ガチャ618回目:変異種その2

「よーし、到着!」


 ここに来るまでにも、何人もの冒険者に挨拶されたりしたが、そのどれもが憧れやら羨望、畏怖から来るものだった。最初の2つはそれなりに受け慣れた視線の類ではあったが、畏怖についてはそんなに経験ないな。多分、レベルが上がり過ぎて『気配偽装』では誤魔化しきれてないオーラが、低レベルの人達を自動攻撃してるんだろう。


「お兄様、ここって……」

「動画で見せていただいた、ゴーレムの出現地点ですね」

「おう。アグニのコアがⅣ止まりでな。エンキ達と並んで戦うにはちょっと心配だから、Ⅴのコアを取りに来たんだ」

「ってことは、泥のゴーレムとかそういう奴が見れるのー?」

「地形変化による特殊な出現形態ね。そういう意味では、お兄様にいただいた魔法を活用する機会は無かったわね」

「まあ俺も、ダンジョンコアを経由せずに環境の書き換えなんて成功してるの、ここくらいだしな。実際問題、この機能が活用できる場面はそう多くは無いのかもしれないし、気に負うな」

「それでお兄ちゃん、今からここを水浸しにするの?」

「いや、今回はせっかくだから、アグニに頑張って貰おうかなって思ってさ」

『キュイ? キュイキュイ!』


 ここは元々、砂や土、岩のゴーレムが出る場所だ。そこに風属性の魔法は意味がないだろうと思ってそもそも試していないが、当時は炎属性の魔法は持っていなかったから『海魔法』で無理やり水に沈めるしか無かったわけだ。

 今はエンリルが『風』の力を手に入れたから、前回の時より上手く、風属性の力に侵食されたフィールドを生み出すことは可能かもしれない。けど、俺の頭では、常に嵐が巻き起こるステージくらいしかイメージできないんだよな。

 けどそんな風にただ破壊するだけじゃ、フィールドに嵐が定着するとはとても思えないし、そんな破壊されただけの環境下でゴーレムが生まれるというのも、また考えづらい。だから風属性のみのゴーレム地帯は前回同様無しで行こうと思う。


「エンリル、アグニ。まずは俺が要所要所に火種を撒いていくから、お前達はそれを広げてくれ」

『ポポ!』

『キュイ!』

「よし。それとイズミは――」

「動画でしょ。もう回しているわ☆」

「さすが。んじゃ……プロミネンスフレア!」


 『炎魔法』のレベル10魔法であり、魔力を3000消費する小さな太陽を複数出現させる。それをゴーレムの眠る砂地に放り込むと、ゴーレムコアのエネルギーと接触して爆発を起こした。その衝撃でいくつかのゴーレムが目を覚ますが、そいつらも同様に灼熱の業火に呑まれて爆ぜていく。

 続いて高温に晒された砂も溶け出し、まるでマグマのようにドロドロになり始めた。あとはコレをこの砂地全域で引き起こすだけだ。


『ポポ! ポポ!』

『キュイキュイ!』


 そうして続けていくうちに、10分ほどかけてようやく砂地を全てマグマへと変化させることに成功した。まあマグマどころか、アグニの『蒼炎操作』の影響か青い火柱もそこかしこで上がる地獄絵図みたいなことになったんだけど。

 あとはコレで、モンスターが出現するかだな。


『ポー。ポポ』

「ああ、ご苦労様」


 エンリルがアイテムを持ってきてくれる。地形の上書きの最中、100体討伐しちゃったせいで、途中通常のレアとレアⅡが湧いちゃったんだよね。

 ただ、あいつらは今更な相手だし、特に気をつける相手でもないから、環境書き換えついでに炎で炙ってオマケで倒しちゃったんだが。


「何が倍加してた?」

『ポポ』

「そっか。どっちもコアが倍加してたか」

「お兄ちゃんのスキルはどれもチートじみてるけど、倍加の腕輪もぶっ飛んでるよね」

「スキルやドロップアイテムのどれかが2倍になるんですよね」

「宝箱だけは増えないというのは残念ですが、それでもすごいことに変わりありませんわ」

「兄上、もしも炎のゴーレムが出たら、某にも斬らせていただけませんか」

「おう、良いぞー。でもレアモンスターは俺にもやらせてな」

「もちろんでございます」

「お兄さん、ボクもやりたい!」

「いいけど、直接殴るって大丈夫か? ここに立ってるだけで、すでに灼熱のサウナにでも入っているような気になるが」

「心配してくれてありがと。でも、ボク達にはお兄さんからもらった属性耐性があるからね。ステータス差もあるから、ダメージなんて大したことないよー」

「でも肌に傷がつくのは嫌だから、火傷したらすぐイリーナに治してもらうんだぞー」

「お任せください、お兄様。レンカの肌は私が守りますわ」


 そうしてイチャつくこと数分。マグマが定着したためか、新しいモンスターが出現し始めた。

 ドロドロのマグマを人の形に整えた奇妙なモンスターだが、中心にゴーレムコアがある以上、あれはゴーレムなのは間違いない。


「『真鑑定』」


*****

名前:ラヴァゴーレム(変異種)

レベル:40

腕力:450

器用:100

頑丈:400

俊敏:10

魔力:10

知力:10

運:なし


マジックスキル】火炎操作Lv2


装備:なし


ドロップ:ゴーレムコアⅡ

魔石:中

*****


「おお……。って、割とガチ目に強いな!?」


 普通に『初心者ダンジョン』の中で考えると、飛び抜けて高いぞ。第五層のハイドハンターでさえ、レベルは25しかないのだ。

 それだけ、俺が生み出した灼熱地獄が強すぎたのかもしれないが……。炎タイプであろうと、通常のモンスターがあの溶岩に耐えられるレベルとなると、これくらい必要になるのかもしれない。


「おお、すごーい!」

「さすがお兄様ですわ」

「完全に新種ね!」

「兄上、よろしいでしょうか」

「お兄さん、ボク我慢できないよー」

「ああ、行ってこい!」


 そうして飛び出した2人を追うように、前へと歩み出た。彼女達が持つナンバーズシリーズは、俺とは別に独立して経験値の共有化と、イズミを中心とした『運』の効果が適用されるので、レアモンスターを出す場合は俺が中心に狩って回らなきゃなんだよな。

 というわけで、俺も軽く遊んでみますかね。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る