ガチャ628回目:猫祭

「アイラ、手伝って」

「お任せを」


 意図をすぐに察知したアイラが、俺に合わせて動いてくれる。俺が宝箱に触れ『変身具』を選択しては次の宝箱へと移り、アイラは開封と中身の回収を高速で行う。

 そうして開けること15箱。机には積み重なるように置かれた『装身具』が異彩を放っていた。


『わぁ……!』

「皆、着て来ていいぞ。アイラも着て見せて」

「畏まりました」


 そうしてその場で着替えようとし始めたミスティは他の面々によって取り押さえられ、リビングから出ていく。その後、なぜか全員が俺の部屋に入っていくのを気配で感じた。何故そこで俺の部屋が選ばれるのだろうかと自問自答していると、虎と豹の中間みたいな着ぐるみを着込んだ彼女達が現れた。


「この状態でも普通に可愛いんだが」


 ちびっこ組こと、アヤネとレンカは撫でまわしたいくらい可愛いし、スタイルの暴力ことアイラとイリーナは普通にエロイ。でも『変身具』としての本番はここからだ。


『トランスフォーム!』


 各々が好きなポーズを取って一斉に変身すると、そこには想像通りの猫娘から始まり、虎模様の肌を持つ者や、女豹と呼べそうなしなやかな肢体を持ったメンバーなど様々だった。


「おー、ランダム要素があるのか? それとも……」


 俺は手元に余っていた『変身具』を視る事にした。


 名称:ネコ科の着ぐるみ

 品格:≪遺産≫レガシー

 種別:変身具

 説明:魔力を500消費する事で、着用者が思い浮かべたネコ科の種族に最大3時間変更する魔道具。

 タイプ:ネコ族全般


「ほぉ。割と自由が利くんだな。珍しい」


 エスが以前話してくれた虎人間に変身する『変身具』は、言わばこれの下位互換だったといったところか。

 ちびっこ組は見事に猫娘だったのは、2人にとって猫系への変身といったらこの姿だったんだろう。試しにモフらせてもらったが、ちゃんと感度はあるみたいで、耳はピコピコ動くし、肉球は柔らかいし、尻尾は弱点らしく甘い声をあげた。

 そしてアイラとイリーナは、完全に女豹の姿な辺り、前情報無しに変身するところに当人の本性が垣間見える気がするな。他の子達も、可愛がられたくて仕方ない子は子猫っぽくなるし、捕食者の側は女豹となる訳だ。そしてどちらでもない子は、大体が虎寄りになるのかな?

 ミスティは普段のそれからして、予想通りというか、完全に紫色の猫だもんな。

 まあこの中で『真鑑定』持ちのマキとアイラは着替える前に事前に視ているかもしれないが、俺のために黙ってくれてるはずだ。だからこの結果に、作為的な何かは発生していないと思いたい。

 しっかし、ここまでネコ科になりきれる状態なら、多分だけどマタタビとか効きそうな気がするな。ふにゃふにゃになった彼女達が見てみたいし、アイラに用意させるか。そしてアイラには理解させた上で使わせよう。


「にゃ。旦那様にゃ~」

「ん。ショウタ、撫でてにゃ」


 アヤネとミスティが喉を鳴らしながらすり寄って来るので、全力で甘やかしていると、他の子達からもにゃーにゃー聞こえてきた。そこからはあっちを撫で、こっちを撫で、気まぐれながらも甘えん坊な猫達に振り回されるのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そんな猫達から解放されたのはきっかり3時間後。時間が来て効果が切れるその時まで、彼女達は猫そのものになりきっていたらしく元の着ぐるみ姿に戻った彼女達は、夢から醒めたかのような表情を浮かべていた。普段から甘えん坊な子達はまだ子猫モードが抜けきっていないのか猫っぽく伸びをしているが、真面目な子達は恥ずかしがっているようだ。

 中々楽しかったが、11人全員が猫になるのは忙しさが目立つから、次からは小分けにしてほしくもあるな。


「さて、ご主人様」

「ん?」


 何事も無かったかのように振舞ってるが、アイラもさっきまでは――。


「ご主人様?」

「ハイ」

「おほん。では話を戻しましょう」

「……何の話だっけ?」


 中断時間が長すぎて覚えてないんだが。


「宝箱です。残り3箱ありますがいかがしますか?」

「あ~……」

「というよりお兄様、一気に15箱開けたけど、どうして15箱なの?」

「ん? いや、深くは考えてなかったが……。まずお前達で11個だろ。んで、シルヴィに1個、せっかくだから義母さん達に1個ずつ。あと1個は……?」

「やはりお兄様は、私のお母様に?」


 イリーナが嬉しそうに言ってのけた。

 それを聞いたカスミ達はニマニマしているし、アキやマキ達はジト目で見てくる。この場で唯一、イリーナの母を知らないミスティは、興味が無いというよりも猫モードの時に眠りこけたまま、起きてくる気配がなかった。


「現状関係値的に言えばそうなるのかもしれんが、一応余っただけであって狙ったわけではないからな?」

「はい、存じておりますわ」

「まあ他に送る先もないし、それはイリーナが責任持って送っといて。んで、残り3つはせっかくだからステータス成長アイテムにするか。元々はそれの数値が見たかったんだよな」

「そうだよー☆」

「んじゃ、3つとも一気に開けるか」


 ポチポチと宝箱の選択肢を選んで行き、開封して行く。

 そして机の上に置かれた成長アイテムは、黄金の実から採れる成長アイテムより、一回り大きく見えた。


『全能力上昇+10』


「ほっ!?」


 普通ではありえない成長アイテムが出て来たぞ!?

 ……いや、待て。これって、俺がガチャから出す『ステータス6種上昇』と同じか?


「うわ、すご……」

「流石お兄ちゃん!!」

「単一では+10だけど、全体で見れば+60か。なら、賭けはカスミちゃんの勝ちね」

「黄金の実で爆上がりするようなアイテムを見るのは見慣れてはいるけど、宝箱からこのレベルのアイテムが出る辺り、やっぱりショウタ君なのよねー」

「旦那様、全能力というのは、『運』も入っていますの?」

「え? いや、そんな事はないと思うけどな。『運』がこれで伸びてたら苦労はしないだろうし」


 一応見てみるか


 名称:ステータスブースト(全能力上昇+10)

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:消費アイテム

 説明:腕力・器用・頑丈・俊敏・魔力・知力、これら6種のステータスの基礎値を永久に+10する。

 ★増強値が基礎ステータスを超過してしまうと、その生物の魂が損壊する。


「やっぱり『運』なしの6種のみか」

「残念ですわー」


 にしても、魂の損壊ね……。この★データも、エスから話を聞くまでは見れなかった情報だし、やっぱりこれも、知る事で初めて視れるようになる情報だよな。

 なかなかいやらしい話だ。そして魂という目に見えない物が傷つく以上、身体をどれだけ治療しようと生き返る事はないということか。


「お兄ちゃん、それでこのアイテムなんだけど」

「ああ、誰か使うか?」

「資金にしたいから、売っても良い?」

「ああ、良いぞ。アイラ、手配宜しく」

「畏まりました」


 そうしてスキルや宝箱のチェックが終わった以上、あとはもう自由時間だ。カスミ達は割り振られた部屋へと散らばり、届いた荷物を片付けに行く。

 アキやマキ達は歓迎会を開くためか、キッチンへと移動して行った。

 イズミはアイラについていき、アイテムの捌き方とか色々と教えてもらうようだな。


「あ、それからご主人様。奥様との会合の件ですが」

「日程決まった?」

「はい。明後日、宝条院家主催のパーティーが開かれる事となりました。全員で参加して良いそうなので、準備して参りましょう」

「おっけー」


 宝条院家でのパーティーか。前回の歓迎会以来だから、かれこれ3ヵ月ぶりかな。

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