ガチャ583回目:マップ埋め

「じゃ、これで第四層もクリアだな。皆、お疲れ様!」

「「「「お疲れ様!」」」」

「……まあ、完全クリアには程遠いが」

「もう、ショウタ君。今はそれは忘れましょうよ」

「そうですわ。折角の快挙ですもの。今は喜ぶべき時ですわ!」

「ショウタさんも、しばらく再戦する気は無いんですよね? でしたら、今そこを気にする必要はないですよっ」

「大精霊達は、このダンジョンを完全攻略してからゆっくり考えましょう」

「……だな」


 あまり繰り返すのも野暮か。

 そう思っていると、さっきから妙に静かなミスティと目が合った。彼女の眼は潤み、今にも泣きそうになっている。


「……ん。ショウタ、第四層のクリア、本当にありがとう。……大好き」


 俺は彼女を抱きしめ、涙を拭う。


「おうっ。残り一層も頑張ろうな」

「……ん。でも、無理はしなくていいよ。私達としては、これだけでも十分だから」

「どうしたんだよ急に。残るはあと一層だけじゃん」

「……」


 ミスティは悲しげに顔を歪めた。

 なんだなんだ?


「あの階層は、ショウタとは相性が悪いから、やめておいた方が良い」

「そうなのか?」

「というより、あの階層と相性の良い人なんて、多分いない。いたとしたら、ただの人格破綻者」

「そこまで言うか」


 それに賛同するかのように、うちの彼女達も黙りこくっている。俺以外はネタバレ有りだから全部聞いてるんだろうけど、そんな特殊なところなのか。

 まあだからといって、諦める気はないが。


「悪いけど、攻略できるかできないか判断するのは俺だ。相性なんて知ったことか。止められたって俺は行くぞ」

「ん、分かってる。だけど無理はしないで。私はもう、故郷の平和より、ショウタの方が大事なんだから」

「ああ、ありがとな」


 俺から離れた彼女は、彼女達に揉みくちゃにされ可愛がられる。そして入れ替わるようにアヤネがやってきた。


「旦那様旦那様、この階層の未発見のワープゲートはどうされますの?」

「ああ、それなんだが……。別に良いかなって。春島も秋島も、それぞれにギミックがあるわけでもなくただ存在してるだけなら、似たような場所を探索するだけで見つかりそうだしな」


 5日前の夕方に、エスが春島からワープゲートを使った。そしてこの階層のゲートの出現時間は、確か32時間から40時間だったな。

 端数切り捨てで前回のエスが移動した時間は120時間前。エスが移動したタイミングがそのゲートの閉鎖ギリギリだった場合と、開通した直後だった場合で考えて、更には前者がずっと32時間を毎回引いた場合と後者が40時間を毎回引いた場合で考えると……。最速の場合は既に1周してて春島に出現してる可能性もあるし、最遅の場合は、一つ前の島にある可能性もあるか。


「ちなみにゲートの出現順番は、季節順ではないよな? 春と秋で見つかってて、連続してるんだから」

「ん、そう。春、秋、その後は夏と冬どっちかが交代する順」

「春島ならいいとして、夏か冬どっちかにある可能性もある訳だ。どっちももうこりごりなんだよな……」

「旦那様の『運』なら、春島にあるかもしれませんわよ?」

「まあそうかもしれないが」


 出現位置が島の固定位置に湧くだけだというのなら、わざわざ探す必要もないだろう。正直、あんまり乗り気になれない。

 一応、答え合わせだけはしておくかな。


「ミスティ。石碑の内容を知らないから当てずっぽうになるが、ゲートの出現位置は島の端っことか特定の場所でのランダム沸きか?」

「ん。正解」

「ランダム数は最大8とかか? それとも4?」

「ん。4」

「それだけ聞ければ満足だ」


 俺はマップを開き、マップの何もない場所をタップした。


【未確定地域の情報を探査しますか?】


【YES/NO】


「YESだ」


【探査対象の空間情報を計算中】

【探査対象に地下空間の有無を確認中】

【探査対象に生息するモンスターを観測】

【探査対象の知覚妨害機能を検査中】

【探査対象エリアの魔力の流れを観測】


 『アトラスの縮図』効果で、第四層の全てが網羅された。

 肝心のワープゲートだが、ちゃっかりと春島に存在していたようだ。場所は島の最奥。破壊された池よりもさらに奥の森の中だった。タップしてみれば、ちゃっかり38時間ありやがる。流石俺の『運』というべきか?

 行かず仕舞いだった訳だが。


「てか、まだあの池は復旧してないのか」

「まだ2日経過しただけとはいえ、変化がないですね」

「今までなら、数日あれば何らかの回復の兆しは見せてたはずなんだけどねー」

「それだけ特殊な場所ということですわね」

「ん。エス同士の対決はもっとずっと先になりそう」


 彼女達が池の今後について話し合う中、アイラは何か思いついたらしい。


「もしかして……いえ、流石にそれは」

「アイラの言いたいことはわかるぞ」

「本当ですか?」

「ああ、他の3大精霊を倒さなきゃ、ずっとこのままかもしれないってことだよな」

「はい、その通りでございます」


 やっぱ、そこに思い至るよなぁ。

 もしかすると、あの大精霊はもっと大きなものの布石でしかなく、4種全ての大精霊撃破で更なる先が待っている可能性があると。

 でもそうすると、大精霊ですら倒すのに数時間再起不能なくらいボロボロにさせられたのだ。さらなる強敵なんて、エンカウント=死を意味する。例えエスがいても、今の俺じゃ勝てる気がしない。

 『結界破壊』が『風の大精霊』だけの特権の可能性もあるが、最悪を想定して動く必要があるだろう。あれを前提に考えれば、相手の攻撃は全て致死レベルであり、全て回避する必要が出てくる。ならばせめて、が放つを回避できるくらいには、目と身体を養う必要があるだろうな。


「さっきも言ったように、今は気にしないようにしよう。んで、このまま春島に行って既存のワープゲートを使う気にもなれないし、ここから第五層に直接移動しよう」

「かしこまですわ!」

「ん。ギュッてする」

「第五層の下見ですね」

「どんな景色かしらねー」

『ポポー』

『プル? プルル』

『ゴ』

『♪』

『キュイ』


 彼女達はいつものように引っ付き、小型化したエンキ達は足元に集う。


「ではご主人様、そこでエス様と合流して帰還ですか?」

「ああ、そのつもりだ。移動地点にいなくても、あいつなら勝手に感知して見つけてくれるだろうしな」


 さて、ついに最下層である第五層か。ミスティがあんな事を言っちゃうような場所だ。何が待ち受けているのやら。

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