ガチャ639回目:4人の国外Sランク
「おーいエスー」
「やあ兄さん。話し合いは終わったのかい?」
女性達とお喋りするエスの元に行くと、エスに集まっていた視線や興味が一斉に俺の元へと集った。
それは周囲の観客だけでなく、エスと話していた当人達からのものも含まれるのだった。
「ちょうど兄さんのことを話してたんだ。彼女達を紹介してもいいかい?」
「良いぞー。つっても、全員ただの知り合いじゃないんだろ?」
「ああ、流石兄さん。もう察しはついてるか」
この場にいる女性は4人。ちょうどサクヤさんに教えてもらった人数と一致するが、誰もが目を引くほどの美人さんだ。そんな彼女達こそ、国外のSランクであり、俺の力を借りに……あわよくば関係を持とうと目論むメンバーなのだろう。
本当はもっといたそうなのだが、俺の活躍を見て計画の変更を余儀なくされたり、手篭めにするのは不可能と判断したりでいくつかの国が手を引いたらしい。さっき別れ際にサクヤさんが言ってた。
「……ではエルキネス、皆様遠慮があるようですし、わたくしからお願いできるかしら」
そう言って率先して前に出たのは、肌が雪のように白い銀髪の美少女だった。他の3人は静観を決め込む様で大人しくしている。いや、正確には2人かな。1人はさっきからワインをガッポガッポと飲み続けている。まるでワインは生命の水だと言わんばかりに、手放す様子がない。
お酒好きなのかな? アキとは気が合いそうな気がする。
「ああ、分かった。兄さん、彼女はクリスティーナ。ロシア出身のSランクで、異名は『幻凍姫』だよ」
「初めまして、ショウタアマチ様。気軽にわたくしの事はクリスとお呼び下さい」
「俺もショウタで良いよ。よろしくクリス」
クリスと握手すると、その手はひんやりと冷たかった。
「先ほどはアレが失礼を致しましたわ。間違っても仲間や友人などではありませんが、一部の国からはアレとエルキネス、そしてわたくしともう1人で4人セットの扱いを受けているのです」
「ははっ。彼と同類扱いは困るよねー」
「全くですわ。相手の強さを測れず噛み付くなど、本当にプライドだけは高くて……」
「ああ、いいよ別に。弱かったし」
ほぼワンパンで終わって、被害も何もなかったしな。
「彼はあんなのでも、火力だけで見れば世界でも上澄みなんだけどね。それを一蹴できるなんて、やっぱり兄さんは凄いよ」
『決闘』は破壊されるリスクがあると知らなかったのは致命的だったよな。まあ、俺も最近知ったばっかだけど。
「エルキネスの難関ダンジョンを制覇したと聞いたときは耳を疑いましたが、ショウタ様の力の一端を知れば納得せざるをえませんね。オーラも別格ですが、アレとの戦いではまるで本気を出していなかったのでしょう。ますますお近づきになりたく思いました」
クリスは握手した手をそのまま両手で包み込み、さらに距離を詰めてくる。体温低いなと思ったけど、両手で握られると本当に冷たいな。
真夏の気持ちよさはセレンといい勝負ではあるけど、人間としてはちょっと心配になる体温だな。
「はは、ありがとう。美人にそう手放しで褒められると、嬉しくなっちゃうな」
「まあ。あんなに綺麗どころを揃えても、純粋なままだなんて。本当に稀有な方なのですね」
「上に登り詰めても価値観のかわらないところも、兄さんのいいところだね」
「なんだかエルキネスの見方が変わってきますね。今までは自由気ままな雲のような人と思っていましたが、こんなに懐いているのを見ると不思議な感覚です」
「それで、クリスはエスとセットって話だけど、君の力はコレであってる?」
こっそりと俺と彼女との間に小さな水の玉を発生させる。『濁流操作』で大気の水分を集めたので『水魔法』と違って魔法発動の為のキーなども存在しない。こっそりと見せるにはうってつけだった。
「ええ、その通りです。そしてどうやったかは分かりませんが、コレでアレを張り倒してくれた時は胸がすく思いでした」
彼女が俺の水玉にそっと息を吹きかけると、水玉は一瞬で凍り付いてしまった。制御を外れた氷は俺の手の平へと落ちてくる。
そんな氷を、彼女は手に取り、俺に見えるように口に運び込み、飴玉を舐めるように舌で転がした。
うーん、エロい。
「ふふ。ご馳走様でした、ショウタ様」
そう言ってクリスは妖艶に微笑むと、一歩下がり深々とお辞儀をする。
「クリス、ちょっと待って」
「なにかしら?」
「クリスは俺に何か、攻略して欲しいダンジョンとかあって来たんじゃないの?」
「攻略して欲しいダンジョンですか……。もちろんあるにはありますが、ここでお伝えするのは無粋かと思いまして」
「いいよ、俺は気にしないから」
それが俺の興味を引くダンジョンなら、いつか攻略したいしな。
「実はわたくしのところにも、エルキネスと同様のダンジョンがあるのです。ただ、こちらは首都であるモスクワに出現したダンジョンですので、人が途切れる心配はほとんどないのです。ですから、今すぐに助け必要というほど困窮していないんですよ」
「なるほどね」
……てかアイツもそうだったし、やっぱり4属性って、全部スタンピード誘発ダンジョンからの産出品である可能性が増してきたな。
「そして私が今回参加したのは、単純にショウタ様の実力が気になっただけなんです。関係の構築は、上からはせっつかれていますが、私としてはあまり乗り気ではありませんでした」
「……でした?」
「ええ。実際に会ってみて、ショウタ様に興味が湧きました。まずはお友達から始めませんか?」
「……まあ、その先については置いとくとして、友達なら大歓迎だよ」
改めてもう1度握手をして、クリスの挨拶は終了した。
続いて前に出てきたのは燃えるような赤い髪を持つ、スタイル抜群の勝気な感じのお姉さんだった。
「彼女はシャーロット。カナダ出身のSランク冒険者で、2つ名は『スターダスト』だね。弓使いではあるんだけど、近接戦もそつなくこなせるイメージかな」
「よろしく、アマチさん。気軽にシャル、もしくはシャロと呼んでほしい」
「ああ、よろしく。シャルも俺のことは好きに呼んでくれな」
シャルと握手を交わす。
うん、彼女の手は確かに女性のものではあるけれど、先程までのクリスのような、柔らかいひんやりハンドと違って、完全に戦士の手だな。今まで俺の周りにはいなかったタイプだ。
「紹介してもらった通り、あたしのメインウェポンは弓さ。アマチさんは弓も使うって話はエスから聞いているから、勝手に親近感を覚えてるんだよね。それでなんだけど、もしよかったら、あなたの弓を見せてもらうことはできないかな?」
「兄さん、彼女は生粋の武器オタクでね。特に弓には目がないんだ。見せてあげることはできるかい?」
「そういうことなら良いぞ」
俺は懐からクピドの黄金弓を取り出し、彼女に手渡した。
「おおっ! なんて美しさだ……!」
シャルだけでなく、他の3人の内2人も興味深そうに覗き込んでいる。まだ紹介されていない子達の片割れは、相変わらずワインを堪能しているが、もう1人の方はしばらく黄金弓を見つめたあと、改めて俺へと視線を移し、熱烈なまでに熱い視線を送ってきた。
いや、なんならこの会場に入った時から、彼女からは熱い目で見られていたような気さえする。だが、何でだ? 俺には特に思い当たる節が――。
……あっ、待てよ? どっちがどっちかは知らないが、残りの2人は間違いなく『聖印騎士』と『撃滅聖女』だよな? となると、彼女らから見た俺って、もしかしなくても後光が差してるんじゃ……。
そりゃ、熱い目で見られるわ。
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