第2話うまれた

「どうやら目覚めたようですね」

 姿は見えないが空間全体に響き渡る声。いや頭の中か。

「誰ですか」

 巌はうっすらと声の主の事を理解しながらも聞いてみる。

「私はゴッドです。あなたは死にました」

「……やはりそうでしたか。うすうす感じてはいましたが」

「あなたはベッドから落ちて死んだのですよ。あなたの次の人生を選ぶことが可能です。この世界でやりなおすか、それとも異世界で生きるか」

「異世界ですか……この離宮以外にも世界以外にも生命というのはあるのですね」

 離宮というのは巌が住んでいた星の事である。

「そうです。そしてあなたが転生する星の候補として地球という星があります。そこはあなたが住んでいた離宮と似たような環境、言語です」

「へえ、それはおもしろそうだな」

 巌は少し興味を示した。

「しかし離宮よりは少し科学が進んでいます。しかしその分魔法は進んでいません、というか使えません。まあ厳密に言うと、一部のマジシャンが使えるのを隠しているのですが」

「ふぅん。面白そうじゃん」

 巌はまだ16歳。好奇心一杯の年齢である。厳密には年齢であった。死んでしまったので過去形である。そして年齢だけでなく、同年代に比べても好奇心が旺盛でもあった。そんな巌が出す結論は一つしかなかった。

「離宮では親も兄弟もいなかったし、ほぼ一人で生活、サバイバルしていたんだ。ベッドも何もかも手作りだったしな」

 一応学校には行っていたのだが、たまに行く程度であった。日々の暮らしが優先であった為、半分も通っていなかった。

 それに学校と行っても青空学校で誰でも参加できる学校であった。学校で教えているのは主に剣術や体術、基本的な魔法であった。一応巌は基本はマスター出来る才能は持ち合わせていたし、実際にマスターした。

 未練と言えば自分を慕ってくれていた妹的存在のウタだけである。

「どうですか。転生しますか。地球に」

「そうですね。転生しようと思います。しかしウタだけが気がかりですね」

「ウタとは……あなたに懐いていた」

「ええ、妹的存在です」

「ドラゴンですか?」

 神の声が意味不明な事を口にしたように聞こえたのだが。

「ドラゴン?」

「ああ……あなたは知らなかったのですね。彼女は、ウタはそうドラゴンなのですよ」

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しんだ 日本語破綻者 @mojiuchisyuukann

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