ガチャ620回目:天を貫く
彼女達の汗を拭いたり、逆に拭いてもらったりしながら時間を潰していると、次の相手が姿を現した。
見た目は先ほどの溶岩ゴーレムに近いが、その身を構成する岩は黒曜石のように黒い輝きを放っていた。そしてその熱気は、近くに流れる溶岩よりも熱い。奴が胸に抱えるゴーレムコアからは、エネルギーが暴れるかのような感覚を覚える。もはや、あのコアは炉心のようになってるんじゃないか?
『ボボボボボ!』
「『真鑑定』『真理の眼』」
*****
名前:プロミネンスラヴァゴーレム(変異種・強化型)
レベル:185
腕力:2000
器用:600
頑丈:2000
俊敏:400
魔力:9999
知力:2000
運:なし
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ゴーレムコアⅥ、灼熱のマント
魔石:極大
*****
「おお、コアⅥだ!」
『ポポ!』
『キュイキュイ!』
相変わらずこいつらは宝箱を落とす気配がないが、そんなことより注目すべきはコアⅥ。それ以外は割とどうでもいいまである。
「お、お兄ちゃん!? こいつちょっと強すぎない!?」
「『初心者ダンジョン』の第二層とはとても思えない領域のモンスターですね。そんな強敵をイレギュラーな方法で呼び出せるとは、流石です兄上」
「こんな強いの、裏ボスだって言われてもボク納得しちゃうよー」
「まあレベル的にはガドガダをちょっと強くした感じかな」
『ボボボボ!!』
呑気に雑談をしていると、奴が周囲の溶岩流からマグマを呼び寄せ、自身の身体に纏わり付かせた。恐らく、奴のスキルにあった『灼熱の鎧』だろう。
効果からして『炎の鎧』の上位互換か? だけど、周囲にマグマが無かったら効果が発揮されていたかは怪しいところだな。
「皆は下がっていてくれ。ここは俺がやる」
「お気を付けて!」
「お兄様、ふぁいとー☆」
「ご無事を祈っておりますわ」
皆が下がったのを気配で感じると、準備が終わったのか奴は俺に注意を向けた。
『ボボボォ!』
「『閃撃・剛Ⅲ』!!」
『ドガッ!!』
マグマを纏った拳に『閃撃』が激突し、そのまま拳をぶち抜く。そのまま相手の腕、肩を貫き片腕を吹き飛ばした。
『ボボォ!?』
たったの一撃で腕を吹き飛ばされた衝撃は大きかったらしい。奴はその衝撃にたたらを踏み、なんとか持ち堪えるも、すぐに次の行動に移せない様子だった。
「なんだ、もうギブアップか?」
『ボボボォ!!』
奴は怒ったかのように周囲のマグマと熱気を吸い寄せ、俺との間に灼熱の壁を出現させた。そのまま流れるように奴はプロミネンスフレアを発動。灼熱の太陽が壁を乗り越え、一直線に向かってくる。
「時間稼ぎに付き合う気はねえよ。グングニル!」
俺は正面から迫る太陽に向け、少し上へと意識しながらグングニルを投げた。
次の瞬間には、太陽は無惨にも食い破られ、道中にあった灼熱の壁も、敵の頭部も、まとめて大穴が開いた。奴はその衝撃に耐えきれず、岩壁まで吹き飛び崩れ落ちる。
『バキンッ!』
そしてガラスが割れるような音と共に、
ダンジョンの外はああなってるのか。
「……グングニル」
呼べば、グングニルは俺の手に中に現れた。恐らくあの壁を越えたことで強制停止が起こり、戻ってきてくれたのかもな。
『……』
「まだ生きてるのか」
頭部と腕を失ったゴーレムは、思うように動けないらしくジタバタともがいていた。このまま見ているのは悲しい気分になるので、さっさととどめを刺してやろう。
俺はグングニルを強く握り直し、今度は投げずに直接コアを貫いてやった。
【レベルアップ】
【レベルが654から655に上昇しました】
お、上がったか。特殊型のモンスターだから経験値が美味いのか、それともパンドラの余剰経験値が想定よりも多くあったのか。
どっちにしろ勿体無いことになりそうだな。だって、現時点であと最低でももう
俺は残心を解き、槍を地面に突き立て一息付く。
「ふぅ……」
やっぱ、すぐに戻ってきたとはいえ、グングニルの投擲は体力を使うな。でも2回目ということもあってか、真下じゃなくちゃんと正面上方に投げることができたな。パンドラ戦を経て、扱える力が増した証拠だろうか。
ただ、グングニルはまっすぐ飛んだように見えて、最後の方で若干失速して、高度が落ちてたっぽいけど。でもダンジョン壁にぶっ刺さった時の威力は、衰えを感じなかった。
この調子でちゃんと扱えるように訓練しまくらないとな。
「にしても、あっつい奴だったな」
思わず腕で汗を拭うと、その行動に触発されたのか、緊張の糸がほぐれたようにカスミ達が集まってきた。
「お兄ちゃん、すごいすごい!」
「とんでもない威力でした。それがし、いまだに震えが収まりませぬ」
「お疲れ様でした、お兄様。すぐに汗を拭きますね」
「お兄さん、この武器なあにー? ボク見たことないよ!」
「この槍からは、お兄様と同じくらい神聖な波動を感じますわ。やはりお兄様は、神の使徒では……?」
「はいはい、イリーナちゃん暴走しないの。お兄様が困っちゃうでしょ☆」
そう言いつつも、イズミは熱い視線を俺へと注いでいた。いや、イズミだけじゃないな。他の皆も、グングニルに目を奪われつつも、俺に対して熱い目線を送ってくる。
「俺、そんなにカッコよかった?」
「「「はいっ!」」」
「「「すっごく!!」」」
「そっか。嬉しいよ、ありがとな」
俺は順番に彼女達とハグをして、それから伝えるのを忘れていたグングニルについて教えるのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます