ガチャ617回目:姦しい集団
ワープは無事に完了し、俺たちは今第二エリアの『大阪城前ダンジョン』第一層から、第一エリアの『初心者ダンジョン』第二層へと長距離転移をしていた。
ワープ機能を使って同じダンジョン内でショートカットすることは何度かあったが、ダンジョンから別のダンジョンへと移動するのは実はコレが初めてだったりするが……特に身体に違和感があるわけでもないし、また時間が経てば何度でもこの機能は利用できるだろう。これなら、以前鍵だけゲットして第一層までしか見てない『1086海底ダンジョン』に転移して、その入り口に設置されてる脱出ゲートを通ってサクヤお義母さんのプライベートビーチにワープすれば、気軽にバカンスを楽しめるだろうしなぁ。
あそこならまた、いい感じの修行ができそうな気がするし、イズミも連れていれば1日で帰ることだって可能だろう。本当に便利だな……。
「お兄さん、ここって『初心者ダンジョン』!?」
「そうだぞー」
「お兄様、もしかして『アトラスの縮図』がⅡになった効果って……。もう、先に言ってよー!」
「いや、言おうとはしたんだぞ? だけど皆、どう考えても話を聞くフェーズじゃなかっただろ」
「「「「うっ」」」」
どうやら心当たりあるメンバーが何人かいるようだ。俺は、ダンジョンコアとの話し合いが終わった後のことを思い出す。
俺とイズミがダンジョンへと戻ると、彼女達はまるで飢えた獣のようになっていて、俺という名の肉が与えられたことで我慢が限界に達したんだろう。盛大に貪られることとなった。
どれくらいの勢いだったかといえば、トイレと食事の時以外、離してもらえなかったほどだ。
更にその翌日である昨日はもっと忙しくて、午前中はSランクの発表と授与式と取材。午後からは彼女達の親族を交えての祝賀会だ。ちなみにそこでもヤバい事になった。
まず俺が、前回彼女達の親に挨拶した時はレベルが422だった。けど今回は、人類最強レベルの600超え。案の定と言うか、前回アプローチを仕掛けてきたレンカとイリーナの母親はもっと積極的になってたし、ハヅキやイズミの母親も夫が近くにいるのに意味ありげな目で見てくるし……。普通だったのはハルの親くらいのものだ。
そんな目に遭って初めて、俺は世の中の高レベル冒険者は大変なんだなと、自覚させられた。ほんとに。色んな意味で。
今回はサクヤお義母さん対策でこのレベルを維持してるわけだが、今後のトラブルにもなりかねないし、早めに消化しないとな。
この後予定しているものも、
「……なるほどー。Ⅱになったことで、そんなことができるようになったのね」
「というより、ワープは秘宝のグレードアップをしたからだがな。Ⅱは他のダンジョンの情報もリアルタイムで見れるようになっただけだ」
「あたし、外でも視れていたのは、直前に訪れたダンジョンだからだとばかり思ってたわ。これなら、新居を拠点として設定しても、いつでも第二エリアのダンジョンに移動したりもできちゃうのね」
「だな。まあでも、リキャストの関係で日帰りには使えないけどな。とりあえず実行しなきゃ問題ないから、『大阪城前ダンジョン』の第一層で、適当なところを開いてみ?」
そうしてワープ機能が働くことを実感してもらう。
「すっごーい!」
「マップ機能を扱える事もそうですが、兄上の言うようにダンジョン間移動が可能となれば、行動の幅が広がりますね」
「さて、改めて伝えるが、今回の遠征で俺から伝えられる情報としては、あのダンジョンで戦ったモンスターの詳細を映像付きで解説することと、ボスモンスターがどんなやつだったかを語ること。あとは『
「ええーっ!? 『
「流石お兄様ですわ!」
「あとで絶対に見せてね!」
「ああ、もちろん。それと、このまま用事を済ませて新居に移ったら、またしても俺が揉みくちゃにされるのは言うまでもないだろうから、今の内に確認しておくぞ。お前達はダンジョンボスの映像以外で、何か俺に特別報告することは無かったのか?」
彼女達が顔を見合わせ、ハッとなる。
「……あっ。お兄ちゃん」
「ん?」
「ごめんね。報告するまでもないような細かいことがいくつかと、忘れてたことが2つあったよ……」
「おう、怒らないから言ってみ」
「えっと細かいことは、まず私達、お兄ちゃんのブートキャンプですっごく強くなったでしょ。あのおかげで苦労してたモンスターも簡単に倒せるようになったのね」
「うんうん」
「その苦労していたモンスターっていうのが、以前お兄様に説明したこともあるアイテムトリガーのレアモンスターってわけ。そいつは1種類とかじゃなくて複数いたりして、中には鍵に関連するモンスターだったから、徹底的に調べるために何回か連戦したりしたの☆」
「ほうほう」
「その結果、大量の宝箱が出ることとなりまして、最初はイズミ殿が開けるという話になっていたのですが、あまりに数多く出たものですから……。いっそのこと兄上にお願いしてみてはという意見があり……」
「あー」
また宝箱か。といっても、雑魚からではなくレアモンスターからだから、そこまで多くはないかな?
「それでそれは、何個あるんだ?」
「えっとー、18個あるよ!」
「どんだけ倒したんだ……」
トリガー型のレアモンスターって、そんなに簡単に連戦できるものなのか。大精霊は全然復活する様子がないのに。今この瞬間にマップで見ても、池の周辺は雑魚モンスターすらまだ復活してないんだぞ。あの時に開けた大穴はほぼ塞がって来てはいるんだが……あれ?
もしかしなくても、トリガーとなる池の中心地ごと、俺がグングニルで吹っ飛ばしたせいか……?
いくらなんでも、トリガーポイントどころか、雑魚敵すら復活しないのは不可解だもんな。全ての大精霊を討伐するまでそのままの可能性も否定できないが、俺がまとめて吹っ飛ばしたせいでトリガーが再出現しないってんなら、割とやらかした感ある。今度向こうに行った時に復活してなければ、ダンジョンコアに聞いてみるか……。
「それで、もう1つは?」
「気になるスキルがいくつかあって、取得するのが怖いからお兄ちゃんに見てもらおうかなって」
「了解。それもまた帰ってからだな。んで、雑多な話ってのは?」
「私たちがお兄ちゃんの婚約者になったこと、まだ第一エリアほど浸透していないみたいで、外でも中でもナンパが絶えないことかな」
「今のお兄さんほどじゃないけど、ボク達のレベルも急激に上がったしねー。特にボクのイリーナなんてすごいよ!」
「お兄様のいないところでは、数歩歩くだけで声をかけられるものね」
「この夢と希望が詰まったボディじゃ仕方ないけどね☆」
「ひゃんっ」
イズミがイリーナの胸を鷲掴みにした。
「はぁ。少し前まではなんとも無かったけど、最近は私もイリーナを見てると変な気分になっちゃうのよね……」
「お。ハルもこっち側にくるー?」
「まだ行かないわ」
「レンカも茶化さないの。最近のイリーナ、同性からのアプローチが強いのも知ってるでしょ」
「まあ確かにそうかもー」
「兄上と関係を結ぶ前は消極的だった者も、レベルの後押しで声をかけてくるようになった印象ですね。今更声をかけられたところでですが」
見た感じ、イリーナは男女問わずだろうけど、他の皆も多かれ少なかれ異性からのナンパはされまくってそうだな。
「まあその辺の心配も、今後は減ると思うぞ。昨日のインタビューで大々的にうちの第二パーティだって宣言したし、その上お前達は俺の物だって明言したしな」
「にへへ」
彼女達の頬が緩む。このままここでイチャついててもいいんだが、それは後だ。用事を済ませて帰ってからにしよう。
「んじゃ、話の続きは帰ってからだ。まずはちゃっちゃと用事を済ませるぞ」
「「「はーい」」」
「「「はいっ」」」
マップを見て人が少ない場所に向けて向かう俺に、カスミが不思議そうな顔で聞いてくる。
「そういえばお兄ちゃん、ここで何するの?」
「ああ。アグニの強化だ」
『キュイッ!』
いつまでもコアがⅣじゃ可哀想だしな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます