ガチャ601回目:管理者レベル5

 やって来たのはいつもの真っ白な部屋。操作パネルをタッチすると、『ダンジョンコア』が出現した。


『ようこそ、管理者様』

「ああ。……今回はアメーバか」


 現れたのは常に脈動を続けるアメーバだった。シェイプシフターをマイルドにすればこんな感じなのかな。相変わらずの統一性のなさである。


『私は当ダンジョンを管理する端末AI、ダンジョンコアです。……貴方様は5つの管理者キー、そして知恵の実を2つお持ちなのですね。おめでとうございます。これより全端末において、ダンジョンシステムレベル1がアンロック。情報セキュリティの第一防壁を完全解除します』


 今まで小出しに許可が降りてたけど、今ようやく第一の門が解放されたのかよ。この調子だとあと複数の門が存在することになりそうだし、長い道のりだなほんと。

 色々と確認したいが、まずは基本的なところからだな。


「まずはスタンピードを永久OFF設定に。通知は全人類を対象にするが、一旦保留で」

『許可。……実行しました。現在696ダンジョンのスタンピード設定はオフです。通知は指定の設定で準備中。現在保留中です』


 よし。これで最初の仕事は完遂したな。続いては……。


「第一層から第三層までのドロップアップは期間としてどのくらいが設定されている?」

『確認。残り約20日です』

「永続化は可能か?」

『許可。……実行しました。通達も行いますか?』

「ああ。あとでまとめてやってくれ」

『承認』

「続いて第五層のモンスター出現設定を変更したい」

『確認。現在当該エリアのモンスター出現は完全に停止しています』

「お。マジか」


 パンドラ撃破で完全に機能停止したのか。まあ全部吸い尽くしてたからな。

 となると気になるのが、第五層は今後、何のために存在しているのかと言う点だな。普通に考えればあの地獄のフィールドが平和になるのは実にいいことなんだけど、何も現れないというのも勿体無い話だ。それに、何も現れないということは鍵もまた永劫入手できないことを意味する。


「確認したい。すでに他者が支配しているダンジョンで、鍵を入手することは可能なのか?」

『……許可。本来の方法では不可能です』


 ややこしいが、権限的には伝えることは許可されたが、入手することは不可能と。


「ではどうやって鍵を手にするんだ? 現段階で通達可能な手段を全て説明してくれ」

『……許可』


 そうして伝えられた方法は以下の内容だった。

・その地域の管理者を殺すことで物理的に奪う

・その地域の管理者から譲渡してもらう

・その地域の鍵の欠片を入手し、管理者権限を行使してそこからコアに強制アクセスする


 現状伝えられるのは上記3つのようだ。他にもあるかと聞いてみたが、いつものレベル不足を言われてしまった。

 まあそれは良いとして、気になるのはやっぱ2つ目と3つ目だよな。


「譲渡についてだが、具体的にどう貰うんだ?」

『確認。譲渡者が支配するダンジョン内で、同時にダンジョンコアにアクセスしてください』

「やり方は?」

『不可。現在その機能は利用できません』

「ん?」


 利用できない? 俺のレベルが足りないとかではなく?

 となると、鍵を持ってる譲渡者が近くにいないと、そもそも聞く事すらできないとかそういうことか……?

 ならこの件は後回しだな。次に強制アクセスについて聞いてみるか。


「強制的にダンジョンコアにアクセスするには鍵の欠片を使ってとあるが、これは世界中の誰にでも挑戦権があるのか?」

『否定。すでに他のダンジョンを支配し、管理者である必要があります』

「だよな」


 いくら既に解放済みのダンジョンだからといって、権限もなしに誰彼構わずに欠片からアクセスされたらかなわんもんな。


「ちなみにその権利は、他の管理者に鍵を譲渡、または奪われた場合どうなる?」

『許可。一度でも管理者になった場合、その権限は剥奪されません』


 これ何気に大事な情報だよな。だって、今後仮に『征服王』から土地を奪ったとしても、反撃する手段を残すと言うことになるんだから。


「なら次は、欠片を使っての強制解放にはどのような手順とルールが存在するんだ?」

『許可。手元に存在する欠片及び、欠片に該当するアイテムの数に応じた難易度の試練を突破する必要があります。その数が該当地域の階層数と同等であれば、オリジナルの試練と同程度の難易度になります』

「その試練ってのは『ダンジョンボス』の事を指してるのか?』

『肯定』


 ……てことは、階層ごとに本来あるはずの鍵の総数によって、難易度が可変した『ダンジョンボス』と戦わされるわけだ。

 なら今後、『征服王』からダンジョンの支配権を奪ったとして、再び奴が鍵を入手するには、最低でも俺が挑むのと同じ難易度の『ダンジョンボス』に挑ませる事になるわけか。苦労して撃破した『ダンジョンボス』を、パワーアップした状態で挑まざるを得ないと考えると、その時から成長できてないとやばいことになりそうだよな。でも待てよ? もし仮に奴がそれを突破できたとしたら、イタチごっこになりかねないぞ。


「その試練を突破した場合、鍵が強制的に挑戦者に移譲されるのか?」

『否定。旧管理者と特殊フィールドで戦い、勝利してください。特殊フィールドは当該ダンジョンの入口で行われ、外部からの干渉は一切受け付けず、スキルによる破壊も不可能です』

「ダンジョンシステムを利用した『決闘』ってことか。しかも見せ物みたいな形で……。なるほど、じゃあその特殊フィールドの詳細な仕様を教えてくれ」

『許可』


 そうして知り得た仕様は以下のものだった。


・新管理者が鍵を使用することで、旧管理者に鍵と管理者権限を賭けた戦いを挑むことができる。申請した瞬間、得た鍵は喪われる。

・旧管理者は戦いを拒絶することはできないが、最大6時間、開始のタイミングをズラす事が可能。

・新管理者が申請を行うには、ダンジョン内ならどのダンジョンからでも可能。

・新管理者が申請後、特殊フィールドに移動するまでの間、新旧管理者の双方に対していかなるスキル効果も発動しない。

・戦闘開始時、新旧管理者がどこにいようと、ダンジョン内外問わず強制的に該当場所へと移動させられる。

・特殊フィールド内では更なる特殊フィールドの発生は不可。

・戦闘を終了するには相手を殺す必要がある。ただし、決着が付き特殊フィールドから解放された瞬間、敗北者は蘇り双方共に傷が癒える。

・戦闘終了後、勝者には該当エリアの鍵と管理者権限が与えられ、敗者は該当ダンジョンで手にしたいずれかのスキルを勝者に奪われる。


「ははーん……」


 最後のスキル報酬はランダムっぽい感じだけど、たぶん『運』でめちゃくちゃ結果が左右されそうだよな……? 逆に挑戦者側は、負けてもデメリットは鍵の喪失くらいしかないみたいだし、気軽にできそうだ。

 『征服王』の力の象徴たるスキルがきっとあるはずだし、それを奪えちゃったらもう反撃される心配はなくなるのかもしれないな。

 逆に、俺の心臓部でもある『アンラッキーホール』は何か対策しないとまずいよな。なぜならあそこは『運』さえあれば比較的楽に『ダンジョンボス』に挑めてしまうのだ。鍵の欠片とかいう寄り道もなく一方通行でボスを呼び出せるから、強化されて出てくることもない。

 呼べてしまえば後でどうとでもなるから、協会による占有宣言も、奪う側からしたら大した問題にはならないだろう。無理やり突破しちゃえばいいんだから。

 ここはちょっと、考えどころだな。


「ただ、そういう意味ではこの『696ダンジョン』ほど、防衛が楽なところもないだろうな」


 スタンピード設定の影響で赤色の存在しない第一層の紋章は入手不可能だし、第五層はモンスターがそもそもいないのだ。今のままだと確定で2つも紋章が欠けているのだ。

 あとは、第三層の隠し部屋の宝箱もだよな。『プリズムの宝箱』は1度きりだとしても、紋章も復活しなかったらここも問題だよな。

 ……最悪3つも紋章を欠いた状態で、強化されたパンドラと戦う事になる訳だ。難易度がどれだけ上がるかは知らんが、正直言ってムリゲーじゃね?

 一応聞いてみるか。


「欠片の数に応じた難易度の変化は具体的にどう変わる?」

『不可。管理者様のレベルが足りません』


 ほら出た。

 いつも肝心なところは教えてくれないんだから全くもー。

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