ガチャ638回目:出遅れ組と新規組
抱きしめ続けていたサクヤさんを放すと、彼女はとても寂しそうな顔をした。
「あら、アマチさん。もう終わりなの?」
「これ以上は俺の理性があれなので、また今度にしましょう」
「ふふ。楽しみに待っているわ」
まるで乙女のように微笑むサクヤさんを見て、くらっとしてしまう。スキルなんてなくても、この人は魅力的すぎる。
だが、なんとか耐えた俺は、話を戻すことにした。
「それでサクヤさん、ちょっと話が大幅にずれちゃいましたけど、そろそろ本題に入ってもいいですか?」
「例の件ね。この2人は知っているのね?」
「はい、その為のこの2人ですからね。といっても、イズミは数日前に知ったばかりですけど」
「がんばりますっ」
「……ところでアイラ、顔合わせするのは良いとして、この手の話は通話じゃダメだったのか?」
「この件は内密に進めたいところでしたから。通信機器を使ってのやり取りも安全とは言えませんでしたし」
「そういうものか。……2人は、『魅了』は平気そ?」
「大丈夫そうです☆」
「問題ありません。やはりこの手のスキルは、それなりのレベルがあれば、想い人のいる同性には効きづらいようですしね」
「そっか」
そんじゃあ、結婚式の前準備について、俺が聞いたところでだし、俺は先にお暇しようかな。そう思った矢先、サクヤさんに腕を掴まれた。
「アマチさん、実はもう1つお伝えしなければならないことがあります」
「なんです? ……あ、もしかして『炎』の奴のことですかね?」
「ふふ、あれは向こうの国の政府がどうしてもとしつこかったので、急遽参加することとなった飛び入りよ。いなくても構わないし、あの情報が拡散されれば今後やりやすくなるからお礼をしたいくらいよ」
あらま。
じゃあ何だろうか?
「今回11人という大人数と一気に結婚する関係上、アマチさんには今後、今まで以上に各国から嫁入り希望の女性が殺到するわ」
「やっぱりそうですか」
「今まで通りレベル100未満の一般枠含めた希望者は、私やミキ姉さんの方で弾くことができるのだけれど、問題はSランクの冒険者ね。以前アマチさんにお伝えしたように、アメリカ以外の希望者は出遅れこそしたものの、まだ希望し続けている状態よ」
そういえばそんなのがいたなぁ。
完全に忘れてた。
「実は、今日のパーティー会場にも来ているの。その様子だと、まだ挨拶はしていないみたいね」
「気付かなかった……」
「ユキネちゃんとタカネちゃんからの情報では、アマチさんが『炎』使いの彼を圧倒した事で、機嫌を損ねないよう様子見をしていたようね」
「それで出遅れたと……。それを聞いた以上、戻ったあと無視するのも悪いし、こっちから声をかけてみますね。ちなみに、どこの誰がきてるんです?」
「以前伝えたバチカンの『聖印騎士』とフランスの『撃滅聖女』はそのまま継続して参加表明を出しているわ。あとは、ロシアからは『幻凍姫』。カナダからは『スターダスト』も参加しているわね」
「1人目と2人目はどう言うタイプか名前から想像しやすいですけど、新しい2人は異名からではどういうタイプか想像つかないですね」
「そうねぇ。簡単に言えば、『幻凍姫』は恐らく『水』使いよ。一部の国では、『風』使いの彼や、『炎』のアレとセットで扱っている話を何度か聞いた事があるから、ほぼ間違いないと思うわ。そして『スターダスト』の方は、特殊な武器を使う弓使いね」
「おお」
じゃあ少なくとも1人はエスの知り合いか。『炎』みたいな厄介者じゃないことを祈るばかりだが、サクヤさんが正式な形で通しているのなら、その辺はまともそうな気がするな。
「分かりました。それじゃ、挨拶に行ってきます。サクヤさん、また」
「ええ、また」
手を振ると、サクヤさんも手を振って返してくれる。ああもう、この人が可愛すぎてつらいんだが。
少し後ろ髪を引かれるが、なんとか振り切り俺は部屋を出るのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいまー」
「おかえりー」
「おかえりなさいっ」
「おかえりなさいですわー」
会場に戻ると、アキとマキとアヤネが出迎えてくれたので、順番にハグする。
「んー? ショウタ君、アイラさんとイズミちゃんはー?」
「ああ、今後の展望について
「「「ふーん……?」」」
3人が訝しげな目で見てくる。ヤバい、バレたか?
「ショウタ君、サクヤさんと何かあったでしょ」
「すっごく惚気を感じます……!」
「むむ。旦那様は、お母様に浮気ですの?」
「うっ……」
そっちかー! しまった、つい義母さん呼びではなく、サクヤさんと呼んでしまった。もうこうなっては遅いし、開き直るしかないが、こんな人の目がある場所でベラベラ喋る内容でもないんだよな。
「まあ端的に言うと、レベル補正のおかげで何も邪魔するものがなくなった結果、あの人は信頼に足る人であることが明確にわかったんだ」
「ふーん? お互いに信頼しあったんだ。へー?」
「お2人を置いてくるくらいですもんね? 妬いてしまいます」
「浮気ですわー……」
む……。言い方がまずかったか?
でも嘘じゃないしな……。
「……まあいいわ。補正がなくてもサクヤさんが素敵な人なのは分かりきってたし」
「そうだね。ショウタさんが惹かれるのも、無理はないよね」
「お母様に取られたくないですわ……」
「取られたりしないから安心しろ」
とりあえずダメージが一番大きそうなアヤネを抱きしめ、落ち着かせる。そうしているとしばらくは彼女達は皆あからさまに拗ねていたが、何度か言葉を交えることで渋々と受け入れてくれた。
あとでフォローしとかないとな。サクヤさんの秘密もセットで話せば、多分ちゃんと納得してくれるはずだから。
「ところで、他の皆は?」
「カスミちゃん達は、高ランクの冒険者達に囲まれているみたいですが、いびられたりはしていないみたいです」
「ミスティはたくさん食べたら眠くなったと言って、向こうのソファーで眠ってますわー」
見れば、ミスティのそばにはシルヴィが控えてくれているみたいだ。ミスティの行動原理を把握しているシルヴィにしてみれば、彼女の行動とその結果がどうなるかなど百も承知だったのだろう。
「エス君は知り合いがいたとかで、向こうで盛り上がってるかな」
「お、エスの知り合いとなれば……」
エスの姿を探せば、そこには複数の女性がいた。側から見ればハーレムだが、あれは戦友に近い関係だろう。あそこにはそんな甘ったるい空気は一ミリたりとも混じっていなかった。
「ちょっとエスのところ行ってくるな。多分あれ、俺目当ての国外Sランクだから」
「いってらっしゃーい」
「ファイトですわ!」
「増やす時は相談してくださいね?」
「分かってるって」
さーて、あそこにいるのは、どんな人達かなっと。
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