ガチャ613回目:懐かしのダンジョン
昼食を堪能した俺たちは、『086ダンジョン』へとやってきていた。このダンジョンは名前の通り最初期に出現した始まりのダンジョンの1つでもあり、そのせいか難易度も全体的にみてマイルドなものだとか。
とはいえ、第一層にはいつもの如くゴブリンが出現するし、俺は学生時代、ここで未来がないことを思い知らされたわけだが。
そんな場所を妹達のパーティが制圧したというのだから、感慨深いものだ。
「にしても、賑わってるな」
「まあ場所が場所だからねー」
「今まではどんなに冒険者がここで活躍して、協会が安全を訴えても、スタンピードの発生率なんてものは目に見えない以上、一般の人達はここに寄ろうとは思わなかったでしょうね」
「10年以上前のここは、日本どころか、海外からも観光客が来るような場所でした。またしばらくすれば、昔見たような賑やかな光景が戻ってくるかもしれません」
このダンジョンは、とある観光スポットに突如として現れた。10年以上前のあの頃も観光客で溢れていたと聞くし、突然出現した未知のダンジョンという存在に、犠牲者が出なかったのは不幸中の幸いか。
それが今では、ダンジョンの入り口すら観光名所の一つのような扱いを受け、人々で賑わっている。
「まあでも、例のスタンピード事件以降、ダンジョンからの安全性を高めるために
「騒ぐだけでなんとかなると思ってるなんて、呑気なもんだ。解体したところで規模の不明瞭なスタンピードに対して、完璧な防壁なんて用意できるわけがないってのに。もしかしたら、城の存在が気に食わないとかいうふざけた理由で騒いでいたのかもな。身を守るならレベルを上げるのが一番の近道だろうに」
「お兄様でさえレベルを上げられたのです。つまり、騒ぐ元気があるのにレベルを上げられないのは、ただの怠慢。お兄様の言う通りですわ……!」
この城は、子供の頃に遠くからよく見ていたもんだが、6、7年経っても色褪せないな。
あと、さっきからイリーナの視線が強い。後光の説明をしてからというもの、俺に対しての好感度が限界を超越したみたいで、、俺が何を言っても持ち上げてくる。
まあ良いけど。
「それに無くなってたら『大阪城前ダンジョン』って呼び方じゃなくなってたよー」
「跡地ダンジョンになっていたかもしれませんね」
「そんなのどうでもいいわよー。それよりも、早く済ませちゃいましょ。早く終われば終わるほど、お兄様に可愛がってもらう時間が増えるんだから☆」
「「「「「!!」」」」」
イズミの発言で、全員の目の色が変わった。
飢えた獰猛な獣のように、目をギラギラとさせる。
ちなみに今回の鍵の受け渡しについて、エスはついてきていない。なんでも、前回こっち方面に来れなかったためか、1人でプチ旅行兼、シルヴィにお土産を用意するんだそうな。
そして今回の受け渡し、イズミは必須であるが、他のメンバーは少しでも俺と一緒にいたいがためについてきたとか。なんともいじらしい話だ。
まあでも問題は、受け渡しにどれくらいの時間を要するかが不明なところだな……。
「それじゃ入場するよー」
そうして、俺はかれこれ5、6年ぶりとなる『086ダンジョン』。別名『大阪城前ダンジョン』へと入場するのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここで良いかなー」
率先して歩くイズミについていき、俺達は人もモンスターもいない場所へとやってきた。このダンジョン、第一層は『初心者ダンジョン』のそれと類似しており、ゴブリンしかおらず、またフィールドもアリの巣のように広がった洞窟型だった。
こんな露骨な行き止まりは、やっぱりアレか?
「お兄様の想像通り、『ホブゴブリン』の出現ポイントよ☆」
「それで人がいないんだな。でも道中のゴブリンも、やたらと少なかったように感じたが……」
「この階層は、『初心者ダンジョン』よりも狭い上に、モンスターの最大出現数も少ないみたいなのよ。実際に数えたわけでも、ダンジョンコアに聞いたわけでもないけど体感的にね」
「へー」
やっぱり最初期のダンジョンだけあって、難易度が緩いのか?
「それじゃ皆。あたし達行ってくるけど、また30分なり1時間なりかかるかもだから、よろしくねー」
「はい。いってらっしゃいませ、お兄様」
「兄上、どうかお気を付けて」
「ちょっと、あたしの心配は?」
「イズミ、二人っきりだからって、ハメを外しすぎないでね」
「そうですわ。お兄様と2人っきりだなんて、羨ましいですわ……」
「そうだそうだー」
皆が各々にブーイングをあげている。といっても、本気で怒っている訳ではないじゃれ合いのような感じなので安心して見ていられるが……そうだな。
「あー……。向こうに着いたら、個別に時間を取るから、それで許してくれないか」
「「「「「!!」」」」」
「このダンジョンを攻略したご褒美と、少し離れてしまったからそのお詫びにな」
「お兄様、あたしも?」
「当たり前だろ」
「えへへ、やったっ」
イズミだけでなく、全員から歓声が上がる。やっぱ寂しかったよな。
「それじゃ、早速移動しようか。つっても、どうやるか知らないんだけど」
「あたしもよ。でも、多分こうやればいいと思うわ」
「やっぱり?」
イズミが両手を広げたので、俺は彼女の手を掴み円を作った。この状態で移動すれば、なんとかなる気がするのだ。
「『管理者の鍵』を実行するわ!」
【所持者の意思を確認】
「おっ、俺にもメッセージが出た」
「成功ね☆」
【管理者キー 起動】
【管理No.086】
【ダンジョンコアへ移動します】
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