ガチャ598回目:危険な置き土産
激戦が終わり、溢れ出ていたアドレナリンが収まってきた事で、俺は再び激痛に苛まれていた。
俺とエスは相変わらず一歩も動けない中、ミスティが全力疾走して助けを呼びに行き、彼女達が来るまで俺は必死に目を開けていた。この傷で気を失ったら死ぬんじゃないかと、不安がよぎったためだ。
そうして歯を食いしばって耐えていると、俺の所に天の架け橋のような光が降り注いだ。どうやら、目視できる距離に辿り着いた瞬間、マキとアヤネが回復魔法を使ってくれたらしい。無限の牢獄のように感じた苦痛の時間は、あっさりと消えてくれた。
「……」
ゆっくりと起き上がり全身を見回す。天翼シリーズの防具は無事だが、中のインナーは黒焦げになっているし、大精霊戦で吹き飛んで魔鉄で補強した兜は、再び半壊していた。
まあ魔鉄だもんな。俺の灰燼に耐えられるわけないか。
「ショウタさん!!」
「旦那様ー!!」
いつも以上に心配という感情を顔に貼り付けた2人が真っ先に飛び込んでくる。そんな彼女達を抱き止め、その温もりを感じていると、普段は遠慮してくっついて来ないアキとアイラも抱きついてきた。
「心配かけてごめんな」
「すっごく心配しましたっ!」
「旦那様、生きてて良かったですわー!」
「ショウタ君のバカ! 毎回毎回心配かけて!」
「少しはご自愛ください」
「今回の怪我は8割くらいエスが悪いから、後で皆で引っ叩こうな」
全員の視線がエスに注がれる。そんなエスはというと、まだ地面にうつ伏せになったままだった。身内であるはずのミスティ含め、誰も起こしてやらないのは不憫だな。
「はは……。本当にすまない」
「ん。残りの2割は?」
「それはまあ、俺がトドメを気にして迂闊に凶悪技をぶっ放した点かな」
万能な『風』というスキルについて侮っていたのもある。ハイブリッド精霊戦や、大精霊戦で感じた風属性のイメージとしては、強力な攻撃手段を擁する火力特化型だった。だからエスが開発した技も、大体はそういう系統なのではないかと予測を立てていた。
実際、あの『極閃』なんかはガチガチの攻撃特化型の技だったし、『ワールドカッター』や『ブレイクアロー』も、相手を殺すことに長けていた。だからまさか、あんな攻撃と防御両方に秀でた技が控えてるなんて、夢にも思っていなかったのだ。
「……やっぱり、4:6で俺が悪いかも」
「ん。素直でよろしい」
そう言ってミスティは大きく伸びをしたあと、その場に寝転がった。憑き物が落ちたかのように、のんびりゴロゴロする様子に、思わず笑みがこぼれる。
「それではご主人様。何があったかご説明していただきたいのですが、一度拠点に戻りますか?」
「いや、ここで良いよ。アレがある限り、ここはもうセーフティエリアだと思うから」
俺の視線を飛ばした先。そこは、パンドラが死の間際にいたところであり、ドロップしたアイテムが散らばっていた場所だった。
アイテムに関しては朦朧とする意識の中、エンキ達が回収してくれていたのは微かに覚えているが、そこにはいつの間にか謎の台座が出現していたのだ。サイズとしてはそれほど大きくもなく、何かを飾るような台座が並んでいた。アレが何かは言うまでもないかもしれないが、一応『真理の眼』でみても反応はなかった。
ただまあ、どうせ各種紋章を捧げれば良いんだろう。パンドラも鍵は持っていなかったし、あそこでようやく取得する感じかな。
「それじゃ、順を追って話すよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇
ミスティが撮影していた動画を交えつつ、雑魚戦からパンドラ戦までを語る。あの時生じた空の亀裂は、今は元通り復元しているが、あんな大技、外で使ったら大変なことになりそうだな。
「ああ、兄さん、安心して。あの技はダンジョン内に漂う魔力も借りて放つ技なんだ。だから外だと、あれほどの破壊力は出ないんだよ」
「そうなのか。……って、お前もしれっと心を読むなよ」
「ははっ」
「それじゃあショウタ君、あの台座、早速調べちゃう?」
「いや、その前にドロップを確認しよう。エンキー」
『ゴー……』
「ん?」
なんだか元気がない。
小人サイズになっているエンキを手で招いて、抱き上げる。
「どうしたんだ? 疲れちゃったか?」
『ゴ……。ゴ……』
『ポ……』
どうやらエンキだけでなく、エンリルも元気がない。事情を聞いてみると、ドロップに嫌な感じのものが混じっていたらしい。
嫌な感じ……? そんな変なもの混じってたかな?
「とりあえず出してみてくれるか? 危険かどうか俺が判断するからさ」
『ゴー……』
『ポポポ……』
落ち込む2人を撫でて宥め、ドロップ品を取り出してもらう。そこに並んだのは、ステータス画面で見えていた『特大魔煌石』に加え、『パンドラのゲノムデータ』と思われる謎のカプセル。『幻影虚像のキャンディボックス』と思われる10個の梱包されたキャンディ。そして最後に、『プリズムの宝箱』だった。この中で名前からして危なげなのはゲノムデータだろうか?
「ふーん? 変なものなんて特に……!?」
俺がソレを視界の中心に捉えた瞬間、『直感』が警戒信号を発した。その存在は、先程対峙していたパンドラを凌駕するほどの不快感と不安を駆り立てた。
この
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