第10話


 翌日、俺は街の門付近の警戒を任されることになった。

 基本警戒は2人、もしくは3人が固まって行うらしく、例に伴って俺にもペアがついた。


 「あなたがイツキさんですね、よろしくお願いします!」


 軽い握手を交わした若い青年は、この街に住むキーアンと名乗った。

 生まれ故郷がこの街、マンスターである彼は、昔助けてもらった防人に憧れてこの仕事を志望したらしい。


 

 「イツキさんは何故この仕事を?」


 「ああ、コノート村から出てきたんだ。街を体感するのも一つの経験だと思ってさ。」



 「コノート村!?随分と遠くから来たんですね!」



 やはりコノート村というのは、現実で言うド田舎にあたるようだ。

 そして、キーアンとしばらく話していると......。





 *




 「平和だな...。」


 「平和ですね...。」



 門を見張って1時間、全くモンスターの気配はない。

 コノート村の方が守りがいあるんじゃないかってくらい本当に何も起こらない。



 「今日は傭兵団長が前線に出てますからね...。内側の僕らは仕事がないかもしれません。」


 「そりゃ平和か...。」



 コバっさん含む傭兵団長たちが前線で見張っているらしく、モンスターを一切寄せ付けていないらしい。

 楽でいいけど、経験値を稼ぎにきた俺としてはなんとも言えない状況だ。



 「あ、そういえばイツキさんってどんなスキル使ってるんですか?」


 「スキルは...今はフリーズだけかな?」


 「え、スキル解放してないんですか?」



 スキル解放、聞いたことがある。

 イーファちゃんに色々教わってた時に、その話も聞いた。

 

 

 「せっかくなら、なにか解放してみたらどうですか?」



 キーアンの勧めもあり、なにか習得してみることにした。

 

 スキルの取り方はとても簡単だ。

 ライセンスカードの裏には取得可能なスキルがびっしりと書いてあり、それを経験値と引き換えに得るシステムだ。


 「えーと、俺の経験値量で使えるスキルは....」



 「あ、これなんかどうですか?」


 そう勧めてきたのは、アイスバレットというスキルだ。

 アイスバレット。

 説明によると、魔力を使用し手のひらから氷の弾丸を放つスキルらしい。

 

 溜めれば遠距離に、即出しすれば近距離用として使える。



 「確かに、遠距離スキルはあった方がいいかもね」


 「あと、身体強化と瞬発力強化も取っておいた方がいいですよ。イツキさん、剣を使うなら持っておいた方がいいです。」



 純粋に身体能力を上げるスキルも取っておこう。

 この3つでちょうど使い切るな。

 まあ、敵と戦えば勝手に溜まるし問題はないだろう。


 「こうして...解放!」


 操作が終わると、カードが光り体に何か憑依するような感じがした。


 そして、所持スキルを確認するとちゃんと3つが表示されている。



 「お、出来た!」


 「これで強くなりましたねー!」



 スキルの話でワイワイして、時間は過ぎていった...。





 *





 「アイスバレット!」


 かき氷を作るような音と共に、手のひらから氷の弾丸が発射される。

 勢いを持って放たれた氷の弾丸は、近くの木目掛けて飛んでいく。


 そして、咲いている果物にあたり落ちる。


 

 「これ便利だな...。」


 「結構汎用性ありますからねそのスキル。」


 

 落とした果物、コリンゴをむさぼりながら話す。


 あれからまた2時間経ったが、本当に何もない。

 強いて言うなら逃げてきた猫を捕まえたくらいだ。



 「これここにいる意味あるのかねぇ」


 「まあまあ。一応仕事ですから...。」



 「まあ、あと数時間、待てば今日は終わりだしね......ん?」



 横目に、何か向かってくる生き物がいた。

 目を凝らしてみると、人間のような気がする。


 「珍しいね、人が来るのって」


 「...いや、あれはアンデッドです。」


 もう一度見ると、明らかに血色が悪い。

 そうと決まれば、やることは一つ。


 手のひらを広げて、指の間から相手の位置を確認する。

 魔力をもっとこめれば追尾弾にすることもできるらしいが、直線移動ばかりのアンデッドにはこれで十分だろう。



 「アイスバレット!」



 勢いよく飛び出した氷の弾丸は、アンデッドの足に命中し、動きを封じることができた。


 「よし、もう一発...。」


 打とうとした瞬間、その奥にかなり絶望的な光景が見えた。



 「...なあ、あれってアンデッドの大群だよな?」


 「...まずいですね。少し忙しくなりそうです...。」



 初日は平和に終わると思ったら、全然そんなことはないようだ。

 魔力はまだ残ってる。

 ここを抑えて、応援を待つってプランで....。

 

 

 すると、後ろから人の悲鳴が聞こえてきた。


 「は、え!?まさか街の中にもいるのかよ!?」


 まずい、ここを抑えていても中が危険だとどうしようもない。

 もちろんこの街にも傭兵団はいるから大丈夫だとは思うが、何か不安だ。


 「...イツキさん、魔道具で人を呼んでください。こうなると僕らだけでは厳しそうです。」


 「マジか...わかった!」



 キーアンの言う通りに、魔道具を操作する。

 魔力探知、周りにいる人で戦えそうな人に信号を送る。


 前に出てる人から呼んだほうがいいよな...とりあえずイーファちゃんに応援を頼んでおこう。


 あっちもペアか3人だろうし、なんとか...。



 「...とりあえず、戦いましょう!!」


 「おう!!」

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