第8話「魔物の軍勢VSクラン連合軍③」
二人の男が王城へ足を運んでいた。
「記録、取れていたか?」
「あぁ、かなり危ない作業にはなったが・・・それに見合ったモノにはなったぞ」
彼らが手に持っているのは映像や音声などが記録、放映可能な水晶の魔道具である。
国王が彼らに依頼してスタヴ・セントの魔物達を討伐する様子を収めると言うのを実行していた。
彼らは何度も確認をして王族に提出をした。
「我々も途中で失神しかけましたが何とか収める事が出来ました。出来れば視聴する覚悟をお持ちになってからご覧下さい」
「うむ、依頼ご苦労。しばらく休んでいなさい」
彼らは王家に一礼してその場を後にした。
国王は彼らが出ていくのを見計らって一度、咳払いをして話を始めた。
「私がまだ若い頃・・・スタヴに一度助けられた事があってな」
「確か、その当時は王族の責任能力を高める為に試練の洞窟に向かう途中だったんですよね?父上」
王太子バディアがそう訊ねる。
国王は頷き
「その時はまだ、彼は大切な親友とやらが居たんだよ」
「たしか、私たちがまだ幼い時に訃報の知らせがギルド内で出ていたんですよね?」
彼らが話している最中に早速映像が動き始めた。
その映像の現場は先刻の魔物との戦いの場の最前線付近になる。
「・・・父上、この目の前の男は?」
「ふむ・・・どうやらあの時のアレはコレが原因か・・・」
「お父様、どういう事ですか?」
国王は自分の子に真剣な顔で問う。
「この国で亡くなる人は天に召されるのは知っているな?」
「えぇ、死者は必ず思いを込めて送るべしと聞いています」
国王は映像を見ながら溜息を吐く。
「その裏で、逆に死者をこの世に呼び戻してはいけないと言う厳しい
「・・・!死者を冒涜するような行いだからですか?!」
そう、それ故に蘇生魔法は禁忌とされている。
「この国では誇り高き戦死は名誉とされているが・・・復活させると言う事はその名誉を傷つけたとされる。しかも、この映像に移っている男は死者側だ。誰かが意図してその男を復活させて使役したと見える」
「成程」
映像にはとてつもなくその場では表現しにくい程の激しい戦いになっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「クハハハッ!これでこの国ともオサラバだッ!行けッ!ゼクター!」
ゼクター・ハイマン
「・・・・」
ゼクターと呼ばれているその男は何もしゃべらず、無の表情で杖を持って魔法を発動する。
「・・・・」
無詠唱で放たれた魔法は冒険者に襲い掛かる。
「うぉぉぉっ!?逃げろ逃げろ!」
「なんなんだアイツ?!」
魔物達に悪戦苦闘していた冒険者達は追加の魔法攻撃を回避しながら距離を取る。
「くっそ~!なんなんだあの二人!」
「訳分らん・・・お前ら、もう少し粘れよ!!!」
そして、空気が一変――――直ぐに変わっていった。
「!!!!!」
「!!!!!」
全員が何かに気付いて体を屈める。
「あン?なんだ――――」
「【
空から隕石より小さい石の礫がその男に降り注ぐ。
「ぬあっ!?おいッ!俺様を守れッ!!!」
「・・・」
ゼクターが動こうとするが、完全に足止めを受けていた。
「なっ・・・ぐあぁぁぁっ?!」
その場の男達は――――懐かしむ様な顔で―――対峙していた。
「久しぶりだな、ゼクター」
「ス、タ・・・ヴ・・・」
ゼクターはその場で拙く掠れた様な声でスタヴ・セントを呼ぶ。
「ソイツに無理やり蘇生されたか」
「・・・」
ゼクターは頷く。
すると、スタヴ・セントの傍に精霊の男が来た。
「リーダー!」
「浄化の準備をしてくれ。そこのお前達はナヴァの護衛を頼む」
「「「わかりました!!!」」」
ただならぬ雰囲気だと察した彼ら冒険者達は騎士団と共にナヴァンス・ドルムを囲って守りを固めた。
「来い、お前に追いつける相手は俺だけだからな」
「―――――行ク・・・ゾ」
男二人の信念と拳がぶつかり合う。
魔法無しでの己の価値を問う殴り合いである。
そんな二人のぶつかり合いを余所に冒険者の一人はナヴァンスに聞き始めた。
「ナヴァンスさん、あの二人の関係性って――――」
「僕やゴールドが再会する前に既に亡くなっていたとされている伝説のSランク冒険者―――神速のゼクターだよ。彼とリーダー、そしてナルさんとあと一人の女性の四人で構成された忘れ去られし伝説のパーティー【
彼はそう言いながら次々と術式を構成する。
「まさか、あの・・・?!」
「おいおい、確か、二人して不慮の事故だって聞いたぞ?!」
「片割れが亡くなったってのも人伝に聞いたぞ」
彼らの言う事は殆ど合っている。
そう、とある事故が切っ掛けで彼は悲惨な運命を辿ってしまったのだ。
「リーダーはその時、半身不随で・・・体の半分はゼクターの半身と魔法医療で長時間に亘る手術を行ったんですよ」
「―――えっ、って事は」
そう、半分ほど
「不死の力は元は
「そ、それじゃああの目に映り掛けれない程の速さで戦ってる二人は」
その場の冒険者達は暫く正気を疑っていた。
「みんなが疑うのも無理はないですね。基本的にあの二人がクランを立ち上げた最初期メンバーの始まりですから」
二人の戦いは更に
「皆さん、しっかりと守りを固めて下さいね」
「任せろ!!!」
数時間程かかる作業がようやく終わる瞬間である―――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます