第2話 気持ち悪いオジサン


 住所が書かれた紙をタクシーの運転手に見せて、少女はその場所へと向かった。

 タクシー代はその住所の人が払うらしいとオジサンが言っていたので、お金は一銭たりとも持っていない。

 そして今その場所へと着いたのだが、そこはなんというか・・・・・・山しかなかった。

 いや、山以外にも普通の一軒家が建っているのだが、その家以外家は見当たらなかった。

 ここを一言で言うならば、秘境、そう言えるような場所であった。


「あの~お嬢ちゃん。お金いいかな?」

「え・・あ・・は・・はひ・・いま・・あの・・」


 タクシーのおじさんに声をかけられ、少女はどうすればいいのかわからずあたふたする。

 お金を払うのはこの家の人だと聞いていたから呼びに行くべきなのだろうが、本当に払ってもらえるのかわからないし、何より他人に声をかけるのが怖くて動けない。

 そんな少女にタクシーのおじさんは少しイラつきながら、お金を払うように催促する。


「お~、いらっしゃい。ふぅふぅ、予定より早く着くとは、ふぅふぅ、感心感心」


 少女とタクシーのおじさんがやり取りをしていると、不意にその一軒家から一人の男が現れる。

 真っ黒なジャージ姿で真っ黒なサンダル、脂ぎったベットリした髪に無精ひげで、およそ肉体労働などできないだろうダルダルと太っているオジサンが現れた。

 なぜか腰には木を切る大きなナタがぶら下げられている。


「いや~、わるいね。わるいねぇ~。ふぅふぅ、お待たせしちゃってわるいねぇ~。ふぅふず、はいこれでよろしくね。ああ、おつりはいいよいいよ。ふぅふぅ、はいはい、ごくろうさまですねぇ~」


 タクシーの運転手に万札を渡すと、おつりを受け取らず見送った。

 そしてタクシーがいなくなると、太ったオジサンがにちゃりと笑みを浮かべる。


「君が幸さんだね。まってたよぉ。ほら一緒にお家に入ろうねぇ」

「・・・・・・・・ひぅ」

「でぇへへ、そんな怖がらなくて大丈夫だよぉ。怖い事なんてな~んにもしないからねぇ。でぇへへへへ」


 怯える少女に肩に手を置くと、気持ち悪いオジサンは少女を家へと連れて行く。

 怯えていても素直に従うのは、ここで拒否すると自分を送り出したオジサンに後で殴られるかもしれないと言う恐怖から逃げ出すと言う選択ができなかったのだ。


 これからこの気持ち悪いオジサンの言う事をよく聞いてイイ子で居なければいけない。

 そう、この気持ち悪いオジサンがどんな命令を口にしたとしても聞かなければいけない・・・どんな命令でも・・・。



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