第14話 春が訪れているよ 女子高生
「・・・・ただいま」
痴漢にあってから学校に行った彼女は、その日の授業を終えて家へと帰ってきた。
勿論痴漢にあったことは学校側にも連絡が入っていたので遅刻扱いにはされていない。
そして当然家族にも連絡は入っているのだが
「・・・・・・・」
その連絡を受けて親が何か言うことはなかった。
そもそも親がその連絡を受けても仕事が忙しく、わざわざ家に帰ってくるなどするわけもなかった。
彼女の親は放任主義で干渉しない人達。
彼女が悪い事をしても、軽く声をかけるくらいで叱ることはしない。
子供にとってはとても楽だと思うかもしれないが、叱らないと言うことはそれだけ自分に興味がないと言うことである。
故に褒められるようなことをしても、「ああ、そう」と返す程度である。
そんな人達が親と呼べるかは甚だ疑問であるが、彼女の親はそんな人達だった。
そしてそんな誰もいない静かな家に帰ると、彼女はいつものように自分でお風呂を沸かし、出来合いの食事を食べ、部屋へと戻ると宿題や授業の復習をこなす。
彼女の日常などそんなものである。
一人寂しく、ただ平和に生きていくだけ。
何の楽しみもなく、安らぎもなく・・・ただ何事もなく平和に生きていくだけ・・・そう彼女自身も思っていたのだが。
「あっ、ゆ~くん。うん、今大丈夫だよ~」
そんな彼女の元に、彼氏と言う刺激が訪れるようになった。
SNS上で知り合った相手ではあるが、実際に会ってみるのはとてもカッコイイ年上の男性だった。
昼間に会ったとても太ったオジサンとは比べ物にならないくらいのイケメンで、モデルのような人で、電車ではなく高級車を乗り回している凄い男性だ。
「えへへ、いま~? いまねぇ~、お勉強終わってねぇ~、ゴロゴロしてるとこ~」
そんな男性が私の彼氏なんて凄い。
そして私の彼氏はとっても優しいの。
どんなにお仕事が忙しくてもこうやって絶対連絡くれるし、良いことしたら褒めてくれて、とっても優しいの。
だから大好き、私はゆ~君がだ~い好き!
「え~、下着の色が知りたいの~? もぉ~、ゆ~君のえっち~。そう言うエッチなのはダメなんだよ~」
ちょっとエッチなのは困るけど、それでもゆ~君とのお話は楽しい。
だって私の話をちゃんと聞いてくれるから。
どうでもいい事のように扱わないから。
だからエッチなお話は困るけどとっても楽しくて、大事な時間。
「仕方ないなぁ・・・・・・・・・・・ゆ~君の好きな白だよ・・・・・・・・もぉ! 黙らないでよぉ! 恥ずかしいでしょ~!」
私がここにいるよとわかる、とっても大切な時間なのだから。
その頃オジサンは
「もうやるんじゃないぞ!」
「ええ、まぁ、はい、お世話になりました」
ポリポリと頭を掻きながら気持ち悪いオジサンは交番から解放される。
不可抗力であると何度説いても警察官の方々は納得してくれなかったので、こんなに夜遅くに解放されたのだ。
一応言っておきますが、被害にあわれたあの女子高生から捕まえなくていいと言われたのですけど、流石に警察官の目の前で無垢な女子高生のスカートの中に頭を突っ込んだのは色々と不味かったようだ。
まぁ、そのまま見過ごすのもあれですからね。
「無駄な時間を使わされてしまい、約束の時間に大幅に遅れてしまいました。怒ってないといいのですがねぇ」
オジサンは気まずそうにしながら電話を掛けながら夜の街を歩きだした。
そして数歩歩んだ先で、ぺこぺこと電話の相手に向かって必死に頭を下げるのだった。
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