第7話 メッセージ

      ◆◆◆誠一side◆◆◆


 告白の結果、神宮寺さんと付き合う事になり、武人に「お祝いだ!」という名目でゲーセンやらカラオケやらに連れ回された。俺自身、付き合えたことは最高に嬉しかったし、武人も自分の事の様に祝福してくれた事が凄く嬉しかった。こんなに晴れやかな気分は久しぶりだ。


「でも流石に疲れたな。昨日は眠れてないしさっさと風呂入って寝よう」


 夕飯は武人とファミレスで済ませてきた。後は風呂に入るだけなので寝間着を用意して制服を脱ぐと、ヒラリと制服のポケットから可愛らしい便箋が落ちた。

 神宮寺さんから貰った便箋だ! 中には連絡先が書いてあると言っていた物だ。

 慌てて便箋を拾い、可愛いクマのシールで封をされていたので丁寧に剥がす。中を確認すると手紙が入っており、可愛らしいけれど達筆な字で書かれていた。


“拝啓龍宮誠一さま

 

 突然のお手紙失礼します。誠一さんからの告白には驚かされました。何より、私が暴漢に襲われているところを颯爽と助けてくれ、目と目が合った瞬間に運命を感じた殿方が同じ学校で同級生だった事にも驚き、運命を強く感じました。

 誠一さんから告白された時は直ぐその場で了承したかったのですが、何分なにぶん、私の家は会社を経営しており、厳しく育てられた為、家族に相談する必要がありました。話し合いの結果、誠一さんには無理なお願いをしてしまう事になりました。

 ですが、この手紙を読んでいるという事は、無理な条件を了承してくださったということ。重ね重ねお礼申し上げます。

 長くなってしまいましたが、最後にこれだけは伝えたいと思います。


 誠一さん、私は貴方という運命の男性ひとに出逢えて幸せです。


 〇〇〇△△△ こちらがメッセージアプリのIDになります。

 誠一さんからの連絡お待ちしております♥”


 手紙を読み終え、冷や汗が噴き出し、手紙を持つ手が震える。

 時間を確認すると既に二十二時三十分だ。手紙を貰ったのが十六時頃と考えると六時間以上も神宮寺さんを待たせてしまっている。


 慌ててスマホを取り出しメッセージアプリを起動して、手紙に書いてあるIDを入力すると神宮寺さんの連絡先が出て来た。連絡が遅くなった事を謝らないと! と、友達追加をタップしようとして止まる。


「なんて送れば良いんだ?」


 謝る事は前提として、初めてのメッセージが謝罪というのはいかがなものか。やっぱりここは無難に、<こんばんは>とかか? いやいや、無難過ぎるな。異性にメッセージを送るなんて美咲くらいだし、そもそもやり取り自体がすくな……そうだ! 美咲との最初のやり取りを参考にすれば!


 そう思い美咲とのトーク履歴を遡る。

 あった! あったけどこれは参考にならないな。因みに美咲との初トークの内容は


<追加よろ>

<了解>


 これだけである。流石に神宮寺さん相手に<追加よろ>とは送れない。いや、待てよ? 言い方を変えればイケるんじゃないか? 例えば<追加よろしくお願いします>なんて良い線いってるんじゃないか? いやいや、謝罪はどうする? やっぱり先に謝った方がいいのでは?


 最適解の文章を考えている内に、いつの間にかスマホの時計が午前零時を表示していた。

 早く連絡しないと! と思うのだが、頭がボーッとして何も思い浮かばない。それに瞼が重力に負けそうだ。こんな状態では思いつくものも思いつかない。


(十分だけ仮眠しよう。起きたら風呂に入れば頭もスッキリして良い案が思い浮かぶかもしれないし)


 今の状態よりは幾分かマシになるはずだ。

 ベッドで寝ると起きれなそうだから机に突っ伏して寝よう。万が一の時の為にもアラームをセットし、眠りについた。


 眠かったはずが眠れない。というかさっきより目が冴えている。思考も何故かクリアだし眠らなくても大丈夫そうだ。

 起き上がり再びスマホと睨みあう。そこで気づく。


「え? あれ?」


 スマホの画面には07:21と表示されていた。慌てて家の時計を確認するが、どれもスマホと同じ時間を示している。


 ……うわあああぁぁぁ、やってしまったぁぁぁぁ!? アラームセットした筈なのに!

 確認するとアラームが止めてあった。恐らく無意識に止めてしまったのだろう。


「どどど、どうする!? とりあえず学校行かないと!」


 そうだ! 学校だ! 学校で武人に相談すればいいんだ! こんな時彼女持ちは頼もしい!

 学校へ行く準備をしていると、汗臭さを感じた。そういえば結局風呂入ってなかった。今から風呂じゃ確実に遅刻する。とりあえず今日はシャワーで済ませよう。



 学校に到着し、武人にアドバイスを貰うべく教室に向かい歩いていると、突然目の前に神宮寺さんが姿を現し、話しかけられた。


「ちょっといいかしら?」

「え?」

「何も言わずに付いてきて頂戴」


 それだけ言って神宮司さんはさっさと歩き出してしまった。

 雰囲気から相当怒っているのが分かる。それに関しては物凄く反省している。だけど、条件の一つ、学校での接触禁止は大丈夫なのだろうか?

 そんな事を考えながら神宮寺さんの後を付いて行くと、人が居ないのを確認し、空き教室に入って行った。俺も人目につかない様に空き教室へと入る。

 神宮寺さんは腰に手を当てて、半ば叫ぶように質問してきた。


「どうして昨日連絡しなかったの? ずっと待ってたのよ!」


 やっぱりその事で怒ってたのか。これは俺が百パーセント悪いのですぐさま謝罪する。

 いつもと喋り方が違う事に違和感を覚えたが、きっと怒っているからだろう。これ以上怒らせてはいけないと深々と謝罪するが謝罪は受け入れられず、今すぐメッセージで謝れと言ってきた。目の前に本人が居るのにどうして? と疑問に思うが彼女なりの考えがあるのだろう。

 その事を了承すると、神宮寺さんは念を押し空き教室から出て行った。


 直ぐにメッセージアプリを起動して神宮司さんを友達追加する。


<昨日は連絡出来なくてすみませんでした! 申し訳ありません!>


 と送ると、直ぐに返事が来た。


<やっと連絡来た! 昨日はずっと待ってたんですから>

<本当に申し訳ないです! 気の利く文章を考えていたら寝てしまっていて汗>

<それで、気の利いた文章は思い浮かびましたか?>

<それが……俺の頭では思いつかず汗 本当にごめんなさい>

<ふふ、冗談です。誠一さんからのメッセージなら何でも嬉しいです。現に今、とても幸せです>

<良かった、安心しました。>

<安心してもらえて良かったです>

<ところで、学校では接触禁止だったはずだけど大丈夫なんですか?>

<……ええ、今回は緊急事態だったので>

<俺が不甲斐無い所為で申し訳ありませんでした!>

<もう、気にしないでください>

<ありがとうございます! もうすぐ授業なのでこの辺で失礼します>

<はい、お勉強頑張ってください>

<励みになります!>


 ここでメッセージのやり取りを一旦中断し、予鈴が鳴っているので慌てて教室へ向かう。

 メッセージでの口調は温和な物で、さっきまでの神宮寺さんからは想像できない。よっぽど怒らせてしまっていたんだろう。

 これからは彼女優先で怒らせない様にしよう!

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