第12話


 「応援に来ました!!」



 「あ、ありがとう。」



 「......あ、あの、この状況は...?」




 死ぬ気で剣を振るう兵士に、死んだように倒れている1人の人間。

 側から見れば、殺人現場にでも出くわしたのかと思うだろう。


 少し前に遡ると...






 *





 


 「イツキさんは魔法で足止めをしてください...!」


 「いや、俺も前に出るよ」



 100をゆうに超えるアンデットの群衆。

 いくら氷魔法で足止めをしても、彼の攻撃が間に合うとは思えない。


 

 「大丈夫です、策があるんです...!」



 そう言うと、キーアンの剣がたちまち赤くなり、炎の太刀になる。

 その熱さは、数メートル離れている俺も感じるようなほどだ。

 確かに、それほどの炎なら敵を一気に攻撃できるだろう。


 しかし、その熱量を扱うには相当な魔力が必要なはず。

 


 「そんな魔力使って大丈夫か?」


 「...?これくらいなら全然大丈夫ですけど...」



 ....もしかして、俺の魔力、少なすぎ....!?



 

 そう言うと、少し先走って来ていたアンデットがキーアンに触りかける。


 

 「おわっ!?........まずい...!イツキさん、とにかくここを抑えましょう!!」



 「おう!!」


 俺は、手に魔力を集中させながら、相手に狙いを澄ました。






 *






 「...で、連発してたら魔法切れで動けなくなっちゃった...。」


 「えぇ...」



 ...まさか自分の魔法容量がここまで少ないとは思わなかった。

 確かに、今まで魔法を使う時はイーファちゃんがいたからすぐに魔力供給をしてもらえたけど...。


 ...魔力容量って増やせるのかな。

 あとで聞いてみよ....



 「そんなことはいいから早く加勢してくれぇぇぇ!!!!!!!」




 


 *




 


 

 魔力回復のドリンクを何本か貰い、なんとか回復した。

 流石にアンデットの数は多く、倒しても倒してもずっと流れてくる。


 「数が多すぎるな...」


 

 今ここにいるのは俺とキーアン、そして援護に来てくれた2人。

 心強いが、この人数ではギリギリで抑えることしかできない。



 うまく声掛けをし合いながら、攻撃を受けないように戦う。

 自分にできることは、魔力を使わずに敵を斬ること。



 アンデットを狙い、腰と足に力を入れる。

 ジャンプする時のように体を伸ばし、その勢いを殺さずに剣の勢いをつける。


 オーク戦の時とは違い、首めがけて剣を振る。

 多少骨の嫌な硬さを感じつつも、自身の成長を表すかのように斬り落とす。


 まずは一体。

 俺はまだ強くない。


 できる仕事を落ち着いてやれば、足手まといにならないはずだ。


 

 3人の取りこぼしたヤツを落ち着いて倒す。

 前までは一体も倒せなかったことを考えると、自分でも成長できるんだという実感がわく。



 

 「よーっし、ちょっと下がっててください!ボクの魔法で一掃します!!」



 援護に来てくれた1人が杖を構えて詠唱を開始する。

 

 ーーー聖なる天使よ。我が身に炎精の如き烈火の炎を操らせたまえ。



 「フレイムバーストッ!!」









 *







 詠唱の瞬間、杖先が一瞬光ったかと思うと、肌に感じる強烈な熱風を感じる。

 ひとつ瞬きをすると、前方の草むらは既に火の海になっていた。


 

 「す、すごい...!」


 

 「へへん、どーですか?ボクの魔法は!」



 ーーー圧倒的な魔力量。

 

 魔力探知に疎い自分でも感じるような、圧倒的な排出量。

 イーファちゃんの魔法量も相当なものだが、この人はまた違う。


 攻撃的か防御的か...形容し難いが、魔力の扱い方が違うように感じた。

 この人からは何か学ぶことがある...そう思った矢先、落ち着いてきた火柱の奥に、何かうごめく物があることに気がつく。



 「あれは...」


 「...イツキさん、ボスのお出ましみたいですよ...!」



 火が落ち着くと、その姿が鮮明に現れる。

 その姿は、アンデットのような見た目でありながら、長身であり、まるで誇張しすぎたラグビー選手のようだ。


 「...あれはハイアンデットです。突然変異で、滅多にみませんけど...」


 「...もしかして、めちゃくちゃ強い?」



 「...ボクでもアイツを倒すには火力不足です。...上手く攻撃の歩調を合わせてくれる魔法使いがいれば別ですけど.......」



 魔法使い...!!

 ...イーファちゃんなら、この状況を打開できるかもしれない....!



 「その魔法使いにあてがあります!来るまで少しだけ待ってください!!」



 ーーーわかりまし.....




 



 *







 その瞬間、鈍い音と共に 視界の隅で空を切る物体が目に入った。

 いや、物体ではない。



 「ぐ...ぁ....」



 そこには、ハイアンデットの一撃を喰らった援護に来てくれた剣士が。

 防御を試みたのか、剣は折れている。

 何より、腕がありえない方向へ曲がっているのがその証拠だろう。




 ーーー死ぬ。




 そう感じた。

 

 構えなければならない。


 幸いにも、ハイアンデットの動きはかなり遅い。

 一撃の威力はあれど、ちゃんと見てよければ凌ぐことはできる。



 

 「た、たすけて....」



 ...彼女を除いて。



 あまりの惨状に、腰が抜けて立てないらしい。

 不幸にもハイアンデットは、彼女に向けて攻撃を行おうとしている。


 助けなきゃ、そう思うのに時間は必要なかった。

 俺は飛び出し、彼女を思い切り押し飛ばし、距離を取らせた。


 拳を振る勢いからだろうか、ものすごい風圧を感じる。

 



 終わった。







 「ハイウィンドッ!!」

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