ガチャ640回目:武器マニアのメイン武器
クピドの黄金弓を手渡してから数分経過したが、シャルは相変わらず目を輝かせながら隅々まで見ているし、神職関係者らしき2人の片割れからは相変わらず熱い視線が送られ、もう1人はお酒に夢中なままだ。
そしてクリスはエスと並んで、そんな様子を微笑ましく見ているのだった。
神職2人についてはあとで考えるとして、まずはこのままシャルと親睦を深めるか。
「なあシャル。俺の武器を見せた対価というわけでもないが、君の弓も見せてもらうことはできるか?」
「あ、もちろんよ! だけど、こいつはちょっと気難しい子でね。見るのはいいけど、触るのはお勧めできないかな……」
「ん?」
触るのはお勧めできないって、もしかして……。
「なあエス」
「ああ、そうさ。シャルの弓は、ケルベロスと同格さ」
「へぇ」
それは楽しみだな。
「ああそうか、エスの妹もファンタズマウェポンを持っていたのだったね。そしてアマチさんは彼女を身内に引き入れてるんだから、危険性は承知の上よね」
「はは、甘いよシャル。兄さんは初見でケルベロスを調伏しているんだ」
「なんですって? 所有者の血縁には甘くなるって話は聞いたことがあるけど、血縁でもないのに武器に認められるなんて。アマチさんは本当にすごいんだね……」
「とりあえず、見せてくれる?」
「ああ、わかった。これがそうだよ」
彼女が取り出したのは黒を基調としたシックな弓だった。それはまるで幻獣のような存在に1本だけ生えている角を削って作られたような、荒々しくも神秘的な存在感を放っていた。
名称:【No.04】魔導弓ブラマダッタⅣ
品格:≪幻想≫ファンタズマ
種別:弓
武器レベル:86
説明:世界に10種あるファンタズマウェポンの1つ。神話に登場する遺物を完璧に再現した唯一無二の武器。装備者の魔力を消費してインドラの矢を作成する。矢の威力・性能・格は作成者の能力によって変化する。所有者の能力によって成長して行き、姿を変化させるだけでなく性能が向上し、各種専用スキルも解放される。装備者の全ステータスに大幅なボーナス。
これはまた、壊れ武器だな。
ケルベロスのような独自の弾丸生成能力はあるようだけど、それよりも目を引くのは独自に見た目が変化して能力が強化される点か。異名の『スターダスト』も、そんな過程で解放されたスキルによって付けられた物だろうか?
どんな技を使えば命名されるのか気になってくるな。
「シャル、そのブラマダッタは、手に入れてから何回くらい変身したんだ?」
「3回よ。けど、まだ変身する予兆がありそうに思えるのよね」
「やはり3回か」
だから武器にⅣなんてナンバリングがついてるんだな。
「……なあ、シャル。持ってみてもいいか?」
「やっぱり持ってみたい? まあ、あたしもブラマダッタを初めて見た時は胸が躍ったから、気持ちは分かるけど……。ケルベロスを調伏した実績があっても、危険な事には変わりないから、せめて外に行かない?」
「良いぞ。なら早速行こうか」
ケルベロスの時と同様、資格のない人間が持つと武器の方が拒絶して大暴れするんだったよな。
弓の力が暴走してしまったら、屋内では危険だもんな。シャルの懸念はもっともだ。だけど、俺達が外に行くのに合わせて、周囲の人たちも着いて来てたらあんまり意味ない気もするけど……。
まあ、高レベルの冒険者が多数いるし、そこは自己責任か。失敗するつもりは微塵もないけど。
「ところで、こいつを御せた人間は他にもいるのか?」
「いるわ。他国のSランクだけど、彼女はあたしと肩を並べられるほどに優秀な弓使いよ。だけど今日は不参加ね」
「そうなのか。その人はダンジョンには困っていないとか、都合が悪いとかそんな感じなのかな?」
「そもそも、彼女は既婚者だしね。婚約者レースには不参加だと思うわ」
「ああ、そういう」
まあそうか。
今まで出会って来た、美人や美少女の未婚率が異常すぎただけで、流石に皆が皆独身ってわけじゃないよな。
でもその人も、俺という存在を分かってないなー。困ってるダンジョンが面白ければ俺はそれだけで参加するし、そもそも身体を捧げることを前提とした子達が多すぎるんだよな。他のSランクの男に、そういうのを求める連中が多いからそうなってるのかもしれないけども。
「ふぅー。……よし、覚悟を決めたわ。はい、アマチさん。受け取って」
「ああ」
『バチバチバチッ!!』
ブラマダッタを受け取った瞬間、手の中のソレが大きく爆ぜた。
「ぐっ!?」
「ええっ!?」
まるで高エネルギーの怪物が宿っているかのように、弓は何度も脈動し、溢れ出た力が雷となって、周囲に飛び散る。
コレは確かに、パーティー会場で試せる物ではないな。そう感嘆しつつも、俺はブラマダッタを制御することに意識を集中させる。
「うそ……こんな反応、あたし知らない!」
「はは、流石兄さんだね」
「呑気ねエルキネス。助けなくていいのかしら?」
「大丈夫さ。この程度でやられるほど兄さんは柔じゃないよ」
外野の会話すら耳に入らないほどに集中していた俺は、ついに荒れ狂うブラマダッタの奥底で、意思を持った存在が隠れ潜んでいるのを見つけ出した。
「いい加減……大人しくしろ!!」
『存在圧』を含めた4種の圧を重ね、武器に宿る意思に命令する。その行動が功を奏したのか、ブラマダッタが放っていた力の奔流はゆっくりと縮小していき、最後には大人しくなった。
「ふぅー。……あー、こりゃ、本当に外でやって正解だったな」
周囲の草地は黒く焦げ、所々では煙が燻っていた。もしかしたら燃えていたのかもしれないが、それを止めてくれたのはクリスかセレンか。
なんにせよ、大きな問題にならずに済んでよかったな。
「アマチさん……」
「あ、すまんシャル。ちょっと時間かけすぎちゃったかな」
「それは良いよ。そんなことより、それ……」
「ん?」
シャルの指差す先には、禍々しい姿へと変化したブラマダッタの姿があった。スタンダードな形状からは一変。漆黒のボディーは、上下から裂けるように枝分かれし、Xの様な形へと変化。そして常時『存在圧』を垂れ流しているかのような、強い波動を感じさせるのだった。
「とんでもなく変身したなぁ」
原型留めてないじゃん。
「……うわ」
性能をチラッと見たが、武器名はちゃっかりⅣからⅦになってるし、武器レベルは3も上昇。その上所有者になったからか解放されるスキルも全部見えている。まあこうなったってことは、俺を主人として認めたということだな。
……いや、主人として認められちゃダメか!?
これ、俺のじゃないのに。
所有権を奪うつもりはないしな……。返せば元に戻るだろうか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます