ガチャ606回目:再び空へ
俺達がダンジョンをクリアしたその日から、もうかれこれ5日ほどが経過していた。やることやったしすぐに帰ってもよかったんだが、改めて歓待をしたいとエスやシルヴィが申し出てくれたので、受け入れることにした。
カスミ達が待ってるだろうけど、あの子達もダンジョン攻略があるしな。残り二階層って話ではあったけど、最深部とその一歩手前となれば難易度は上がるものだ。2日で二層とも攻略なんて真似、俺以外に軽くこなせるとも思えないし、こっちものんびりすることにしたのだ。
そうして、再び宝条院家の家紋入りのプライベートジェットに乗り込み、ここに来た時の数十倍以上の人達に見送られながら、アメリカの地を飛び立った。
「んふふ。エスとの旅行なんて嬉しいわ」
「ああ、僕もだよ。兄さんには感謝しなくちゃね」
「お兄さん、ありがとう!」
「どういたしまして」
シルヴィはエスにくっついてご機嫌な様子だった。エスも憑き物が落ちたようで、ダンジョン攻略が完全に終了して以降、ずっと彼女とイチャイチャしている。せっかくシルヴィが二人目以降を許可しても、あんな調子じゃしばらくはペアのままだろうな。
『696ダンジョン』攻略の報酬として、エスとミスティの2人と、ついでにシルヴィの自由をゲットしたことで、シルヴィは今後自由にエスについて来ることが可能となったのだ。
なんでも、実は彼女はあの支部の中で、副支部長というポジションだったらしく、エスの専属といっても今まではそう簡単に離れることはできなかったそうなのだ。けど、今回俺の報酬に加えられたことと、今後あのダンジョンは管理がほぼ不要になったことから、ベンおじさんからも許可が降りたのだった。
仕事ができる優秀な人間が減ると組織としては結構大打撃のように思えるが、あそこはいままでスタンピード対策にかなりの人員を割いていた。それがなくなった以上、これからは余裕が出てくるはずだろう。
『キュイー?』
『キュキュ!』
『ゴゴー』
『~~♪』
空を飛ぶ景色を初めて見るためか、アグニとモル君は大興奮のようで、窓に張り付いている。それをエンキとセレンは付き合ってあげているようで、一緒に外を眺めていた。
『ポー……』
『プル~ン』
エンリルとイリスは、だらけているようで窓際のテーブルの上で脱力している。うーん、溶けてるなぁ。
「それにしてもショウタ君、良かったの?」
「何が?」
「残りの大精霊戦。エス君の能力があれば、初撃決殺ができると思うけど」
「あー。まあ大抵の敵は、あと先考えなければそれでいけるとは思うけど、それ頼りにするのはちょっとな」
「やっぱり自分で倒したい?」
「そりゃね。パンドラだって、できれば俺が倒したかったくらいだし」
そう言うと、エスが神妙な顔で振り向いた。
「あの時は譲ってくれてありがとう、兄さん」
「いやいや、半分冗談だからそんな顔するなって。パンドラ戦については、譲ったというか譲らざるを得なかっただけだ。俺は功を焦って自爆しただけだしな。……てかエス、あの最強技と反射技、ぶつかり合ったら結局どっちが勝つんだ?」
「理論上はどちらも最強の攻撃と反射だけど、使い手が僕しかいない以上実験のしようがないよ。ただ、最終的には『極閃』が勝つと思いたいけどね」
よくある最強の矛と盾ってやつだな。使い手が同じ人間であり、同時発動できない以上、誰もそれを証明できない。だが、それを証明する似たような手段はあるかもしれない。
「あと大精霊戦を避けたのには、その辺りの問題があるんだ。もし仮に、他の属性持ちの奴らが、エスと同じような技を取得していた場合だ。もしもそれが現存していた場合、大精霊がそれを使ってこないとは断言できないだろ」
「それは否定できないね。彼らの『魔技スキル』の詳細までは把握していないけど、『炎』の使い手は属性も本人の気性も攻撃寄りだから可能性としては低い。でも『水』と『土』は本人の気質も属性も防御寄りだ。反射系の技を持っていても不思議じゃない」
休みの日に軽く話したのだが、エスは他の3属性とも顔見知りらしかった。といっても、仲が良いわけでは決してなく、性格的に相性が良くない人もいるらしいが。それから3人とも、アメリカではなく他国の人間であり、所属もバラバラなのだそうだ。なので、会った回数も片手で数えられるくらいしかないらしい。
そういうこともあって、その辺の詳細は詳しく聞けていない。
「あと、俺としての不安は、2戦目から4戦目の大精霊戦は、攻撃系の『魔技スキル』だけじゃなく、防御系やサポート系の『魔技スキル』も使ってくるんじゃないかっていう点だ」
「つまりご主人様は、2戦目以降、大精霊がもっと強力になるのではとお考えなのですね」
「そゆこと。まあ考えすぎかもしれないけど、そんな状態でエスの『神降ろし』と『極閃』。それから扱いきれないグングニルや、炎属性の灰燼。これらに頼りっきりじゃ、絶対に痛い目を見ると思うんだ。だから、もっと強くなるまでは保留で行こうと思う」
「ん。賛成」
「もう黒焦げになったショウタ君は見たくないしね」
「あれは、心臓に悪いです……」
「もうこりごりですわ」
「ほんとごめん」
席から立ち上がり、奥のベッドへと腰掛けると、彼女達が集まってくる。順番に宥めていると、最後に嬉しさを隠しきれない表情のアイラが正面にやってきた。
「ご主人様」
「ん?」
「帰ったらしばらくは、今回のような長期的な予定はなるべく控えてくださいね」
「分かってるよ。準備は?」
「現時点ではまだ6割ほどです。また、新居は既に出来上がっていますので、帰ったらそのまま向かいましょう」
「了解」
俺たちの意味深めいた会話の内容を、皆は読み取ろうとしてくるが、誰も当てることはできないのだった。
やっぱ、何のヒントもなく読み取ってくるアイラがおかしいだけで、普通はこういうもんだよな。うん。そうして空の上でものんびりイチャイチャしていると、唐突に情報ウィンドウが表示された。
【ダンジョンNo.086のスタンピード設定が無効化されました】
「わあっ!」
「これって!」
「凄いですわ!」
「ああ、カスミ達がやってくれたらしい」
『ダンジョンNo.086』は、カスミ達がメインに活動していた場所であり、勝手知ったるダンジョンであったため、最初の攻略先として選ばれたらしかった。
前回連絡をして、進捗を聞いてから今日で大体1週間くらいか。あれからゆっくり着実に、第5層と最終層を攻略したんだな。
にしても、外からだとこんな風に見えるのか。いつもダンジョンコア内にいるから見たことがなかったんだよな。
ここまで来て、何気に初体験だ。
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◆次に攻略するダンジョンのアンケート、結果が出ました◆
◆まさかの逆転劇まで起きるとは、ここまで白熱するとは思いませんでした◆
◆皆さん、沢山の投票ありがとうございました!◆
https://x.com/hiyuu_niyna/status/1817630380385869830
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