ガチャ641回目:クーリングオフ
「シャル、なんかその……すまん」
「……いいさ。この子がここまでの変化を見せるということは、アマチさんこそがこの武器の使い手に相応しく、最もその性能を引き出せる人間ということだろう。悲しいが、こうなってしまっては……」
「いや、受け取らんからな?」
「えっ?」
「まあ確かに俺の方が強いからこうなったのは確かだが、俺としては所有者の変更は不本意だからな。奪うつもりなんて端から無いから、返せるなら返すぞ」
俺の言葉にシャルは驚いている。
いや、いくら俺が持った方が真価を発揮できようと、この武器の発見者はシャルであり、彼女の地元の人間は、突然現れた俺が横から掻っ攫ったら、ブチ切れるのは間違いないだろう。そんなの許されるはずがないし、俺だってそんなことはしたくない。
あと、シャルが驚いているのは高ランクの奴らは、力こそが正義な考えの連中が多いからなんだろうな。道具が新たな主人の存在を認めたのに、素直に返されるとは夢にも思わなかった。そんな顔をしている。
「本当に良いのか? ブラマダッタはこんなにもアマチさんを認めているのに」
「くどいぞ。まあ、面白そうな能力が追加で見えてはいるけども、貰う気はないからな」
名称:【No.04】魔導弓ブラマダッタⅦ
品格:≪幻想≫ファンタズマ
種別:弓
武器レベル:89
説明:世界に10種あるファンタズマウェポンの1つ。神話に登場する遺物を完璧に再現した唯一無二の武器。装備者の魔力を消費してインドラの矢を作成する。矢の威力・性能・格は作成者の能力によって変化する。所有者の能力によって成長して行き、姿を変化させるだけでなく性能が向上し、各種専用スキルも解放される。装備者の全ステータスに大幅なボーナス。
★レベルⅠ:インドラの矢 作製権限
★レベルⅡ:武技スキル『獄炎の矢』『流れ星』使用権限
★レベルⅢ:武技スキル『流星群』使用権限
★レベルⅣ:武技スキル『星落とし』使用権限
★レベルⅤ:真・インドラの矢 作製権限
★レベルⅥ:武技スキル『滅殺の矢』使用権限
★レベルⅦ:神技スキル『破壊神の加護』解放
うん、めちゃくちゃ気になるラインナップだ。けどあんまり見ていると、本当に手放すのが惜しくなってくるな。レベルが上がるたびに武技スキルが解放されるだけじゃなく、スキルも出てくるなんて。
自分のステータスを覗き見てみたが、明らかに既存のスキルとは別枠で、スペシャルのさらに下に『
「アキ、マキー」
「はい、ショウタさんっ」
「なーにー?」
しかしこのまま手放すのは惜しいので、2人には今の状態のブラマダッタの性能を情報として残してもらう事にした。この知識は今後、何かの役に立つかもしれんしな。
決して名残惜しいからじゃないぞ。
「そんじゃ改めて、シャル。受け取ってくれ」
「ああ……。本当に君は不思議な人だな。決して無欲ではないのは見てわかるが、これを手放せるなんて。ありがたく受けと――」
『バチッ!』
シャルがブラマダッタを手にした瞬間、またバチッとなった。まさかコイツ、シャルから俺に完全に鞍替えしたのか。
「ああ、やっぱりあたしにはもう、この子を扱う資格は無いのか……」
「……おい、
俺は圧4種に加え、各種オーラを全開にして脅しをかける。すると身の危険を感じたのか、ブラマダッタは何度か明滅をしたあと輝き始め、しばらくすると最初見た時のようにⅣの状態へと戻っていた。
これでいいはずだ。
「シャル、もう一度」
「あ、ああ」
そうして今度こそ、ブラマダッタは元の鞘へと戻るのだった。
うん、コレで解決だな。
「あ、ありがとう」
「それでシャルは、なんで俺に会いにきたんだ? クリスと同じで興味本位か?」
「え? ああ。うちにも難関のダンジョンはあるけど、エスのとこほど問題がある訳じゃないから手伝ってほしい事もないんだ。ただ、エスがあのダンジョンで苦労していたのは知っていたし、インタビュー動画をネットで見てから君の事が気になってね。会いにきてみたのさ」
「そっか」
別にダンジョン関係で困っているわけでもないし、求婚目的でも無かったか。なら、今後は普通に友人として仲良くやれるかな。普通に良いやつっぽいし。
「けど、ブラマダッタを従えた強さと、それを平気で返せる心の在り方に強く惹かれた。だからあたしも、アマチさんの婚約者に立候補したい。そして妻になれば、この子をちゃんと受け取ってくれるかい?」
『おおお!!』
「えぇー……?」
周囲は盛り上がりを見せるが、俺としては友人枠が自然と潰えたことにショックを受けていた。くそ、想定外がすぎる。
「……返事は一旦保留でもいいか?」
「む、そうか……。あたしのような可憐さのカケラもない女は、アマチさんの好みではなかったか」
「そういうことじゃない。シャルは美人ではあるが、そんなホイホイと彼女を増やすつもりはないと言うだけだ」
「そうなのか? ……まあ、振られた訳ではないのなら、今はそれで満足しておくか」
「助かるよ」
「それにしても、これほどまでに女性を侍らせているのに、意外と慎重なのだな」
「こっちにも色々とあるんだよ」
シャルがいい奴なのはもうわかったが、だからといって即断即決は厳しい。
この後はうちの彼女達との個別デートに加え、結婚式があるのだ。悪いが、このタイミングで仮に関係を結ぶ子が増える事があったとしても、式を挙げるならば、2回目以降になることは確実だ。決して今のメンバーと同列に扱うつもりはない。
もしも関係性を進めるとするなら、せめて結婚式が終わってからだな。
「さて、次は……」
少し離れたところで、俺を信仰物として捉えていそうな人と、ワインがぶ飲みしてる人だな。
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