ガチャ634回目:国内Sランク
会場に戻った俺は、パーティーの参加者達から賞賛されていた。やっぱりあいつ、俺以外にもあんな態度だったらしく、皆鬱憤が溜まっていたらしい。だけど悲しいことに、この世界は弱肉強食であり、冒険者の格が上がれば上がるほどそれは顕著になっていく。
奴もゴミみたいな性格をしているが、実力者であることに変わりはないから、誰も文句は言い出せなかったんだろう。強者に屈して飲み込むことしかできなかった彼らの行動を、責めることはできない。
なぜなら、アイツと交渉するための武器が、言葉を用いた誠実性の主張や倫理やモラルといったものではなく、人を殺せる凶器を用いた暴力でしかないんだから。天秤にかけなければならないのは、プライドや心などではなく、命そのものなのだ。そう簡単に手札をベッドするわけにもいくまい。
「はははっ。あの結界をどうやったかまではわかんねーけど、あいつを蹴飛ばした時はスッキリしたぜ!」
名前も知らないガタイの良いおっちゃんが、笑いながら俺の背中をバシバシと叩いた。
「はは、どうも」
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺は
「アマチショウタです。よろしくお願いします」
タツノリさんと友好的な握手をする。聞けば、彼の戦場はもっぱら『上級ダンジョン』であり、そしてなんと俺が散々お世話になっているリュウさんの息子さんなのだとか。アキやマキとも、その関係から多少なりとも縁があるらしい。
ちなみに彼には、何人もの奥さんがいるらしく、うちの彼女達の人数を見てそれをきっかけに一瞬で打ち解けてしまった。彼女達を紹介し、彼の奥さんも紹介してもらう。ここに連れてきているのはほんの一部だけみたいだけど、それでも皆綺麗どころで、強さもそれなりだった。
オーラから感じるレベルは……最低200はありそうかな?
「なあ後輩。1人を除いてここにいる子達が全員、お前さんの嫁ってことでいいのか?」
「そうですね」
「っとなると……11人だよな!? すげーが、色々と大丈夫か? 先輩として言わせてもらうが、あんまり多くなると何かと大変だろ?」
それはまあ、夜であったりとか仲の良さとか、そういう話なんだろうけど……。皆その辺俺に負担がかからないよう自主的にやってくれるから、実のところ負担なんてそんなになかったりする。
「そっちに関しては、今の所なんとかなってますね。11人同時は流石に時間が足りないですけど、5人と6人に分ければまあなんとか。全員満足させられてると思いますよ」
「おお。若いってすげーんだな! まあ俺も負けてられんがな!」
下世話な話で盛り上がっていると、うちの子達は大半が顔を赤らめているのに、タツノリさんの女性陣は慣れたものであんまり気にしていなさそうだった。まあ俺も気にするなとは思うが、恥じらいがある方が好きなのでそのままの皆でいてほしくはあるな。
「そんじゃ、俺ばっか話しててもあれだし、俺の知ってる国内冒険者達を紹介してやるよ」
「はい、お願いします」
そうしてタツノリさんに連れられるまま、パーティーに参加していた上位冒険者達に挨拶をして回った。その中には以前パーティーに参加していたチームもいたが、そのほとんどが初めて見る人たちばかりだった。それにしても、第一から第四のそれぞれから1チームずつSランクが来てるなんてな。
特に第二エリアのSランク、
「若人よ、お主の活躍には期待しておるぞ。助けが必要とあらばいつでも呼ぶと良い。と言っても、あまりあの魑魅魍魎どもから目を逸らすとすぐ反乱を起こすから、長期間は難しいが」
「あ、どうも。よろしくお願いします」
キョウシロウさんは本物の武士って感じの風格を纏った人で、この人の戦場は京都にある『妖怪ダンジョン』らしい。出現当初から彼率いるチームが妖怪達をバッタバッタと刀の錆にしているおかげで、かのダンジョンは冒険者人気が圧倒的に少ないにも関わらず、一度もスタンピードの兆候がないんだとか。
彼らだけでスタンピードの抑止ができてるとか、半端じゃないな。まるで一昔前の『アンラッキーホール』みたいだな。あれとは難易度が比較にならんが。
「おいらは第三エリア担当の、
「私は第四エリア担当の特選魔攻隊隊長、
「お2人とも、よろしくお願いします」
「それにしてもおまえさん、本当に強いんだなぁ。アイツ相手にまるで怯まずに、正面から勝っちまうなんて」
「全くです。私は立場上、あまり他国のことにはとやかく言えませんが。英雄殿が彼を蹴り上げた瞬間、思わずガッツポーズをしてしまいました」
ほんとあいつ、嫌われ者だったんだな。自分の行動を省みなさそうだし、今後も嫌われ続けそうだが。
んで、第三エリア担当のケイジさんは、見た目はまんまお相撲さんのような感じで、縦にも横にも大きかった。そして当然その肉は全て贅肉ではなく筋肉の鎧であり、レベルアップによる最適化でもその体型が維持された稀有な例だ。彼が盾役であることを思えば、その体型は安心感の塊であり、彼が前にいてくれるだけで後ろは心置きなく戦えるだろうな。
そんな彼のホームは、東北にあるという『古戦場ダンジョン』らしい。戦士系モンスターが山となって攻勢を仕掛けてくるようで、戦争を擬似体験できるとかなんとか。なんかすっごい楽しそうだし、いつか行ってみたいところだ。
そんで、4人のSランクの中で、紅一点であるフウカさんは、所属名から察せられるように自衛隊出身で、最初のダンジョン出現当初から潜り続けてるんだとか。そのせいか、見た目は10年前からまるで変わってないらしい。レベルの上昇は見た目を良くする以外に、良くなった現状を維持する力もある。ダンジョン出現当時は眉唾扱いだったが、彼女を含めた複数の生き証人のおかげで、冒険者を志す女性が増えたとかなんとか。その中で過酷な冒険を継続できるほどの胆力がある人は、ほんの一握りだろうけど。
そんな彼女が担当するのは、鹿児島にある『桜島ダンジョン』らしい。一層しかない珍しいタイプのダンジョンのようだが、とんでもなく広いらしく、異界となった桜島がモチーフらしい。ちなみに、ちゃんと噴火もするんだとか。
なんとも怖いダンジョンだ。
そうして挨拶兼情報収集をしていると、周囲がざわつくのを感じた。どうやら、本命が登場したらしい。
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★タツノリは3巻からの逆輸入キャラです!
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