ガチャ574回目:大量撃破

 翌日、目が覚めると疲労が取れたので、再び春島へとやって来ていた。


「そんじゃ、エンリル頼むわ」

『ポポー!』


 多種多様なスキルを獲得したエンリルは、現在風属性に対して、圧倒的に優位な状態へとなっていた。

 『風耐性LvMAX』で50%カット。『魔法耐性Ⅲ』で魔法関係スキル15%カット。それだけなら他の面々と変わらないが、今の彼には『風』のスキルがある。

 このスキルは、自分の意思一つで自在に風を操ることが可能となるスキルだ。エスを見ていて分かったことだが、相手の攻撃が風属性なら被弾を無効にしたり、更には跳ね返すことだって可能にするようだ。そのため近接攻撃を一切して来ず、『風魔法』しか使ってこない精霊相手の場合、戦況を維持するだけならエンリルは滅茶苦茶相性が良いのだ。

 ただまあ、大精霊が使ってきたような即死性の高い膨大な質量を持つ攻撃は、いくら風属性だからと軽減はできても、反射や無効化まではできないみたいだが。


『ポポー!』


 そんなエンリルに任せたのは、無数の精霊が蔓延るこの島で、魔法を使って釣り出しをして、精霊のヘイトを一身に負ってもらうことだった。本来なら自殺行為のような行為も、エンリルなら無傷でやり過ごせてしまう。

 エンリルによって連れてこられた精霊は、マップで見る限りでも100や200はいそうだが、なんかまだまだ増えていないか? 風属性の魔法で釣り出したからか、それとも真核によって影響範囲が増幅しているのか。

 理由は分からないが、精霊石は複数欲しかったところだ。どんどん処理しよう。


「アヤネ、ミスティ。的が大量に来たぞ」

「燃やし尽くしますわ!」

「ん。こんなのどこを撃っても当たる」

「アキとマキもやるか?」

「うん、やるやるー!」

「魔法や武技スキルの試し撃ちには、ちょうど良いですねっ」

「んじゃ、俺も頑張りますかねっ!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして集まって来ていた精霊たちを全て蹴散らす頃には、俺のレベルは41から98にまで上がっていた。

 レベル80の通常モンスターが相手とはいえ、ここまでレベルが上がるとは、一体どれだけの数を撃破したんだ?


「アイラー」

「はい。625体です。それから精霊石も6個です」

「おおう……」


 マップを開けば、島に残っている精霊は、今いるところから大きく離れた島の端っこ付近にポツポツといるくらいで、残りは全部倒してしまったらしい。もう数えるほどしかいなかった。


「こんだけ減ったなら、もう良いだろう。んじゃ、ちょっと視界を飛ばしますかね。『鷹の目』!」


 今回は、事前に皆から距離を置いていたので、誰も巻き込まずに発動できたようだった。

 そうして俺は目的の場所まで視界を飛ばし、その存在を認識する。


「……あー。池はまだ全然か」


 池の水は干上がっているというか爆散した時のままだし、穴はもう貫通こそしていないものの、塞ぎきるにはまだまだ時間がかかりそうな様子だった。丸一日経過してもこんな状態じゃ、大精霊との再戦は一週間以上かかりそうだな。

 俺は『鷹の目』を解除して情報を共有した。アイラもその間、散らばっていたドロップアイテムを回収していてくれたようで、移動する準備はバッチリのようだ。


「では皆さま、帰還しましょう」

「次は夏島ですわねっ!」

「ん。いっぱい撃ち抜く! でも暑いから、あそこ嫌い」

「次は炎属性の精霊ですから、安全に釣り出しをして耐えられる人員はいませんよね。私達は大人しくしておいた方がいいですよね?」

「むぅー。せっかく楽しくなってきたところなのにー」


 アキがぶーぶー言っている。

 まあでも、マキの言うように安全第一で行くべきだな。炎属性の子を作るとしても、それは一旦精霊石を獲得してからだ。


「悪いなアキ。ストレス発散はまた後でな」

「はーい」

「アヤネ以外は『元素魔法』はなくとも全員『水魔法』はMAXだから、広範囲魔法が使えるっちゃ使えるんだけど、あれってそんな集団で使ってもあんま意味ないもんな」

「そうですね。高レベルの『水魔法』は、コンセプトとしては大量の水で圧し潰すスタンスがほとんどですし、大勢で使っても洪水を引き起こして足元がぬかるんでしまうだけといいますか……」

「アイラのお仕事が増えるだけですものね」


 だよなぁ。


「そうですね。アイテム回収をする身としては、地面はぬかるんだ挙句、アイテムは四方八方に流されることを考えると、あまり望ましい展開ではないですね」

「ん。『水魔法』は攻撃よりも阻害に重きを置いた魔法。いくら炎の精霊が相手だとしても、倒すだけなら非効率」

「攻撃に転じられるのは『濁流操作』や『海魔法』くらいだし、高レベルの使い手もセレンくらいだからな。頼りにしてるぞ」

『~~♪』


 そうして雑談しながら中央島を経由して、青い大地の夏島へと降り立った。


「うっ!?」


 島に入ると同時に常夏の熱気が俺達を襲い、快適とは程遠い環境に、自然と足が重くなる。


「……熱気や日差しの強さは『ハートダンジョン』の第二層とそう大差はないかもしれないが、海が無い分、もっと暑く感じるな」

「ん。めちゃくちゃやる気削がれる。あんまり長居はしたくない」

「同感ね……。しかもこんな超暑い中、敵さんは『炎魔法』連発してくるんでしょ? やってらんないわ」

「ヘロヘロになっちゃいますわ~。ですが、セレンは身体がひんやりしてて、どこに触れても気持ちが良いですわ~」

『キュ~……』

『~~♪』


 セレンは引っ付いてくるアヤネとモル君を優しく触手で受け止めつつ、空いている触手の一本を振るう。すると俺達の頭上に水の傘が出現した。

 たったそれだけで、日差しによる熱は大幅にカットされ、更にはひんやりとした空気が辺りを覆い尽くした。


「「「「「おお~」」」」」

『~~♪』


 『濁流操作』による高度な水の運用だろう。この行為は周囲の精霊を呼び寄せてしまうが、あのうだるような暑さの中で戦い続けるよりずっといい。そんな中アイラはしれっとバブルアーマーで熱をカットしているが。

 魔法組はさておき俺やミスティはそうするわけにはいかないからな。『泡魔法』による泡は、内側からの攻撃にめっぽう弱い。剣や銃を使った瞬間弾け飛ぶのは目に見えてる。


「ショウタさん、何体か近付いてきました!」

「魔法の準備をしてる個体が、全部で4体いるよー!」


 魔法を使用する個体がいるという事は、つまるところそいつらは『真鑑定』の有効距離内にいるということだ。俺は早速近い個体を探し出し、その対象を視た。


*****

名前:ファイアーエレメンタル

レベル:80

腕力:0

器用:0

頑丈:1500

俊敏:200

魔力:30000

知力:1500

運:なし


パッシブスキル】炎耐性LvMAX、物理耐性Ⅱ、魔法耐性Ⅱ、斬撃耐性Lv2、貫通耐性Lv2、打撃耐性Lv2

マジックスキル】炎魔法Lv5、火炎操作Lv5、炎の鎧Ⅱ、魔力回復Lv5


装備:なし

ドロップ:炎の精霊のコア

魔石:中

*****


 ステータスは変わらずか。そしてなにより注目のポイントは、待望の炎属性スキルだ。しかもそれが4種類も。

 これは、狩りまくらないと勿体ないよな!

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