第2話

 …………


 ………………



 「うぅ………ん?」


 既視感のある光が目に入り込んでくる。

 ふかふかだ……ベッドみたいだな……。

 誰か助けてくれたのか…?


 でも…俺はあのとき、あの子をかばって……それから……


 「生きてる……のか………?」


 信じられずに、できる限り自分の体を確認する。


 手の感覚……あるな。

 足は………あれ?


 足が動かない………?

 まさか、足を攻撃された………?


 恐る恐る上半身を起こすと……。


 「すぅ…すぅ…」


 「…?」


 ん?あれ、ちょっと待って。

 なんで俺の足にもたれかかって人が寝てるの?


 しかも俺が助けた女の子じゃん。

 もしかして、付き添ってくれてたのかな?


 傷とかなさそうでよかった…じゃなくて!!

 この状況は流石にまずいだろ…ここがどこかもわからないし…。

 起きるかな…そ〜っと………


 「おーい……起きろ〜………」


 うん、熟睡だね…。

 寝る子は育つから、うん…。

 俺は動けずだけど……。


 ……そういえば、背中を斬られたはずだけど………

 痛みは思ったより軽いな…。

 そういう薬があるのかな………。


 …てか、ほんとによく寝てるな。

 そりゃ、あんなに怖いことがあったし仕方ないよな…。

 だってまだ…俺より全然若いみたいだし………。


 「んぅ…ん……」


 あ、起きちゃったかな…。

 まあでも、どいてもら………


 「さむい………」


 おいおいおいおい、まてまてまてまて

 めちゃめちゃ掛け布団かき分けて入ってくるじゃん。


 ああめっちゃ隣まで来てるわ。

 いや、足から離れたし、今のうちに抜け出してこの辺を散策しに行ってみるか…?


 そっと…ゆっくり……………


 ごそ…ごそ………


 よし、出れた…。

 うん、足も特に問題ない……ぃ!?


 「いってぇ…っ!!」


 背中いってぇ……!

 流石に無謀すぎたか…?

 やべ、バランスとれな……っ


 そして、大きく転んだ。




 *


 「んん……寝ちゃってたんだ……。」

 確か…助けてくれたあの人の看病をしていて…うとうとしてきちゃって……それで………。

 て、あれ…なんで私がこんな堂々とベッドに寝ているんだろ…?


 あの旅人さんは……ってえっ…!?


 「だ、大丈夫ですか!?」


 そこには、うつ伏せでもがいている旅人さんがいた。


*



 「いや……すみませんでした……。」


 「も〜っ!病み上がりなのに無理して動いちゃめっ!ですよ!」 


 俺は今、怒られている…。

 なんともかわいい怒られ方で……。


 「あのさ…話の途中で申し訳ないんだけど…」


 俺はさっきから気になっていたことを聞こうとする。

 ここがどこなのかとか…。


 「ここど「私が説明する。」」


 「?」


 え、なんか新しい人来たんだが。

 めちゃめちゃ割り込んでくるやんこの人。


 「え、あの…誰…でしょうか…?」


 「む、説明していなかったな。私はシュルク・フューラーというものだ。風牙の刃フウガノヤイバという傭兵団を結成している。」


 「フウガノヤイバ…?」


 ち、厨ニくせぇ………。

 しかもそんな " やってやったぜ… " みたいな顔すんな、もうちょいいいネーミングあるだろ。


 「そこの彼女、イーファもメンバーの一人だ。彼女には主にヒーラー役を担ってもらっている。まだ15歳という若さだが、回復スキルは中々のものだ。」


 え、この子15歳なの?

 そんな年から傭兵団に入るのか………。


 てことは、この傷も彼女が治してくれたのかな。

 彼女の顔をちらっと覗いてみる。


 「えへへ…」

 照れくさそうに頬をかきながら、微笑み返してくれた。

 

 ぐっっっ!!!!

 危ない…尊死するとこだった………。


 …スキルがこの世界にあることはわかったけど…

 それ以外の情報も集めないとな。


 「そういえば…ここはどこなんですか?」


 「ここは傭兵団のアジトだ。コノート村はわかるか?君が倒れていたところから北に1km程度のところだ。君の位置は、この魔導具で調べさせてもらった。」


 「魔導具?」


 「ああ、正確には彼女の位置になるがな。」


 魔導具…GPS的なものか?

 何にせよ、魔力だとか魔法みたいな類は普通みたいだな…。


 えーと、情報を整理しておこう…ここはコノート村というところで、この世界は魔法などは当たり前、スキルといった能力もあるらしい…。


 


 ……てか…………


 ぐう〜っ。


 「はは、お腹が空いているんだな。そりゃあ食べてないもんな。待ってろ、丁度昼めしの作り置きがある。」


 「あはは…ありがとうございます。」


 恥ずかし〜…お腹がなるとは…。

 しかし、傭兵団というわりには家庭的なんだな…。

 


  *


 「さあ、持ってきたぞ。イーファもまだ昼飯は食べてないだろう。二人で食べなさい。あ、私は少し仕事があるので失礼する…。」


 「あ、はい、ありがとうございます。」



 おおっ…めちゃめちゃ美味しそう。

 意外と現実と違うようなものはないな。

 米に魚に野菜の漬物に汁…俺が現実で食べてた飯より豪華だなぁ…………。


 「あ、旅人さん。まだお体、辛いですよね?こっち向いてください、あーんってしてあげますから。」


 「え、そんな悪いよ!一人でも食べれるし…。」


 「だめです!まだ病み上がりなんですから!それに、助けてもらった恩もあるし……」


 「…じゃあ、お言葉に甘えて…。」


 心なしか笑顔になると、彼女は早速スプーンにご飯をよそってくれた。


 「はい、あーん♪」


 ん…美味しい。

 味もそんなに変わらないな。

 …中学生ぐらいの子に食べさせられてるのはちょっと恥ずかしいけども……。


 「…そういえば、イーファちゃんは回復スキルが使えるって言ってたよね?どういうものなの?」


 「ん〜…、ヒールとか、ちょっと魔力を多めに使えばエイフロンとか使えますよ!」


 ゲームは人並みにやってきた俺だが、なかなか聞き慣れない単語が出てきた。

 ヒールの後にエイフロンってことは…エイフロンはしっかり回復させる感じの技だな。


 「あれっ、そういえば旅人さんはなにかスキルとか持っているんですか?」


 「イツキでいいよ。スキル……あるのかどうかわからないな。」


 「まだ視たことがないんですね!じゃあ、今度ギルドハウスで鑑定してもらいましょう!」


 スキルかあ…俺ってなんか持ってるのかな。

 チート級じゃなくてもいいから、なんか人の役に立つようなのがいいなぁ…。


 

 *



 「はいっ、ごちそうさまでした♪」


 「ごちそうさま。」


 美味かった…ここに永住したいくらいだもんなぁ。

 いや、現実の食事が質素すぎたのかもしれないけど………。


 「じゃあ、ご飯が終わったのでお休みにしましょう!一日は安静にしておいたほうがいいですからね!」


 

 「え、寝るの?俺。」


 確かに傷が開く可能性があるのはわかるが、こんな昼間から寝ろと言われてもねれな…


 「それとも、隣でぽんぽんってしてあげましょうか?」


 「え、添い寝ってこと?」


 「…?そうですよ?」


 え、それはちょっと良くないんじゃ…………?

 どっちかって言うと逆だろ、やる役。

 

 「だってこんなあって一日目の人とそんなことは流石にちょ」

 

 「ん…ちょっと失礼しますね」


 「ああああああああああああああ」



 その後、俺は一睡もできなかった…。

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