第20話 熱が冷めずにあの場所へ・・・・そして
「あ~、ごめんな優愛。機嫌直してくれよ」
「・・・・別に怒ってないもん。それと優愛じゃないでしょ」
約束と言う訳ではないが、覚悟を決めて訪れた日の夜に、すっかりできあがって寝てしまった裕也に対して、優愛はプンスコと怒っていた。
「わかったわかった。ごめんなゆ~ちゃん。許してくれよ」
「怒ってないったら怒ってないもん。だから許すとか許さないとかないもん」
まるで子供が怒っているようだ。
そんな優愛に、裕也は申し訳なさそうに両手を合わせながら必死に頭を下げる。
「ホントごめんって! 優愛がせっかく決意してくれたのにこんな体たらくでさ! ホントマジでごめんって!」
何度も何度も謝罪してくる裕也。
そんな裕也の姿に、優愛はため息を吐く。
「・・・帰りに美味しいパフェ奢ってよね」
「ああ、もちろんさ!」
いつまでも怒っていても仕方が無いし、裕也と会える時間を大切にしたい。
そう思い優愛は許すことにした。
それからはオジサンのせいで微妙だった時間を取り戻すために、色んな場所を巡った。
なが~い橋を渡ったり、パワースポットを巡ったり、食べ歩きをしたりして楽しんだ。
当初予定していた初めての体験はできなかったけれど、それでも二人で旅行に来た思い出はちゃんと作れた。
とっても楽しい思い出が作れた。
そうこれで今回は終わりとなるはずだったんだけど・・・。
「えっと・・・ゆ~君・・・・」
只今とても高そうなホテルの駐車場にいます。
最愛の彼氏は困ったような、申し訳なさそうな笑みを浮かべていた。
「いや、悪いのは俺だってわかってるよ。こんなこと言う訳じゃないとわかってるんだけどさ。けどさ。やっぱ、このまま帰したくねぇんだわ」
「け、けど・・・わたし・・・明日学校だし・・・」
「わかってるよ。それはわかってる。俺だって明日仕事だ。だけどよ。なんつぅか・・・・・・・・・・逃がしたくない」
「きゃっ!?」
グイッと優愛の肩を抱き寄せる。
言葉通り逃がしたくないのだろう。
今日を逃せば、多分次訪れる機会はそうそうないんじゃないかと思っているのだ。
「だから悪い。今日は一緒にいてくれ」
「・・・あぅ」
そんな風に甘えられると流石に嫌とは言えず、優愛はモジモジしながら、こくんと小さく頷いた。
それから優愛は裕也に連れられて、ホテルの中へと入っていく。
裕也の腕にしがみ付きゆっくりと部屋の中に入り・・・・・そして。
「え、なに・・これ」
部屋の中を見て困惑するのだった。
ガチャリと言う扉と鍵の閉まるどこか冷たくて重い音が嫌に優愛の耳に残った。
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