ガチャ623回目:新種の報告

 煙が晴れると、そこには無数のアイテムと宝箱が落ちてあった。ここから進化されたら面倒なことになっていただろうからな。終わってくれて少しホッとしたが、ちょっと残念な気持ちもあった。


「お兄ちゃん、お疲れさまー!」

「流石兄上。見事な闘いぶりでした」

「お兄さんカッコよかったよー!」

「ああ、お兄様……! わたくし、ますますお慕い致しますわ」

「お兄様、先ほどの戦いのデータ、参考にしたいのでいただいてもよろしいでしょうか」

「いいよ。あとでイズミから貰っておきな」

「感謝します、お兄様っ」

「お兄様、経験値おいしかったよー☆」

「あれ? そういえば忘れてたけど、イズミ達に渡したアクセサリーじゃ、俺との経験値共有はできないんじゃなかったか?」

「そうよー。だから、トドメの瞬間に一撃だけ入れさせてもらったわ。あたしが経験値をもらう条件さえ満たせれば、他の皆も貰えるんだもの☆」


 そう言ってイズミがドヤった。

 死の間際に何かが煙の中に入って行ったと思ったが、あれはイズミが放った矢だったのか。なるほどなあ。


「すまんな。完全に皆への配分を忘れてた」

「んふー。お兄様の事だから、夢中になって忘れてると思ったわ」


 正解すぎて何も言い返せんな。


「アクセサリー、改良するか?」

「うーん……。まだ必要ないかなって思うの」

「そっか。必要になったら言ってくれな」

「はーい☆」

「よし。そんじゃ、用事も終わったし引き上げようか。皆、付き合ってくれてありがとうな」


 そうして俺達は、終始イチャ付きながらダンジョンを脱出するのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「おかえりなさいませ、ご主人様」


 協会の正面ホールでは、アイラが出迎えてくれた。


「ただいまー。アイラだけか?」

「はい。奥方様達は家で首を長くして帰りをお待ちです。私は別件もあって近くにいたので、ついでにお迎えにあがりました」


 ほんと情報が早いな。

 俺、一言も『初心者ダンジョン』に寄るなんて言ってないのに。


「そうですね。ここに来ることに確信は得られていませんでしたが、掲示板が賑わった事を察知しましたので」

「どこにでも目があるんだな」

「恐縮です」

「ミキ義母さんに用事があるんだけど、今いる?」

「はい、いらっしゃいますよー。案内しますね」


 しれっとアイラの隣にいたハナさんがさらりと答えてくれる。そんじゃ、新レアモンスターの報告もあるし、会いに行こうかな。

 そうして馴染みの通路を通って支部長室に入っていくと、そこでは和かな様子のミキ義母さんこと、『初心者ダンジョン』支部長ミキさんが座って待っていた。

 この様子を見るに、例の計画を聞いて喜びを隠しきれてない感じかな。


「アマチ君、いらっしゃい」

「お久しぶりです」

「「「「「「お久しぶりです!」」」」」」

「貴女達も、元気そうで何よりだわ」

「積もる話もありますけど、まずはここで追加のレアモンスターが出現したので、情報共有していいですかね」

「ええ、お願いするわ。なんでも、『初心者ダンジョン』内では、ダンジョンボスを除けば史上最強クラスの相手が出現したとか」

「耳が早いですね。イズミー」

「はーい。こちらが相手の資料と、その映像データです☆」

「頂くわ」


 そうしてゴーレム地帯を火山地帯へと塗り替える映像から始まり、通常出現するラヴァゴーレム。そこから正統進化した『ハードラヴァゴーレム』と『プロミネンスラヴァゴーレム』。変質させた『ブラックナイトゴーレム』まで。

 映像に新種が映る度に義母さんは頭を抱え、最後の黒騎士に至っては全てを諦めたような顔をしていた。


「いくらなんでも強すぎるわ……。アマチ君、映像からでは分からなかったけど、何か特別なことはしなかった?」

「そうですね、多分この溶岩地帯の環境がそうさせてるんだと思います。この溶岩の温度がもう少し低ければ、ここまで強くなることはないかと」

「どういうことかしら?」

「この溶岩地帯、俺がで生み出したんですよ。各種ブーストスキルに、ぶっ飛んだ『知力』。それから『炎魔法LvMAX』で使える最強魔法。これらの要素が交わった結果、とんでもない環境が爆誕したわけですね」

「その環境に釣られて、出てくるレアモンスターの強さも増したと考えているのね?」

「じゃないと名前の後ろに『強化型』なんて付かないと思いますし」

「その情報データは『真理の眼』持ちでないと視れないようだけど、貴方がそういうなら信じられるわね」

「ありがとうございます」

「困った事にダンジョン内での環境書き換えなんて真似、今まで貴方しか実行できた人がいないから、あなたの情報を裏付けられる証拠や情報が全然ないのよ。けど、アマチ君が強化型の出現に対してそう感じているのなら、きっとそれもその通りなんでしょうね」


 信頼されてるなぁ、俺。

 それにしても……うん。義母さんはいつも通りな感じだし、大丈夫そうだな。


「度し難いですね」

「おいっ!?」


 アイラの心読みはいつもの事だが、時と場合を考えてくれ! 義母さんの視線が俺へと向くハメになったじゃないか!


「アマチ君? 何の話かしら?」

「いや、その……」

「ご主人様のレベルは今や人類最高峰といっても過言ではない600台。とはいえ、ミキ様がそこらの女性と同じようにコロっと堕ちてもらっては困るというもの。残念でしたね、ご主人様」

「あら、そういうこと? ふーん?」


 ミキ義母さんがニマニマとしながら見つめてくる。この視線は本当にアキそっくりだな。


「おいこらアイラ、誤解を招く言い方をするな」

「「「じーっ」」」


 ああもう、横や後ろからもめっちゃ見られてるし。針のむしろだ。


「お兄様、私達のことも忘れないでくださいね?」

「流石兄上、見境無しですね」

「お兄様、わたくしのお母様も新居にお呼びしましょうか? お兄様が望むのであれば親娘でご奉仕させていただきます」


 イリーナのお母さんも、娘に負けず劣らずのプロポーションだから、それはとても魅力的に聞こえるが、どう考えても悪魔の囁きだろう。それに頷いてしまったら色々と終わる気がする。


「あーもう。この話は終わり! 帰るよ!」

「あら、口説いて行かないのかしら?」

「……口説かれたいんですか?」

「アマチ君はどうだと思う?」

「……じゃあ、そういった関係になるということは、俺の秘密を全て知る権利と、知らなければならない権利が同時に発生します。つまりは、それを知る覚悟があるということで良いんですね?」

「えっ!?」


 突然の反撃に、流石のミキ義母さんも驚いたようだ。ミキ義母さんは俺の言葉を反芻するためかしばらく推し黙り、ちょっと真剣みの増した表情で答えた。


「……悪いけど、私にはまだ、それを知る覚悟はないわね」

「はは、そうですか。知りたくなったらいつでも言ってくださいね」


 冗談の中に何割かの本気が見えたからこう返してみたんだが、今回の牽制は俺の勝ちかな? いやでも、知りたいって言われたらそれはそれでアレだったけど。アイラもニマニマしてるし。

 ああ、それにしても、ミキ義母さんですらこんなんじゃ、サクヤお義母さんの時はどうなることやら……。

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