が逆さまになっているのか。仰向け状態というか、何て言えばいいんだろう。前転を途中で失敗したような、傍から見えると情けない恰好で止まっている。心配してくれている相手に悪いけど、こっそり<鑑定眼A>を使わせてもらおう。
________________
▽対象の<情報隠蔽>ランクが下回った
ことにより、プレイヤーの鑑定成功
▽スキル<鑑定眼A>により、対象の
ステータスが一部表示されました
〖リカルド〗
年齢:17 クラス:竜魔導機士
レベル:38 称号:トリックスター
HP:320/320
MP:223/223
固有スキル
:復讐心
:気配察知D
:死線B
:自然治癒D
:情報隠蔽D
:心眼D
:命中補正D
:ラッキー7B
:罠感知C
術式
:赤魔法D
:黄魔法B
:緑魔法D
スキル
:一撃離脱B
:隠蔽工作D
:隠密行動C
:開錠B
:鑑定眼E
:近反射D
:気配察知D
:気配遮断B
:自然治癒D
:死線B
:術式解析D
:術式介入D
:瞬脚B
:情報隠蔽D
:心眼D
:生命の灯E
:先手必勝D
:破壊工作D
:伏兵の心得C
:魔力感知D
:命中補正D
:ラッキー7B
:罠感知C
:剣術C
:槍術D
:弓術C
:騎乗B
パラメーター
筋力:175
耐久:150(+50)
敏捷:188(+50)
魔力:176
耐魔:180(+50)
幸運:170
補助効果
:『???族の首飾り』
:瞬脚B
:情報隠蔽D
:命中補正D
________________
……ほーん?もしかしてヒット&アウェイ系か
○ぴょん吉❘ほらリカニキはシーフ系が輝くから
(リカニキ?)
○猫ですよ❘プレイヤーからの愛称だよ
〇ぴょん吉❘リメイク版の人気キャラ
〇ぴょん吉❘金策として重宝される男
○わんわん❘魔導銃持たせるとヤベー奴
〇わんわん❘速と魔が伸びるから適性は
○わんわん❘暗殺者とか黒魔導騎士あたり
(何か途中変な単語出てこなかった?)
何か初めて見るスキルばっかだな……あの<ラッキー7>ってスキル、滅茶苦茶気になるな…
「おーい、大丈夫?」
「…………だいじょうb」
「おあー!?吐きそう?吐きそうっスね!?ちょ、ちょっと体を横にするから待tあああああああ!!!!」
リカルドさんの悲鳴が中庭に響き渡った。
「さっきのどうやるの?ですか?」
吐き気が治まった俺は気になっていたことを尋ねる。膝に矢…ではなく吐瀉物を受けたリカルドさんは井戸から水を汲み上げ、汚れた服を桶に突っ込んで手洗いしていた。女中さんが後はやっておきますから、と途中で交代し新しい着替えを貰って戻ってくる。
「さっきの?」
「折れた木刀が伸びるやつ」
「ん?ああ、これっスね」
俺が持っていた木刀を片手に、リカルドさんが詠唱無しで術式を発動。黄魔法E・低位術式 《
「いや~木剣も馬鹿には出来ないっスからね?鉄の剣もコスパ良いしオススメだけど、折れた刀身を瞬時に戻して相手を翻弄できるのはコッチですから。まあデメリットあるけど」
「すげー!」
ふふ、とリカルドさんが笑った。
「アシュレイ君は素直で良い子っスね」
「?」
「いやー…植物属性ってショボい!って偏見持たれるんで、あんまり尊敬の眼差しを向けられる機会が無かったもんだから…こう…むず痒いというか」
黄魔法は土属性がメジャーらしい。神様の解説によれば金属系も黄魔法に分類されるようだが、術式レベルを上げないと解放されないみたいだ。じゃあ…エイルが試・甲型弐式で氷属性の術式ぶっ放せていたのは、青魔法の術式レベルが高いってこと?そもそも…
「各魔法って、何か特性があるんですか?」
「そっスね…赤魔法は純粋に火力が高い。青魔法は柔軟性があって、氷属性を開放すれば幅が広がる。黄魔法は防御系に特化していて、緑魔法は他の属性と相性が良い。白魔法は回復や支援、黒魔法は――」
リカルドさんの説明を受けながら、横から神様の解説も加わり自分なりに解釈する。一番攻撃力が高い術式が赤魔法。ステータスの魔力数値が低い人間でも、赤魔法を取得すれば強い攻撃手段を得られる。青魔法は緑魔法と同じ切断能力が高く、液体から固体まで形を変えられるのが特徴。一番防御に優れているのが黄魔法。
「んで、オレがアシュレイ君にオススメなのは緑魔法。特色は青魔法と同じく切断系が強く、柔軟性があること。この二つの違いは、他属性の術式を乗せやすいかどうか」
「? ??」
「例として、火属性の術式を用いた混合魔法をあげましょうか。緑魔法…つまり風属性なら、赤魔法D+緑魔法Dで混合魔法・中位術式が組み立てられる。対して青魔法は水属性、相性の悪い火属性は術式に乗せにくい。火は水に弱いっスからね」
なるほど。つまり緑魔法は他の属性を打ち消しにくいってことか。属性の相性も覚えておかないと、混合魔法を使えるようになった時に困るな…
「まあ、魔導の授業はメイジャー兄さんに教わってください。マカミ隊の中で一番魔導に詳しいの、あの人なんで」
「はーい」
○わんわん❘うわでた
○猫ですよ❘うわとか言うな
(どういう人なの?)
○ぴょん吉❘魔導士職トップランナー
○ぴょん吉❘物理ではなく魔法で殴る男
○わんわん❘敵対√で倒せないキャラ
○わんわん❘強過ぎて味方陣営全滅不可避
敵対√、鬼強いキャラが多いのか?
「他に質問は?」
「はい!武器に魔法を付与することは出来ますか?」
「出来るっスよ。でも……んー…
○ぴょん吉❘エンチャントいいぞ
○わんわん❘サンダーソード代用品とか
○ぴょん吉❘金策の手段が広がる広がる
「それから…お、いいところに」
リカルドさんが大きく手を振って、誰かを呼び止めた。誰なのだろう…と顔を上げれば、ちょうど男性が向かいの渡り廊下を歩いていた。
「兄貴ー!ちょっといいっスかー?」
「………どうした」
どうやら彼がメイジャー…のようだ。俺はリカルドさんとメイジャーさんを交互に見る。髪色の瞳も、顔立ちすら似ていない。異世界の人種ってのも、俺は詳しくないので直感なのだが…たぶん、二人には血の繋がりは無さそうだ。
「アシュレイ君に魔導と戦術の授業、お願いするっス」
「……まだ定刻ではないだろう」
「オレだけじゃ説明できないこともあるんスよ?」
しばし間を置き、いいだろうと短く呟いた。
「……何について訊きたい?」
「リカルドさんに勝つ方法お願いします」
「ちょっ、本人すぐ横にいるのに」
「……いいだろう」
「よくない!よくないっスよ!?」
メイジャーさんは口元に手を当て、じっと俺を見つめる。
「……手合わせしたのは一度や二度ではないだろう。何が足りないと思う?」
「…………普通に経験の差かと」
「……それもある。が、今の君に足りないのは発想と視点、そして知識だ」
唇を尖らせながら同僚を睨むリカルドさん。トントンと自身の肩に木刀を当てる音が続く。それを横目に見ながらメイジャーが続ける。
「……その木剣が良い例だ。折れた剣のリーチを戻す、敢えてそのままにする。これで選択肢は2つ。折れた刀身を投擲し、隙をついて残された剣に《
お、おお…?言われてみれば確かに。さっきまで俺は距離を詰めて接近戦に持ち込もうとしていた。遠距離攻撃は青魔法と緑魔法のみ。だけど当たらなければ意味が無い。MPの数値が三桁にも届かないレベル3では、そう何度も術式を発動できないのだから。
メイジャーさんの説明を聞きながら、自分の中で噛み砕く。原作『ドラグーンズ アクシアⅦ』に於いて、攻撃手段は物理と魔法、この二つに分かれる。それらの攻撃を受けた時、ダメージを耐えるには耐久と耐魔のステータス数値を上げなければならない。
兵種ごとに何の攻撃に得意なのかは異なる。魔法職は耐魔のステータスが伸びやすく、騎士職は物理ダメージへの耐性が高い。兵種ごとの個性も覚えておかないと、いざ戦闘時に無駄撃ちしてすっからかん…なんてこともある。つまり今の俺に必要なのは、魔法以外の攻撃手段を増やすこと。
「…そもそもコイツに正攻法で挑んでも無駄だ。真正面から殴り込んでも横からトラップを発動するセコい男だぞ。近接戦闘は諦めろ。相手の間合いに届く前に、コイツが何もしないと思うな。何かしら嫌がらせはしてくるぞ。手札は多く持て」
「ちょいちょいオレをディスるの、やめてくれないっスかね」
淡々と述べるメイジャーさん。感情が籠っていないので一見すると嫌っているようにも解釈されそう。だけど彼は仲間に対して暗い感情を抱いていないようだ。何て言うか…喜怒哀楽の出力が控えめ?ってかんじ。
「ていうかセコくないし!?よく言うじゃないっスか、集団戦闘に於いて六割の損害は致命的だって!戦う前から少しでも有利な戦況に持ち込みたいじゃないっスか普通!!」
「……お前の場合、敵を過剰に焚き付けやすい傾向があるからな。余計な敵意を増やすな」
「いやいやいやいや、煽るのも立派な戦術っスよ!冷静さを失えば視野も狭くなるし、罠に嵌められたと気付くのも手遅れ…ってね」
うーん?リカルドさんとメイジャーさん、仲は良いけどそうでもない…?
○わんわん❘まあ、アレだな
○ぴょん吉❘方向性の違いってやつ
○猫ですよ❘リカニキ勝てば官軍派だし
「リカルドさんからもアドバイスください」
「えー、オレの弱点は教えられないっスよ?」
でしょうね!
「じゃあ、リカルドさんが同じ状況だったら…どうします?」
「そうだなー…まず地の利は大事っスよ。迎撃する時とか下準備は念入りに。森林地帯だったらトラップ仕掛け放題、逆に視界が開けている場所は不可視の術式でコーティング。あと場所によっては消費する魔力量が左右されるんで、後々のことも考えながら攻撃パターンを組むのもオススメですかねー」
リカルドさんは飄々としていたり、茶目っ気でフレンドリーな雰囲気の人。だけど今の説明で言葉の端々に容赦の無さが滲み出ている。さっきのスキル構成を見る限り、恐らく本職は暗殺者。本気を出されたら俺の首なんて、とっくのとうに落ちている。特訓中はかなり手加減してくれているんだろうな…
「今回は中庭でやったじゃないっスか。何か気になること、あったでしょ?」
「足場が悪くて走りにくい」
「そう、それ!まあウチの副隊長命令で足腰鍛える理由もあるけど。他の連中は魔力保有量で勝敗が決まる!…とか言ってますけど、オレからすればスピードこそ全て。少しでも相手の敏捷を削れるよう、色々手を回すのも戦いの基本っスよ」
ほうほう…確かに初めて怪鳥フラリと戦った時、足場が悪くて一方的に殴られていたよな。空中にいる相手だし、遠距離攻撃が無ければ嬲り殺しだった。今思えば怪鳥フラリに誘導されていたんだと思う。じゃなきゃ爆風に巻き込まれて飛ばされるわ、そのまま落下して樹の幹に貫通とか普通有り得ないし。
リカルドさんの言う通り、地の利は大事だ。俺は相手ばかり見てしまうクセがあるし、これからは周囲の状況も良く観察しなきゃ。相手の動きを封じる手段も欲しいなー。何かあるかな……俺が誘拐されかけた時に見た、ダグラス・ナイトレイの《
「テューラちゃんと仲良くなれそう?」
唐突に投げかけられた問いに、俺は言葉を詰まらせる。
「…………滅茶苦茶嫌われています」
正直に答えると、俺の目の前で二人が「あー…」と言いたげな表情を浮かべた。
「あの子も色々あるんスよ」
嫌いにならないであげて。そう呟いたリカルドさんに、俺は小さく頷き返した。
◆◆◆
午後はヤマトの爺さんに指定された道場で自主練。レベル5になったら領内の森に行っていいそうだ。そう、実戦!魔物の討伐任務みたいなの、やっていいのかな?まあ今の俺じゃ無理なんだけど。地道にコツコツとレベルを上げていくしかない。周囲から怪しまれない程度に、少しずつ。
レベルアップの条件は二つ。モンスターを倒した時に獲得する経験値を得るか、スキル・武器を使いまくって幾つかのスキルレベルが上がった時か。ちなみに後者のレベル上げ方法は非戦闘員救済処置だ。戦闘スキルを持たないキャラクターは、支援系の術式、もしくは杖…武器レベルを上げれば経験値を獲得できる。
「やった!レベルが上がった!」
ひたすら木刀で素振り、張りぼてに打ち込みを繰り返していたお陰で念願のレベルアップ。さっきリカルドさんとの模擬戦で使用した術式も、戦闘経験値が溜まっていたからレベルが上がった。いやー武器レベル経由の経験値がありがたい!!
________________
▽レベルアップにより、
対象のステータスが一部更新されました
〖アシュレイ゠アスカ・マカミ〗
年齢:10 クラス:見習い機士
レベル:3→4 称号:取得無し
固有スキル
:生存本能
:■■■■
:心眼E
:気配察知E
術式
:青魔法F→E
:緑魔法F→E
:■■■■F
スキル
:鑑定眼A
:悪食D
:剣術F→E
パラメーター
筋力:5+10
耐久:5+10
敏捷:6+15
魔力:11+20
耐魔:6+15
幸運:9+10
補助効果
:『欺瞞の首輪』
:『???』
:生存本能
:悪食D
転生ボーナス
:良成長補正
:取得SP数上昇
:識字補正
:■■■■
残りスキルポイント
0+500
________________
待て待て待て待て待て待て待て
○わんわん❘魔↑型なん?
○猫ですよ❘いや速↑かもしれない
〇七つの子❘俺未プレイなんだけど
〇七つの子❘ステ値どれ振ったら良いの?
○わんわん❘基本は敏捷優先だな
○猫ですよ❘そうそう、もしくは力か魔
○ぴょん吉❘どの兵種にするかで変わるけど
〇七つの子❘ほーん
(ねえ、ちょっとバグじゃないのコレ!?)
○わんわん❘何が?
(ステ値に入る数字!桁がおかしいだろ!!)
○ぴょん吉❘それが良成長補正やで
○猫ですよ❘あんちゃん、村人の兵種いたでしょ
○猫ですよ❘アレと一緒
(村人って……あー…思い出した…アレかー)
転生ボーナス良成長補正、原作では特定の加入キャラクターが所持する、固有スキル<良成長>と同じらしい。『ドラグーンズ アクシアⅦ』では様々な役職/兵種を持つキャラクターが登場するが、中には俺のように奴隷や村人という、戦いとは無縁な役職の者もいる。
そういう加入キャラクターを直ぐに戦闘へ出すとどうなるか?うん、普通に死ぬ。というか初期ステが低すぎて敵の攻撃を一発でも喰らったら落ちる。ワンパンで死ぬ紙装甲。だんだん思い出してきたぞ…原作エイルを重装騎士にクラスチェンジし、助けなきゃいけない村人を救うため敵陣に突っ込んだ覚えがある。アレだな。
さっきの重装騎士には『ドラグーンズ アクシアⅦ』で救助コマンドを所持していて、非戦闘員を戦闘パートから除外できる。あのサザナミ採掘場で怪鳥フラリの追撃から逃れるために、
(ん?上手くいけば思い出せるかも…?)
今の俺は原作エイルに関する記憶が優先的に蘇る。全兵種コンプリートした(神様曰く)限界オタクによるセーブデータの数々、その内容全てを思い出すことは出来ない。原作エイルが取得可能なスキル、適性兵種、彼女と支援会話があるキャラ、相性の良い武器と魔導属性…これだけでも何とかなりそうだ。
要は推しに関する内容が思い出せるのなら、それを応用させれば良いって話。まだ今は全部のセーブデータを思い出せないけど、何か切っ掛けがあれば少しずつ思い出せるはず!あの箸が良い例だ。欠けた記憶に紐づけるワード、且つ推しに関連する記憶ならば。さっきより鮮明に思い出せる可能性が高い。
ゲームシステムの基本はリメイク版も変わらない、らしい。でもリメイク版エイルのアレの説明が付かないよな。今後もしかしたら神様の説明を、原作のままだと思い込んで痛い目を見そうだよなぁ…それに原作とリメイク版の違い、まだあるかもしれないし…あとで神様に確認してもらうか。
○わんわん❘前も言ったけど、転生先は
○わんわん❘完全にランダム制
○わんわん❘転生先が村人・奴隷だった場合
○わんわん❘救済措置として 良成長補正が
○わんわん❘転生ボーナスとして付与される
(にしても数、おかしくない…?)
○猫ですよ❘あっ、そっか
○猫ですよ❘リメイク版で変更された仕様
○猫ですよ❘あんちゃんは知らないのか
〇ぴょん吉❘いきなりスキルAを取得させない
〇ぴょん吉❘対策として、消費するSP数が
〇ぴょん吉❘リメイク版はダンチなんだよ
そうだった、ここリメイク版の世界だったわ…えっと、情報を整理しよう。レベルアップ時に得られるスキルポイントは10~20。レベル・兵種によってポイント数が変わるし、消費するポイントもランクごとに違う。レベルが1上がるごとに最低でも10という前提に加え、リメイク版で調整されたことも踏まえると…
順調にレベルを上げてスキルポイントの合計が20、一気にA級クラスのスキルと取得するには合計150は必要だ。つまり、レベル2~3で取得したスキルポイントで<鑑定眼A>には辿り着けない。ということは地道にスキルレベルを上げてAまで到達した…が答えか。ちょっと確認しよう。
________________
メニュー画面
スキル取得時に消費するSP
スキルレベルS:2400
スキルレベルA:1800
スキルレベルB:600
スキルレベルC:240
スキルレベルD:60
スキルレベルE:20
スキルレベルF:10
________________
へー…………ええぇ…?
○わんわん❘引継ぎデータ2周目対策
(なるほど)
うーん…今SP500だから、スキルレベルC二つギリ取得できる。単純にスキルレベルFを40個もいらないし、<鑑定眼>持ちの人に怪しまれるからナシだ。スキルレベルEを20個……いやいや待て待て。早めに<情報隠蔽>取れって言われてただろ。最低でもA取らなきゃだから、余裕を持たせてスキルポイントを取っておかなきゃ。
『欺瞞の首輪』効果を貫通するスキルを所持している人間もいないとは限らない。短期間でレベルを4上げるべきか?スキルポイント2000まで我慢して、<鑑定眼A>獲得、残り200でスキルレベルFかEに使う手もある。でも「何でコイツ新しいスキル収得していないんだ?」って不審がられるぅ…!
それに、仮に最短で<情報隠蔽S>取得したとする。レベル7~8の子どもが高ランクスキルを持っているだけで異常だ。速攻に転生者判定を貰ってボコボコにされる未来しか見えねえ…!いやボコボコで済むとは限らないけど。ぐおおおおおお先人転生者が何かやらかしたお陰で自由度が限られているぅ…!!!
(うええぇ…どうしればいいんだ…)
○お揚げ君❘あんちゃん、あんちゃん
○ぴょん吉❘やめとけやめとけ
○ぴょん吉❘そこまで干渉するなって
○七つの子❘スキルくらい自分で決めるべき
○七つの子❘あんちゃんは人形じゃない
○七つの子❘
○わんわん❘相談くらいならいいんじゃね
○猫ですよ❘解説なら任せろー
神様達と意見を交換し悩みに悩んで、<情報隠蔽B>を取得することを選んだ。必要なSPを稼ぐためにレベルアップしなければ。暫く修行修行…
「…どう思う?」
同僚の言葉にリカルドが振り返る。会議に使用される一間から出たメイジャーは顎を使い、付いて来いと腐れ縁を呼び出した。漆で磨き上げられた廊下に、二人分の足音が響く。
「何が?」
「…アシュレイ゠アスカだ。帝国と王国、どちらだと思う?」
「んー、オレの予想は王国側のスパイ…あたりっスかねー」
「…何故だ?帝国でも密偵を放つ動きがあるだろ」
「兄貴は知らないでしょうけど、帝国って奴隷の扱い最悪なんスよ。俺が帝国の人間だったらアシュレイ君の身体に自爆の術式を仕込んで、ダグラスさんとサシで話すタイミングで爆殺するかなー」
人間爆弾、なんちゃって。続けられた言葉にメイジャーは眉根を寄せる。確かに子どもの奴隷を送り込んだ方が色々好都合だろう。同情を誘い警戒心を緩め、するりと相手の懐に入り込める。かつての大戦でも幼子に爆発物を持たせて突撃された国が存在した。非道な帝国なら似たような策を取るだろう。
「でもアンナちゃんの話だと、記憶障害はマジらしいっスね。いやー、どう転ぶんだろ。アシュレイ君の記憶が戻るのが楽しみだなー」
「――…もし、転生者だったら?」
先を歩いていたリカルドは長く息を吐き出し、笑顔を張り付けたまま振り返った。彼のことを表面上理解している者ならば、その笑みに隠された感情に気付かないだろう。しかし目の前にいるのは、長い付き合いのある間柄。笑顔の仮面、その裏側にある激情を誰よりも理解している。同期の中で最も転生者を憎む男なのだから。
「オレが殺すに決まってんだろ」
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