ガチャ595回目:三面六臂の怪物
『ピシッ!』
煙に再び亀裂が入り、ひび割れが大きくなっていく。
今までなら亀裂が入ればそこからすんなり出てきたのに、随分とゆっくりだな。それだけ、中の存在の比重が大きいのか?
「ん。どんどん気配が強くなる」
「第五層の集大成だからね。どんな悪夢が生まれても不思議じゃないよ」
『ビシビシビシッ……ガシャン!』
亀裂はどんどん大きくなり、破裂した。
中から誕生したのは、深淵を腹に抱えた巨大なシェイプシフターだった。
*****
名前:合成獣パンドラ(ダンジョンボス)
レベル:500
腕力:7500
器用:7500
頑丈:7500
俊敏:7500
魔力:7500
知力:7500
運:なし
【
装備:なし
ドロップ:幻影虚像のキャンディボックス、ランダムボックス、パンドラのゲノムデータ
魔煌石:特大
*****
『ゾワッ!』
今までの比じゃないレベルの、根源的な恐怖が俺達を襲う。全身が震え、鳥肌が立つ。気が弱い者なら気絶どころか、この恐怖から逃げるために自ら命を絶っていたかもしれない。
エスもミスティも崩れ落ちそうになりながらもなんとか耐えているが、エンキ達は萎縮してしまっている。このままじゃ駄目だ!
「……ウオオオオオッ!!」
叫ぶことで自らと仲間を『鼓舞』し、『克己』で律した。奮い立った感情と心が、震えと恐怖を吹き飛ばす!
「ふぅー……!」
「兄さん、ありがとう。楽になったよ」
「ん。ついでに滾ってきた」
「わかってると思うがこいつも無敵の変身型だ。今の段階で何をしても、こっちが消耗するだけだから、まだ様子見で良い」
「ん。分かった」
『ゴ! ゴ!』
『ポポ!』
『♪♪』
『プルンプルン!』
エンキ達も無事立て直したようで、パンドラに対し『倍返しだ』と怒りの声をあげている。
「悪いがエンキとセレンは離れて支援に専念してくれ。相手は2倍以上のステータスを持つ格上だ。慎重に動く必要がある」
『ゴー……ゴゴ!』
『♪』
「エンリルとイリスもだ。ステータスに大差はなくても相手の方が上だ。無闇に近付かないようにな」
『ポポ!』
『プル!』
『……』
パンドラは立て直した俺達を、ただ静かに『観察』していた。そうして一方的な睨み合いが続くこと数分、ようやく奴に動きがあった。
全身から煙を噴き出し、その姿を変えて行く。全員が警戒をしつつ見守っていると、煙の中で金色の外装と、半透明な防壁がチラ見えする。その現象に覚えしかない俺は警戒レベルを最大にまで引き上げた。
すると煙の中から漆黒の腕が現れ、ミスティの方に向けられる。奴は腕を勢いよく振りかぶり――。
『ワールドカッター』
「ミスティ!!」
俺は咄嗟に彼女を抱きかかえ、真横に跳躍した。
瞬間、ミスティが今まで立っていた場所が縦に両断され、大地が割れる。そして俺の纏っていた外装2種と、ミスティの防壁もまとめて消し飛んだ。
今の技、そしてこの現象は……。
「風よ!」
エスが奴の周囲に漂っていた粘性の煙を吹き飛ばす。すると中から3つの顔と6つの腕を持つ怪物が現れた。
*****
名前:合成獣パンドラ(ダンジョンボス)
レベル:500
腕力:7500
器用:7500
頑丈:7500
俊敏:7500
魔力:7500
知力:7500
運:なし
コピー対象1:天地翔太
コピー対象2:エルキネス・J・サンダース
コピー対象3:ミスティア・J・サンダース
【
腕1:双貌血牙の蛇腹剣
腕2:エアリアルソード
腕3:クピドの黄金弓
腕4:なし
腕5:ケルベロス【形態:二丁拳銃】
腕6:ケルベロス【形態:二丁拳銃】
ドロップ:幻影虚像のキャンディボックス、ランダムボックス、パンドラのゲノムデータ
魔煌石:特大
*****
その造形は、根源的な恐怖は消え去ったが、普通に悪夢に出て来そうなくらい冒涜的な造詣をしていた。まず黒い流動的な見た目はそのままに、頭頂部には俺達3人の無表情な顔がついており、6本もある腕にはそれぞれの武器が装着されていた。
そして恐るべきことに、奴はエスの『ワールドカッター』だけじゃなく、俺達の鎧を全て壊した。つまり、『結界破壊Ⅲ』も同時に使用してきたのだ。
そこから推測できるのは、奴は俺達全員の能力を『武技スキル』『魔技スキル』込みで、好きに使えるということだ。本来ならまさしく悪夢そのものだろうが……。
「エスの必殺技の消費は知らないが、『結界破壊Ⅲ』は消費が激しい。更には攻撃に上乗せした場合の消費は倍の3600だ。1割カットしても3240。すぐに撃ててもあと1発が限度のはずだ!」
「……すまない兄さん。そういう訳にもいかないんだ」
「ん!?」
『食らえ』
外装を張り替え直したところで、紫色の輝きが防壁に激突した。今のは『紫電の矢』か。アレは威力と速度がある割に、消費が200だからな。気軽に連発できるほど安くも無いが、『魔力超回復LvMAX』がコピーされていると考えれば、消費はそんなに重くもない。
この技を敵に使われると本当に脅威だな……。奴の腕が一本手ぶらだったのはそういうことか。
「で、さっきのはどういう事だ!?」
会話をしている間も、案の定奴は通常の射撃の中に『紫電の矢』を絡めてくる。時にはそれを『超防壁』で受け、剣で弾きながら攻撃に耐えた。俺には『予知Ⅳ』がある。下手な攻撃も受ければ受けるほど見極めるための経験値が入ってくる。慣れてくれば、派生技である『雷鳴の矢』ですら剣で弾けるようになるかもしれない。
更に言えば、あの技の元々の持ち主は俺だ。
だがそれは、相手も同じこと。下手にこっちから攻撃を繰り出し防がれてしまっては、今後同じ技を当てるのは苦労することになる。だから今は、見極めも兼ねて耐えのムーブなのだ。
そして弓の相手を俺がしている間、二丁拳銃の相手はミスティがし、距離が離れていてもお構いなしに射程を伸ばせる蛇腹剣と風の剣という面倒な相手はエスがしてくれている。
「実は、僕には『風』以外にも特殊なスキルがあってね。それがまた『風』ととっても相性が良いんだけど、今回でも奴はそれを使ってくるはずだ」
「まあそんな便利スキルがあるんならな。俺達の知識もあるだろうから使わない手はないだろ。で、どんな効果な訳?」
「一定時間の間、未来に得られる魔力を前借りできるスキルだよ」
「……チートじゃん。でもそれ、なんで雑魚敵連中は使ってこなかったんだ?」
「使用するにも一定の魔力と対価がいるんだ」
「なるほどなっと!」
飛翔してきた危険な気配のする矢を回避する。
奴も弓の扱いに慣れて来たのか、『紫電の矢』の中には、時折強力な『雷鳴の矢』や、通常の矢と見分けがつかない『破魔の矢』が織り交ぜられていて、油断ならない状態が続いている。前者は全力で受け流し、後者はなるべく回避して外装が持って行かれないようにしていた。
最も警戒すべき『魅惑の矢』は、俺達が一番警戒している事も理解しているんだろう。アレは発動の段階で矢がピンク色の光を放つのでバレバレなのだ。下手に俺の記憶や知識があるから、俺達に効果が無い事を十分に把握しているのだろう。
魔眼系統もシェイプシフター同様に使ってくる気配がない。やっぱり魔眼は、仕様的に通常のスキルとは枠組みが違うのかもな。もしくは、使えるけど使えないフリをしてる可能性もあるか……?
その点も考慮して、攻略していかなきゃな!
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