ガチャ594回目:決戦準備
吹き飛ばされた4人組と5人組をそれぞれ煙にした俺達は、軽い休憩をしていた。
割と目と鼻の先に彼女達が待つ拠点があるんだが、今はいいだろう。
「ふぅー。中々楽しいな」
「ん。ショウタらしい。けど、私も同じ気持ち」
「はは、コイツら相手に楽しいと思える時が来るとは思わなかったよ」
6体、5体、4体と倒して残り85体。戦闘自体はそれぞれ1分もかかっていないはずなのだが、濃密すぎて終わるたびに疲労が蓄積していた。
ただ、何ももうギブアップというわけではない。今は情報収集を優先させているのだ。エンリルがコピーの対象ではないと分かった今、マップの作成を最優先にしていた。
「ん。それにしてもこんな短時間で15体。普通に快挙」
「そうなのか? ちなみにエスは、普段どれくらいの時間かけて倒してたんだ?」
「僕は自分の分身からダメージを受ける心配はないけど、こっちの攻撃も通りにくいんだ。だから一気に10体近くと戦って、途中増援なんかも捌きつつ、乱戦でちまちま削って、大体1時間くらいで20体ってところかな」
「エスでもその時間か。そりゃ大変だな」
「ん。逆に私は即座に勝負がつく。けど、いまだに自分を撃ち抜くのは苦手。5体くらいでギブしてる」
「そうなのか。ちなみに今日は大丈夫そうか?」
「ん。私の処理はエスやショウタに任せる。そして私がエスやショウタを撃つ分には問題ない」
「そ、そうなのか……」
エスはまあいいとして、俺相手なら躊躇いなく撃てるってこと?
「ん。ショウタ、勘違いしないで。偽物だと分かってるから撃てる。ショウタのマップ無しに、本物を見分ける手段がないと、引き金を引く時は心が痛む」
「なるほど。でも偽物と分かってても自分を撃つのは嫌なんだな」
「ん。自分の最期がこんなだって言われてるようで、やだ」
「そっか。……俺らが攻撃する分には?」
「2人から実際にそうされることは現実的じゃない。だから平気」
「そんなもんか」
ゴロゴロ甘えてくるミスティを撫でる。そうしている間も、マップは徐々に明るくなっていて、エンリルの青点が高速で移動していた。
あと半分ってとこかな。
「『風』とエスのレクチャーのおかげで、エンリルの飛翔速度も跳ね上がったよなぁ」
「力になれて嬉しいよ」
「何度も言うけど、『風』の扱い方を教えてくれてありがとな。ある意味お前の心臓部なのに」
「兄さん、気にしすぎだよ。僕としても同じ力を持っている仲間がいると分かっただけで嬉しいし、それに自分で開発した技を教えられるって、かなり幸せなことなんだよ?」
「まあ一子相伝どころか、受け渡し先がない力だもんな、『
基本的にスキルオーブとして現界させられるのは世界に1つだけという制約がある以上、別の誰かが資格を得るということは、すなわち自分の死を意味する。だから、せっかく開発した専用の技術を、自分が生きたまま誰かに伝えるなんて真似、本来ならできない訳だ。
「俺たち『
「ん。あまりにも未知」
「僕達の……というより、兄さんの頑張り次第だと思うけどね」
「……荷が重いなぁ。まあ、俺達が死ぬ時は、それこそダンジョンが平定された先で老衰しているか、人類が滅びているかの2択だろうけどな」
『ポポー!』
そんなことを話していると、エンリルが戻ってきた。どうやら一仕事終えたらしいな。
「ご苦労様、エンリル」
『ポ、ポ』
「これが第五層の全貌か。初めて見たな」
「ん。地図で見ると普通の平原。連中の分布も、割と良心的」
「目算で見る限り、それぞれの集団が50から100メートルくらい離れてる感じか。大声で叫んだりしなきゃ、囲まれる心配はないのかな?」
「ああ。だけど、こっちが叫ばずとも
「そういやそうだった。ほんと面倒だなコイツら」
『ゴゴ』
『ポー?』
『プルル』
『♪』
「そうだな。俺にはお前たちがいるもんな」
こっちには変身されない強力な仲間がいるんだ。負けるわけないよな。
先ほどまでの3戦は極力3人で戦って、直接戦闘への参加はさせないでいた。理由としては単純にやってみたかったって理由もあるが、俺達3人が息を合わせて戦うなんて機会、今まで無かったからな。これからのために合わせておきたかったのだ。あと、遠くで見ていたセレンとイリスも、本物と偽物の区別は簡単についたらしい。
やっぱ、魔力による繋がりは偉大だな。
「そんじゃ、このまま100体討伐目指して頑張りますか」
「ん!」
「頑張ろうか」
そうして俺達は時に慎重に、時に大胆に動きつつ、シェイプシフターの数を減らしていくのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
そして数時間後。
適度に小休憩を挟みつつ、俺達は順調に討伐数を稼いでいた。特に後半は、エンリル達がコピーされないことを良いことに、俺とエスはエンキの影に隠れ、エンリルに掴まったミスティが囮をすることで、大量のミスティコピーが乱射しながら襲ってくる弾幕戦を楽しんだりもしていた。
丁度100体になるように調整しつつ、周囲に余計な偽物が存在しないよう掃除をして行った。その結果、ついに100体目の討伐を成し遂げたのだ。
「全員、警戒!!」
100体目に倒されたシェイプシフターから溢れ出た煙が、まるで粘液のような動きを見せつつ1箇所に集まっていく。そして煙は、爆発したかのようにマップ全域に広がり、全てのシェイプシフターを取り込みながら再び俺たちの目の前へと集結した。
「……この感じ、ただのレアじゃないな」
コイツの吸収により、もうこの階層にはどこにも赤点は存在せず、目の前の巨大な赤丸だけが爛々と輝いていた。俺たちの前には、今にも卵から怪物が誕生しそうな、そんな予感を感じさせる異質な煙が揺らめいている。
こっちのレベルは176。結局最後までガチャを回す事ができなかったな。レベル120のシェイプシフターはハイブリッド精霊より経験値が多いみたいだけど、それでも100体では、4しか上がらなかったのが残念だ。
「『ダンジョンボス』クラスが来る。出し惜しみなしで行くぞ」
「ん。相手次第で武器の形状を変えるね」
「僕は最初から本気で行くよ。『解放:エアリアルソード』」
エスの手には柄も刀身も緑色に輝く、剣の形をした何かが出現した。
名前:宝剣・エアリアルソード
品格:『
魔力:10000
説明:風の力を凝縮させた風の所有者専用の剣。内包魔力を消費することで切れ味を上昇させる。
このエスの剣、今魔力を使って作り上げたというよりかは、どこからともなく
『ピシッ!』
空間が割れるような音と共に、煙に亀裂が走る。
さーて、何が生まれるかなっと。
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