第29話「皇族としての責務と才華②」

復興が着実に進む。

そして――――


「陛下、やっと口を割らせる事が出来ました」

「妹は何のためにやったんだ?」


僕の故郷でもある流星大国国家セントティクスの王室にて会議が行われていた。

姉とされる女性は実行犯として尋問部屋に今現在も拘留中である。


「やはり、姿を晦ませているギルス様との関わりが濃厚かと」

「やはりか・・・・兄上――――」


自分より二回り上の兄であるナイトメア兄さんのふた回り上の兄、ギルス・セントがこの国での事件の首謀者との事だと決定となった。


「さてと・・・僕からも姉さんに聞きに行ってもいい?勿論、君が護衛として来てくれると有難いんだけど」

「畏まりました。なるべく私から離れないようにお願いします」


ギルス義兄さんの件で関わっているなら・・・


「着きました。この奥の部屋が」

「判った」


牢の扉を開けて貰い、中に入る。


「・・・何よ」

「・・・全く、もうちょっと考えがあればいいでしょうに」


僕が事前に調べた情報によれば・・・・目の前の自分の姉、リベレラ・セントは平民の恋人が居たそうだ。


ただ、長男のギルス兄さんに出自がバレて恋人はギルス兄さんの手下に捕まり、ひどい暴行を受けたそうだ。


「今、仲間がローディさんを回復させてるから。しっかりと反省してから面会に来なよ」

「・・・そう、彼は今、治療を受けているのね」


リベレラ姉さんはあの時、必死の形相になっていたから何かあるのかと思って調べたが・・・恋人絡みとは――――


「さて、僕はローディさんの様子を見に行く。姉さんが反省して兄さんに謝罪したら彼の面会の許可を卸してやってくれないか?ついでに監視連れて」

「畏まりました。手配しておきます」


因みに他に捕まっている面々はスーミラのの魔法の実験体として今もなお弄られていると聞いている。


「それで・・・どうだった?」

「兄さん・・・もう暫く頭を冷やさせてるよ。暫くしたら謝罪しにこっちに来るんじゃないかな?」


取り敢えずギルス兄さんとの裏取引関係についてしっかりと聞いておかなきゃ


「さて・・・まずは腹ごしらえかな~」

「スタヴ様、お食事の用意が出来ました」


連れてこられたのは――――大きな広場だった。

そこで炊き出しなんかを平民の人達が率先して行っていた。


「彼らの瞳に・・・姉さんはどう映るか、声明を待っておくよ、兄さん」

「あぁ、そうだな。話し次第では俺が後から追加で喋らないと・・・」


平民の人達のこういった暖かな行いは他の国でも同様に行われている。

政府が一番信頼を置きたい行動に感じている。


「それじゃ、僕は残してくれている部屋にそのまま仲間と泊まるよ」

「あぁ、ついでに皇都に遊びに行ってもいいぞ~」


仲間の下に戻り、軽く自分の持っている情報を三人に共有を始めた。


「―――って事はおめ~の上の兄のギルスっての?ソイツを如何にかすれば~、とりまこの国は平和って事か?」

「あぁ、そうなる。ただ――――」

「本人は行方知らず・・・ですね」


そう、ギルス兄さんはどこに居るのかさえまだ情報は掴めていない。


「周囲の方々から聞いた情報では・・・ギルス・セントは敵味方問わず誰に対しても残忍な性格を振り回しているそうで、間諜を送ってもその間諜はギルス本人に殺されている可能性があるかと」

「あぁ、だからこそ情報が掴めな―――いや、可能性は一つあるか?」


セントティクス大国の王族は代々長寿だとされていて、セント族がそれにあたるそうだ。


「自分の命を糧にしてゾンビを生み出す事だって可能かもしれないな」

「それじゃ~さ、もしかして――――」


その場の四人全員が頷く。


「ナイトメア兄さんが演説を始めるタイミングの前に既に魔物は用意されている可能性が高い。ナル、魔王の所に連絡を頼む」

「畏まりました」


続けて僕は指示を出す。


「スーミラ、君はこの国のギルドに足を運んでなるべく上位の冒険者をダンジョンへ調査と間引きをするように掛け合って」

「判った!」


後は――――


「ゼクター、僕と一緒に行こう」

「よっしゃ!動くか!」


先ずはナイトメア兄さんの信頼の置ける宰相ラディムさんの下へ足を運ぶ。


「おや、どうかなさいました?」

「おっ、スタヴ様」


復興現場に居た女性騎士がラディムさんの手伝いをしていた。


「・・・もしかして兄妹?」

「あっ、雰囲気で判った」


僕の後にゼクターはそう言う。


「おや、気付かれましたか。えぇ、そちらに居るのが――――」

「セントティクス大国第一騎士団団長のラフィス・ガラームです。どうぞ、よしなに」


早速、二人に話を振ってみた。


「なんと・・・!それではいくつかあるダンジョンを調べればいいんですね?」

「兄上、ギルドに【探知サーチ】専門の冒険者を募ってダンジョン付近に調べて貰ったらどうだ?」


ふむ、兄妹らしい真っ当な判断だ。


「実は僕の仲間の一人が既にギルドに取り合って貰ってるんだ。ついでに誰か一人行って貰いたいんだけど」

「それなら妹を寄越しましょう。頼めるか?」

「無論」


国中の人達はギルス兄さんの魔力を知っているらしい。


「あのお方は本来、弱弱しい魔力の方でした。ですが、ある日突然――――戦争前夜の前日には既に膨大な魔力を持って襲って来たんですよ。その日はまだ幼いスタヴ様を育てている最中でして」

「王妃・・・僕の実母に当たる人はナイトメア兄さんの手引きで必死に僕を抱えて逃げて来たんだよね?」


そして手紙の内容通りだと推測する。


「えぇ、なんで・・・戦争が一旦ナリを潜めていたので、その間に会いに行こうとしていたんですが・・・今現状に至ります」

「成程な、結構苦労してんな」


こちらとしてもさっさと見つけ出しておきたい。


「さて、忙しくなるぞ~」


一方で、とある場所にて―――――


「・・・・ここまでくれば問題無い」


一人の男がダンジョンコアと呼ばれているダンジョンの心臓部にたどり着いていた。


「コレで――――俺を見下していた連中に・・・一矢報いる事が出来る」


ダンジョンコアは魔物を生み出す無限の魔力を秘めた心臓。


魔物がそのコアを取り込めばそのダンジョンはそのダンジョンコアを取り込んだ魔物が滅べばダンジョンは崩壊を始める。


「このコアで俺は・・・・魔王になってやるッ!!!」


男は高笑いしながらダンジョンコアを掴んで天井に掲げる。


「そして――――俺を見下す連中を滅ぼしてやるッッ!!!!」


男はそう言って手に持っていたそのダンジョンコアを取り込み始めた。


「・・・!!!」


ダンジョンコアを取り込んだその男は苦しみに悶え始めた。


「ぐっ・・・グゥォオオオオオオァッ!!!!」


そして――――

完全に取り込んだその男は―――魔族の姿になっていた。


「・・・これか、これがダンジョンコアの力か!」


ダンジョン内に男の高笑いが響き渡っていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る