第27話

 家を建てる職人の手配や生活に必要な物の準備などをしている間に日は瞬く間に過ぎていく。もちろんガイン殿下とは食事を一緒にしている。ガイン殿下にはここに残ってほしい、私の妃に、と毎回願われた。


けれど、違うの。


ガイン殿下の事は好きなのだけれど、王妃にはなれない。言葉が上手く話せない私は外交も出来ないし、マナーが分かるわけじゃない。毎回知らない人達と話をするのも苦手だし、やっぱり向いていないの。




 出発の日。


 私はトランクに最低限の衣服を詰め込む。教会からここに来る時には数枚の修道服だけだったけれど、平民が着るようなワンピースも何着か増えた。ドレスはクローゼットに置いたままにしてある。一人暮らしで着る事なんてないもの。


トランク三つに増えているけれど馬車には余裕で積み込めるので問題ないわ。ガイン殿下は私の物が少ない事に驚いてまた心配させてしまったわ。


「ミナミ様、では行きましょうか」


「シェダム先生、今、行くヨ。ガイン殿下、今まで有難うヨ。元気でね」


ガイン殿下は私の手を引き、私を抱き寄せた。


「ごめん、ごめんな」


涙を流して謝る殿下に私はそっと腕を回してギュッと抱きつく形をとった。


「私、大丈夫ヨ。殿下、幸せになって。私、毎日村、お祈りするヨ」


『ガイン殿下や城の人達が幸せになりますように』私はおまじないを言葉にした後、ガイン殿下から離れた。城の人達に見送られながら馬車に乗り込み、馬車は動き出した。


『さようなら』と私は声に出して手を振り王都を後にする。

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