ガチャ575回目:炎の友人
『~~♪』
複数の炎がこちらに向かって飛んでくるが、セレンはいつも通り涼しげな声で触手を振るう。そうすると分厚い水のカーテンが複数出現し、飛来してきた全ての魔法を防ぐのだった。
「ん。セレンすごい」
『~~♪』
「セレンは触手1本ごとに個別の対応ができちゃうからな。頭の良い子なんだ」
「んふ、ショウタ君の親バカが出てるわね」
「子供は皆可愛いのですわ!」
『キュキュゥ!』
『~~♪』
セレンは続けて触手を3本使って、先ほど出した水の壁を俺たちを囲うように出現させる。精霊達がレベル5の範囲魔法を使ってくるのは、今の所精霊石に釣られてやってきた時だけだが、もしもがあるからな。いつ使ってきても良いように、準備はバッチリということか。
相手の足元に発生させ、範囲攻撃で巻き込む魔法は、見えている場所でないと発動ができない。そのため、水の壁で視界を遮ってしまえば、目標を目視できず、きちんと発動させることができないのだ。
「すごいですわー!」
「ん。けど、こっちも攻撃できない」
『ゴゴ!』
エンキが片手を上げると、水の壁に沿うように岩のスロープが出現した。連中の標的はあくまでも、最初にヘイトを買ったセレンなので、上から狙い撃ちにすれば問題ないと踏んでの判断だろう。
「エンキ、助かりますわー!」
「ん。ありがと」
2人が登っていくのを見届けて、改めて水壁の向こうに広がる精霊たちを見る。数は徐々に増えていて、現在40前後といったところか。
だがいくらなんでも立ち止まったままではこれ以上呼び寄せることはできないわけで。セレンの庇護下にいれば心地よいが、いつまでも甘えっぱなしじゃいけないよな。
「悪いなセレン。ここでボーッとするには俺の性に合わない」
『~~♪』
「いってらっしゃい、ショウタさん」
「ここで応援してるからねー」
「ああ、行ってくる!」
俺は安全な水の砦から飛び出し、炎天下の戦場へと繰り出すのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
うだるような暑さの中、飛んでくる炎魔法を至近距離で回避し続けること数十分。ようやく周囲の精霊たちを殲滅したところで、俺は自分が汗だくになっていることに気が付いた。
「……あー。こりゃ、次の島に行く前に風呂だな」
「そうですね。皆で入りましょうか」
隣に現れたアイラは一人涼しげな表情だ。それもそのはず、彼女は一度たりとも攻撃をしていなければ、被弾もしていないため、ずっとバブルアーマーを維持し続けていたのだ。
外からの日差しを完全シャットアウトしてる以上、この熱気とは完全に無縁なのだろう。ちょっと羨ましいが、無駄に暑い中バブルアーマー無しに動き回れとも言いたくないしな。アイテム収集と言う面倒な役目を負ってくれているだけで感謝だ。
けど、羨ましい事に変わりはないので、彼女にはこのあと風呂場で頑張ってもらおう。そう思っていると、急に辺りが涼しくなった。
どうやら水のカーテンを展開したセレン達が近付いて来たらしい。
「わたくし達も旦那様を労いますわ!」
「ん。お風呂、最近好きになってきた」
「そりゃいい傾向だな」
「ん。皆とお風呂、楽しい」
ものぐさなミスティがそう言ってくれるのは嬉しい変化だな。
「ふふ、ショウタさん。いっぱい労ってあげますね」
「もっと男前になるよう磨いてあげるわ」
『~♪』
『ポポー?』
帰路に着こうとしたところで、エンリルが不思議そうにしている。なんでも、俺がマップ埋めはしないことを不思議に感じているようだ。
「まあ、中途半端に埋まってる現状はそれなりに気持ち悪いが、埋めても結局レアボスとの戦闘はできないからな。個人的なこだわりではあるが、マップが埋まっても、いる事が分かっている敵と戦えない以上、制覇率100%には絶対に届かない。なら、今慌てて埋める必要もないかなって」
『ポポー』
「それに、エンリルだってこんなクソ暑い中を飛びたくないだろ?」
『ポポー……』
ゴーレムとはいえエンリルも鳥型の生命体だ。暑さにだってバテるだろう。
『ゴ、ゴゴ』
『プルプル』
「だな。休憩が終わったら、新しい仲間を迎え入れるか」
『ゴ!』
『~~♪』
『プルプル!』
『ポポ!』
そうして休憩がてら俺達は全員でお風呂に入り、洗ったり洗われたりして、夏島で掻いた汗を洗い流した。
風呂から上がった俺たちは、遅めの昼食の準備をしつつ、先ほどの戦果を確認することにした。
「まず精霊の撃破数ですが、2戦目かつ悪天候という不利な環境の中でしたが、それなりの数を倒すことができました」
「ん。いっぱい倒した」
「ワクワクですわ」
『~♪』
「精霊石はいくつになった?」
「はい。精霊石の数は3。累計348体の精霊を討伐できました」
「「「「「おおー」」」」」
精霊石が3か。これなら、今後のレアボス用、中央の噴水用、素材用に分けられるな。まあ、レアボスに挑む際は準備運動で周辺のを蹴散らしてからでも良いんだが。吸収する精霊の数に応じて弱くなる可能性もあるしな。
どうせなら、全力の大精霊と戦いたいところだ。
「んじゃ、そうだな。『炎熱操作Lv5』のスキルを40個頼む」
「畏まりました」
まずは『炎熱操作Lv5』を圧縮し、LvMAXを20個にする。そしてそれらを再び圧縮。
『蒼炎操作』というスキルに変化したそれを、LvMAXを2つ作り上げた。うち1つは、俺がゴーレムを作成するために必要なので取得。そこにアイラがゴーレムコアⅣを手渡ししてくる。
「サンキュー。そんじゃ、早速……」
セレンを作ってから、かれこれ2ヶ月ぶりの、5人目の仲間を作る時が来た。
俺は『蒼炎操作』で蒼い炎を操り、『ゴーレムコアⅣ』に自身の身体が炎であることを認識させる。
炎を吐く神聖な生き物と考えると、真っ先に浮かぶのは炎を操るヘルハウンドやサラマンダーだろうか。けど、犬はケルベロスで間に合ってるし、トカゲはそんなに惹かれない。てか、別に既にある種に沿って作る必要もないと思うんだよな。なので炎を操る新種の生物を作り上げてしまっても構わないわけだ。
となれば、モル君みたいな小動物っぽい感じの、モフモフ系がいいかな。
エンキはツヤツヤ、エンリルはふわふわ、セレンはツルツル、イリスはスベスベだからな。うん、ちょうどいいバランスだ。
なので造形は、デフォルメしたゆるキャラみたいな雰囲気の、オコジョとウーパールーパーの中間みたいな見た目で、更には体毛がモコモコモフモフで、尻尾も太めな感じで……。
よし、できた!
『……キュイ?』
目の前には青い体毛を持った巨大なオコジョが二本足で立っていた。彼は卵から孵ったばかりの小鳥のように、不思議そうに俺をみている。
「お前の名前は、そうだなぁ。強そうな名前でアグニとイグニス、どっちがいい?」
『キュイ? キュイ……キュイッ!』
アグニが良いらしい。
アグニは嬉しそうに前足をパタパタさせた。
うん、名前負けしてる気もするけど可愛いからいいか。
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