ガチャ622回目:黒騎士君臨
変化を待つこと10分。ようやくそれは現れた。
その姿は先ほどの『プロミネンスラヴァゴーレム』から炎の要素を取り除くどころか、完全に別物へと変貌していた。黒曜の全身鎧を身に纏い、5メートルの体躯に、刃渡3メートル以上の大剣に、背丈に見合った大楯を持ったその出で立ちは、まるでアニメに出てくる巨大ロボットを彷彿とさせる。
こういうの、エンキが見たらテンション上がりそうだな。てか俺もこういうの好きだしカッコいいと思う。エンキに真似させようかな。
そんな和やかな気持ちにさせられるが、油断はしていない。こいつから感じる波動は、先ほどのレアⅡ以上に強力だ。
『ギギギ……』
「『真鑑定』『真理の眼』」
*****
名前:ブラックナイトゴーレム(変異種・強化型・変質)
レベル:200
腕力:2800
器用:1800
頑丈:2800
俊敏:1200
魔力:2000
知力:100
運:なし
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武技スキル:メテオクラッシュ、地殻噴出剣、シールドスマッシュ
装備:ブラックナイトの黒曜剣、ブラックナイトの大楯
ドロップ:ゴーレムコアⅥ、漆黒のマント、漆黒玉鋼、ランダムボックス
魔煌石:中
*****
属性的能力を失った分、物理特化になった感じか? それに加えて高レベルな『
「ここじゃ狭い。全員下がれ! 外周に持ってく!」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
背後に広がるマグマの海にカラーウォークを設置する。
彼女達が逃げおおせるまでの間、殿を務めさせてもらおう。
『ギギッ!』
奴はこちらへと意識をシフトしたように見えたが、すぐに剣を逆手に構え、刃先を地面に向けた格好で、静止する。
「ん?」
なんのポーズだ?
まるで巨大な門の前に鎮座して、侵入者に睨みを利かせる石像のような立ち振る舞いに困惑する。そうしている間も、黒い甲冑の騎士は微動だにしない。
「お兄様、皆渡ったよー!☆」
『ギギ!』
イズミの声が聞こえると同時に奴は力を解き放ち、剣を地面に突き立てた。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!』
大地が鳴動し、地響きと共に地面の下から高エネルギーの何かが勢いよく競り上がってくるのを感じた。
「ッ!!」
危険を感知した俺はすぐさま跳躍し、奴から離れるように『神速』と『虚空歩』を駆使して直角に離脱する。次の瞬間、岩山の各所からマグマが吹き上がった。
噴き上がったマグマはそのまま黒騎士や岩山を飲み込むが、直上に向けた噴火だったからか、噴き上げられた岩石や黒煙は思ったよりも広がりを見せる事はなく、周囲に飛び散る事はなかったようだ。ここは外と違って気圧の変化も無ければ風が吹いたりとかもほぼしないからな。助かった。
溶岩のプールの外側へと着地した俺は、押し寄せる熱気に顔を顰めつつ、奴が姿を現すのを待つ。
『……ギギ』
「耐性は見えなかったが、やっぱ無傷か」
溶岩の中から現れた黒騎士は、何事もなかったかのようにこちらへと直進してくる。さっきのあの技は、武技スキルの『地殻噴出剣』だろう。そして剣を逆手に持っていたのは恐らく『力溜め』をしていたんだと思う。
所作が綺麗だったから、さっきはつい見惚れちゃったけど、次はもう撃たせないぞ。あんなの、元々溶岩に沈んでいた岩山地帯だったから被害はなかったけど、普通の草原エリアで撃たれたらたまったもんじゃないからな。
俺はマップを開いて周囲の状況を確認する。
「観客は……」
うん。黒騎士を見て、力量差はしっかり把握してるみたいだな。先程よりももっと遠くに離れてくれたか。
『ポ?』
『キュイ』
『プルン?』
「ああ。体格差はあれど、久々に小細工なしの戦士型モンスターだ。援護は不要だ」
「お兄ちゃん、頑張って!」
「ご武運を!」
「お兄様の戦い方、勉強させていただきます!」
「お兄さんやっちゃえー!」
「お兄様に神のご加護を」
「バッチリ撮ってあるから、カッコいいところ見せてね、お兄様☆」
「ああ、任せろ!」
黒騎士に向かって進み始めると、奴も今度こそ俺を敵と認識したのか、敵意をバチバチに放って来た。余計な横槍のない、純粋な近接戦だ。ダメージにも慣れておかないとだし、外装2種は封印したまま行こうかな。
「行くぞ、黒騎士!」
『ギギ!』
全力の斬り合いをしようじゃないか!
◇◇◇◇◇◇◇◇
『ガガガガガン!』
あれから何合打ち合っただろうか。
奴はあの大剣をまるで片手用の武器のように軽々と振い、連続攻撃を仕掛けてくる。にも関わらず全ての一撃が必殺の威力を秘めているってんだから、本当に容赦がない。そんな黒騎士の武器は、何も剣だけじゃない。『武技スキル』はまだ使ってきていないが、その頑丈な盾による制圧攻撃も面倒ではある。
けれど、盾はどう扱おうと結局は『面』での制圧攻撃でしかなく、縦横無尽に振るわれる剣の方がもっと厄介だった。
「おら!」
『ギギ!』
普通剣の軌道というものは、適度に力を抜いた状態でなければ、連続攻撃を仕掛けるのは不可能に近い。ゴーレムといえど人型だから、しっかりと関節はある。だというのに、奴は全力の振りかぶりの直後ですら、すぐに返しの刃を放ち、こちらの虚を突いて来る。それも1度の斬り合いでたまにしてくるのならまだ良い。
こいつはあろうことか、そんな攻撃を毎回使ってくるのだ。
その秘密を暴くべく、俺は複数のスキルを併用して剣の動きを目で追い続けた。
『ギギ、ギギ!』
「……! そういうことか。騎士のくせに、随分と器用な戦い方を仕掛けてくるじゃないか!」
『ギギギ!』
いい加減『予知』がなくとも目が慣れてきたころ、ようやくその動きの秘密に気付いた。奴はインパクトの瞬間までは、確かに一撃で決めるつもりであるように、致死の一撃を放ってきている。だが、通り過ぎた剣は、不自然な動きで失速し、即座に切り返してもう一度攻撃を仕掛けてきているのだ。
それもこれも、恐らく『重力操作』で剣の重さを変化させ、切り返しの瞬間は軽く。そしてインパクトの瞬間は重くしているのだろう。
普通に考えて脳が沸騰しそうな事をやってのけているのは、こいつがゴーレムだからかな? 生物じゃないから疲労とは無縁って事か。
俺もそのスキルがあればと思ったが、いくら『思考加速』や『並列処理』があれど、同じことをすれば脳への負担は計り知れない。せめて、インパクトの瞬間にだけ威力が増すように調整するくらいか。
ある程度満足したし、そろそろトドメを刺すか。
「そこだっ!」
『ギギッ!?』
俺は蛇腹剣の機能を解放し、相手の得物へと巻きつく。そして片腕を封じられたことで動きの鈍った黒騎士に、一気呵成に攻勢に転じる。
「『天罰の剣』『魔導の御手』!」
『ギッ!?』
2本の天罰に盾の相手をさせ、『魔導の御手』には蛇腹剣を使った綱引きを引き継ぐ。そしてガラ空きとなった胴体に、俺は弓を引いた。
「これで終わりだ。『雷鳴の矢』!!」
『ギギ……!!』
『スパァン!』
空気の破裂する音と共に、黒騎士のコアに大穴が開いた。空いたコアの穴からは大量の煙が吹き出し、黒騎士は倒れ伏した。
「……ん?」
黒騎士が吹き出す煙に向かって、何かが高速で通り抜けて行った。
【レベルアップ】
【レベルが655から657に上昇しました】
最後に妙なものが見えたが、嫌な予感はしないし、まあいいか。
「ふぅー……」
それにしても、なかなかの強敵だったな!
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