ガチャ630回目:パーティー会場入り

 宝条院家の屋敷に到着した俺達は、敷かれたレッドカーペットの上を歩いていく。こういう時、隣を歩かせるのは誰が適任なのかで悩ましかったが、本質で考えれば簡単なことだった。まず、冒険者のランクで見ればシルヴィを除く全員がSランクであるが、それはあくまで『チーム』として見ればの話である。

 逆に『個人』でSランク足り得るのは、俺のチームでは俺だけであり、同様にソロでSランクとして活躍できているエスとミスティの2人だけが、肩を並べられるのだった。なので両隣は自然とサンダース兄妹となり、他の面々はその背後に並ぶ。

 ちなみにカスミのチームは、全員の力を持ってして、初めてSランクとして認められる結果を納められたので、個人での資質はあくまでもAからA+といったところだろう。

 レベルだけ見れば一般的なAやA+を凌駕するとしても、まだ彼女達がそのレベルに達したのは最近のことだ。俺と同様に力を扱いきれていない部分が大きいので、しばらくこの評価は揺るがないだろうな。


「アマチ様、ようこそいらっしゃいました」


 玄関口にいたボーイに招待状を手渡し、中へと招き入れてもらう。入場と同時に、会場全域から様々な思惑が込められた視線が集まった。こうなるのは覚悟していたので驚きはなかったが……敵意も混じってるな? ここに来ているということは基本的にサクヤお義母さんのお目通が済んでる対象しかいないはずだが……。

 一応警戒と挨拶がわりに、俺も会場入りしてる面々を一瞥してみるか。


「……ふむ」


 中にいる顔ぶれは以前参加した時と違って、メンバーが異なるか……? いや、前回いた参加者はもれなくいるが、知らない人間が増えているだけか。その中でも、明らかに発するオーラが別格級の存在がちらほらといる。エスやミスティほどのレベルはほんの一握りだが、大半はうちの彼女達かそれ以下の輝きだな。

 まあ、それでも十分強いんだが。

 前回はいなかったことから、国内の高位ランクの冒険者だろうか?


「ショウタさん、挨拶しに行くのと、挨拶されるの、どちらがいいですか?」

「この会場で一番偉いのはサクヤさんだけど、次点はまず間違いなくショウタ君よ。ふんぞりかえってても誰も文句は言えないわ」

「あー……。それはキャラじゃないし、俺から挨拶に行こうかな」

「んふふ、お金持ちになってもどんなに偉くなっても、ショウタ君のそういう変わらないところ、好きよ」


 皆がうんうんと頷いた。


「はは、ありがと」

「ではショウタさん、まずはお母さん達のところに行きましょうか」

「ああ」


 そうして俺達は支部長達の集まる席へと向かった。そういや前回も、真っ先に支部長達のテーブルに向かった気がするなぁ。


「みなさんお久しぶりです」


 支部長達に挨拶をすると、真っ先にやってきたのは『初心者ダンジョン』の支部長こと、ミキ義母さんだった。


「こんにちは、アマチ君。あなた達も元気そうでなによりだわ」

「こんにちはミキ義母さん。プレゼントは気に入ってもらえました?」

「ええ、とっても。今度写真を送ればいいのかしら?」

「え!? あはは、お任せします」


 まあ見たいか見たくないかで言えば、めっちゃ見たいけども。冷ややかな視線が背後から飛んできているが、気にしないでおこう。

 続いて声をかけてきたのは、『上級ダンジョン』の支部長こと、リュウさんだった。


「少年、久しぶりじゃのう!」

「リュウさんもお久しぶりです。壮健そうで何よりです」

「うむ。それにしてもお主、少し見ぬ間にとんでもなく成長したのう。オーラの感覚からして、500は固いと見た」


 リュウさんはニヤリとして見せた。

 結構鋭いな。まあ大多数の視線が集まる中詳細なレベルを語るのは気がひけるが、曖昧な感じなら問題はないだろう。


「あー、レベルですか。一応600台ではありますね」

「あっさりと吐きおって。良いのか、そんなホイホイと開示して」

「まあこのくらいなら掲示板に流れても問題ないですよ」


 これは、支部長達というよりも、背後にいる冒険者席の方に向けての言葉だった。


「ふむ。お主がそう言うのであれば構わんか。しかし、その域ならあの新種との戦いでも、悠々と戦えていたのも納得というものよ」

「ですかねー?」

「はははっ! お主のおらん間、この国は平和じゃったぞー。それで、次はどこを攻略するんじゃ?」

「やっぱりそこが気になります? いやー、でも会見で答えた通り、本当に未定なんですよね。ただ、難易度の低いダンジョンは後回しにするのもありかなって思ってます」


 低レベルダンジョンを制覇すれば、それだけ管理者レベルは上げられるし、『楔システム』の結界エリアも爆速で拡張できるだろうけど、ダンジョン攻略が作業になるのはいただけないんだよな。

 なんならそういうのは、うちの彼女達が産休になった時に、エンキ達5人を連れてほぼソロで挑んでクリアしちゃうっていうのも手だ。あとは――。


「む、それは残念な知らせじゃ。となると今後優先的に攻略されそうなのは、第一エリアだとうちと機械と四季くらいかのう」


 リュウさんのその言葉に、呼ばれなかったダンジョンの支部長達が、少し落ち込んだように見える。皆フィーバータイムが欲しかったんだな。


「いえ、その解釈は少し異なりますね。難易度の低いところは攻略しないってだけです」

「む、どう言うことじゃ?」

「そのための第二パーティですから」


 カスミ達を手招きして6人を並ばせる。今日は、支部長達に彼女達のことを紹介するのも予定の1つだったのだ。


「おお、第二エリアのダンジョンを制覇した子達じゃな!」

「は、初めまして!」

「お初にお目にかかります」

「よろしくお願いします!」


 各々が元気よく挨拶したのが功を奏したのか、支部長達の心はバッチリと掴んだようだ。高齢の支部長からは孫のように可愛がられ、若めの支部長からは妹のように微笑ましく見られている。


「ふむ、つまり今後は、少年の代わりをこの子達が担当するということじゃな?」

「まあ、難易度の低いところかつ、『楔システム』で連結可能なところを優先する感じですかね。なので、第一と第二で行けるところからとなりますが、以前のようにこの子達の興味を持ってもらうために、ご褒美を提示するのを止めたりはしませんよ」

『おお!』


 そうして支部長達はこぞってカスミ達にアピールをするのだった。といっても彼女達が何を望むのか確認するところからって感じだろうけど。

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