第2話 低温調理という魔法の言葉


ーある日突然、妻の料理が普通になったのだ。理由はデジタルで温度管理してるのだ。

俺は嬉しかった。これでもう大丈夫だと思った。

しかし、油断した。それは罠だった。

鶏肉を低温調理をしていたのだ。博識な方や食中毒に詳しい方は知ってる。

そうカンピロバクターだ。これは加熱しても菌自体は死んでいない。だから生き残った奴らは繁殖していた。

そして、妻は加熱が終わったと思って食わせてきた。特定条件が発動すると、中心温度が上がりきらず菌が生きるのだ。


「低温調理もキチンと知識を正しく理解し中心温度の確認は忘れずに

機械は壊れるし、いつもと同じでも冬等々の食材温度が冷たい

人の確認ミスが人の命を奪うから」


数日後に症状が表れる

腹痛・下痢・嘔吐・発熱などだ。

もちろん病院に行った。診断結果はカンピロバクター感染によるものだった。

そして症状が悪化した。

ギランバレー症候群になり一時期は生死をさまようほどヤバかった。

俺はベッドで点滴をしてもらいながら妻に説明をした。


「もう大丈夫だから、美味しい焼き肉行こうね。」

「うん。楽しみにしてるわ。」


退院後すぐに焼き肉屋に行って鶏刺しを妻は食べた。


案の定、妻がカンピロバクターに感染した。そして症状が悪化した。

体調を崩して入院した。

妻には毎日のように謝罪された。

「ごめんなさい。私がちゃんとしてれば良かったのに本当にゴメンナサイ」

「いいんだよ。気を付けてくれればいいんだ。」


そして、妻は亡くなってしまった。

あの時、一緒に焼き肉食べなければよかったのか?



違うよね。こういう展開もあったかもしれない。妻は無事に生きている。

俺達は夫婦なんだから。

これからもずっと一緒だよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る