変なおじさんの変なお仕事

@kumadagonnsaburou

第1話 我儘に生きているオジサン


「いたい! いたいよ! やめてよオジサン!」


 ある家のある部屋で、小学生くらいの女の子が、中年の男に髪を引っ張られ、殴られていた。


「これっぽっちしか稼いでこない癖になに飯食ってんだよ! 俺が許したかよ! ああ!」


 姪である小学生に働かせ、その金で生活しているこの男。

 昔格闘技でもしていたのか、腹は出ていても身体はがっしりしており、小学生の女の子ではどう抗っても力では叶わなかった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 お腹や背中を殴られながら女の子は必至に謝り続ける。

 決してこの子が悪いわけでは無いというのに、振るわれる暴力から逃げるために必死に、ただ必死に謝り続けた。


「ぺっ、クソガキが。マジでふざけんじゃねぇってんだ」


 ひとしきり教育と言う暴力を振るい終えた男は満足したのか、外で食事でもするためにでていった。

 痛みと恐怖で涙を流し、声を押し殺して泣く女の子を放置して。


 それが彼女の日常。

 両親を事故に無くし、天涯孤独となってオジサンに引き取られてから訪れた彼女にとっての地獄のような日常であった。

 学校にも行けずに、ただオジサンのために働かされオジサンの鬱憤を晴らされるだけのただの道具にさせられていた。




「ではははははっ! ははははははっ!」


 そんな日常が続いていた日に、珍しくオジサンは上機嫌に笑いながら帰ってきた。

 酒を飲んでいるので、また殴られるのかと思えばそんなことはなかった。


「よぉ! 幸(さち)! お前にいい仕事持って来てやったぞ!」

「おし・・ごと・・・?」


 殴られないが、どうにも身体にこびりついたオジサンへの恐怖がぬぐえず、少女は身体を震わせながら、問い返す。

 そんな少女の態度に普段であればイラつきを覚えたオジサンに殴られるのだが、なぜかそんなことはなく、オジサンは上機嫌に笑っていた。


「明日この住所が書かれている場所に行ってこい。大丈夫だ。ちゃんとタクシーを呼んでやるからな。そんでそこに着いたら中にいる奴の言う事を、よ~く聞くんだぜ。一週間もいい子にしてりゃあいいだけだからしっかりやれよ~。イヤだとか、お客様の不快になるようなこと言うんじゃねぇぜ~?」

「オジ・・サン・・・お仕事・・・って・・」

「あ? 今言っただろうが、返事しろよおい! ぶん殴られてぇのか!」

「ひぅ!?」


 拳が振り上げられ、また殴られると身を縮める少女であるが、


「ではははははははっ! 嘘だようっそ~。可愛い甥っ子を殴る訳ねぇだろよ。ほ~らちゃんと無くさずにもってろよ~。ではははははははっ!」


 なぜか殴られることなく、オジサンは笑うだけだった。

 そして少女の手元には住所が掛かれた小さな紙だけが残っていた。


「変態ってのは何処にでもいるぜぇ。でははっ」


 オジサンはぽんぽんと出かけよりも膨らんだ懐を叩くと、イヤらしい笑みを浮かべながら酒を煽った。

 少女に渡された小さな紙。

 その紙に書かれし住所に訪れることで、彼女自身に何が起こるのか・・・無垢な彼女にはわからないのだった。



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