第25話
ある日、ガイン殿下に王都の街に行ってみないか?と誘われた。私は街の人達がどんな暮らしをしているのか気になっていたので二つ返事で返した。どうやら街はお祭りがあるらしい。聖女を祝うお祭りらしく、みんな黒い帽子やかつらを被り豊作を祝うのだとか。
ちょっと気恥ずかしいものがあるよね。
街ってどんな感じなのかな。ちょっとだけワクワクしている。
マーサが用意してくれた街の人達が着るようなワンピースにかつらを被り、帽子を被って準備万端。部屋でガイン殿下を待っていると、ガイン殿下は黒い帽子に麻のシャツとズボンを着ていた。
「待たせたな。行こうか」
私達は裏口から街へと向かった。
「凄い人、沢山いるヨ」
「あぁ、お祭りだからな。ミナミは俺と離れないように気を付けないとな」
そうガイン殿下は私の手を取った。所為恋人繋ぎというやつではないか。
「ガイン殿下、私、そこまで子供ないヨ」
ドキドキしながら言ってみると、ガイン殿下は微笑んで
「ガインだ。殿下なんて言ったら皆が驚くだろう?」
「わかった」
私の質問に答える事なくガイン殿下は手を繋いだまま歩いて人混みの中へ入っていく。子供の時に行った神社のお祭りを思い出す。しっかりとお父さんに捕まっていないと人混みに流されちゃうのよね。
周りは巨人だらけで子供になった気分。街の中央に着いたのかな。音楽が聞こえてくる。人と人の隙間から覗くとどうやら旅の踊り子なのかな音楽に合わせて妖艶な踊りを踊っている。衣装も薄いレース地で作られていて男達の鼻の下は伸びっぱなしだ。
「ガイン、あれ見たかった?」
「ち、違うぞ!?ここの中央広場に大道芸人だったり子供たちの踊りだったり、色々イベントがあるんだ。たまたまだ」
何か焦っている様子。
そうか、指摘してはいけない事だったのかな。
うんうん、そうよね、男の子だものね、と一人納得する。
「そ、そうだ、ミナミ。ほらっ、あっちに店が出ている。見に行こう」
焦っているのかグイッと私の手を引きその場から立ち去ろうとする。
「ガイン、ごめんね。言ったダメだった。今度、気を付けるヨ」
「ち、違うからな!?」
そうして広場の中心から少し離れると屋台が沢山出ていてとても面白い。フルーツや何かの肉を焼いている店、雑貨等どれも見たことがないので興味が湧きっぱなしだよ。
「ミナミ、どれか欲しいものはあるか?」
ガイン殿下が聞いてきたので私はうーんと考えた末、多分ソーセージだろうと思われる物を指さした。
「あれ、食べたい」
「あぁ、あれか。いいぞ。ミナミなら一本でお腹一杯になりそうだな」
確かに私にしては大きいけれどたまにはがっつり齧り付いてみたい。ガイン殿下はお金を支払い自分の物と私の物を買って渡してくれる。私は大きく口を開いて齧り付く。
!!!
美味しいっ。やっぱりソーセージだ。想像していたよりも皮が厚くてパリッとしていてとっても美味しい。あぁ、久々にソーセージを食べたわ。
私を見ていたガインは目が合うとフッと視線を泳がせている。口の周りにソースが付いているのかな。慌ててハンカチでふき取るけれど、そんなには付いていないや。良かった。口の周りにべったりなんて子供みたいだよね。
「ガイン、美味しいヨ」
「良かった。他に欲しいものがあれば何でも言ってくれ」
ソーセージを食べ終わった後、雑貨のお店のブースを見て回る。そしてネックレスを売っている店の前で思わず立ち止まる。小さなガラスの飾りの付いたネックレス。とっても可愛い。
「おぉ、嬢ちゃんいい所に目を付けているじゃねぇか。可愛いだろう?今なら安くしておくぜ」
「ガイン、これ可愛い」
「ミナミ、これが欲しいのか?もっと高いのでいいんだぞ?遠慮しなくてもこの店の物全部買い取ってもいいんだぞ?」
「ううん。これがいい。これ欲しい」
「そうか。可愛いな。これを一つ貰おう」
ガイン殿下に買ってもらった!嬉しい。早速付けてみる。
「ガイン、似合っている?」
「あぁ、とても良く似合っている。可愛い」
可愛いって言われた。ちょっと嬉しい。ネックレスが可愛いと褒められていると思うけれど、自分が褒められているようで嬉しいな。
私は上機嫌で他の店も回ってみた。でもね、私には街が大きすぎたみたい。いや、きっと歩きなれていないからだと思う。歩きすぎて足が痛くなってきた。ガイン殿下も私の歩くスピードが落ちた事に気づいたみたい。
「ミナミ、疲れただろう?そろそろ帰ろうか」
「……うん。ごめんヨ」
「謝らなくていい。俺はミナミと街へ出られた事が嬉しかった」
「私も街見て、楽しかったネ」
そうして私は初めての街へのお出かけは終了した。ネックレスは普段使いが出来るような物にして良かった。だって高価な物だと毎日着けて歩けないしね。
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