第4話 妻が予約してくれたけど

妻が予約してくれた旅館に行って

みると、玄関の扉を開けるとすぐに仲居さんが出て来た。

「ようこそおいで下さいました。◯◯様?」

「はい。妻と二人ですが」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

中に入ると靴を脱ぐ場所があり、その先には畳の部屋があった。

部屋の真ん中にはテーブルが置かれており、その上にはお茶菓子が置かれていた。

仲居さんはお茶を入れながら言う。

「本日ご案内致しますのは私になります。何なりとお申し付けくださいませ」

「ありがとうございます」

僕は頭を下げた。

「それでは早速ですが、温泉の方に入られますでしょうか?それともまずは夕食をお取りになられますか?」

「えっと……じゃあ先に風呂に入りたいと思います」

「かしこまりました。ただいま準備して参りますので少々お待ち下さい」

仲居さんが出て行った後、僕はソファーに座ってテレビをつけた。

しばらくして仲居さんが戻って来た。

「お待たせしました。当宿自慢の大浴場となっております。男湯女湯分かれておりまして、大浴場の入り口にて服を脱いで頂き、そちらにあるロッカーの鍵を貰ってください。鍵がないと脱衣所に入ることが出来ませんので注意してくださいね。タオル等は置いてありますので、お好きなものを使ってください。それでは私はこれで失礼させていただきます」

「わかりました。色々とありがとうございます」


温泉は大変気持ち良く、疲れも取れていった。

そして夕食は豪勢な料理に小鉢にシロウオの踊り食いまで付いていて大満足。


食べ終えて部屋に戻ると布団が敷かれていた。

寝るには少し早い時間だが、明日もあることだし早めに就寝することにした。

翌朝。

朝食を食べてからチェックアウトをし、帰り支度を整えていると仲居さんがやって来た。

「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」

「はい!とても良い部屋を用意して頂き、妻とも仲が良くなりましたよ。」「それは良かったです。ではまたのお越しをお待ちしております」

こうして僕は旅を終え、家に帰ってきたのだった。………………


家で妻とお茶を飲みながら話をしていた。すると妻は微笑みながら言う。

「皮膚がムズムズしてるし、お腹も調子が悪いの」

「……病院に行くかい?」

「そうするわ!」……妻の診察結果はやはり妊娠してはいなかった。


道中、旅館から電話があった。

「シロウオの踊り食いをされたお客様が複数病院で寄生虫による症状で治療を受けています。お客様も異常がないか診察を受けて頂き治療費はこちら持ちの保険で対応させていただきます。」という話しだった。


妻に事情を話した。


しかし、妻は僕の言葉を信じず僕の身体を全身確認して赤い跡を見つけた

と言ってきたのだ。

でもまさかそれが寄生虫が原因だとは……。


川魚の生食が有名で食べない人が多いがシロウオの踊り食いも危険な食文化だという事の注意が必要だ。


 病 ~引用

顎口虫症を発症すると、皮膚のかゆみ程度でおさまることがある一方、皮膚のミミズ腫れや痛みを引き起こすことがあります。また、目や脳などにも寄生虫が入り込むことがあり、失明や麻痺まひ、最悪の場合は死にもつながることがあります。~



あれから数ヶ月が経った。妻の身体は軽く、自分のあの赤い跡は少し残る程度で軽くすんだ。今回もルーレットに当たらず命が救われた。

そして今日もまた、夫婦仲良くセックスをする。……

「あなた、赤ちゃん出来たみたい」

妻が嬉しそうな顔をしている。

「本当か!?」

「えぇ!あなたの子よ!」

僕は涙が出てきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る