ガチャ567回目:アナザー
『■■◆■』
「んん?」
人型となった精霊が俺に向かって再び何かを話したように思えたが、言語として成立しているのか謎だ。まるで聞き取れやしない。
半透明な人間のような姿だが、あの背格好に風貌は……。覚えしかないぞ?
「他人の空似か……?」
まあいいや、それよりどんな性能してるんだ?
*****
名前:風の大精霊(アナザーボス)
レベル:450
腕力:5000
器用:5000
頑丈:3500
俊敏:4500
魔力:∞
知力:5000
運:なし
【
【
【
【
★【
装備:なし
ドロップ:大精霊の真核【風】、ランダムボックス
魔煌石:特大
*****
「『風』持ち!?」
それになんだこの『
『■■◆?』
大精霊は俺に向けて指を刺し、何か怒っているような感情を発露した。
『■◆◆■!』
「だから何言ってるかわか――ッ!?」
一瞬だった。
直感的に回避行動を取ろうとしたが、動かすことができたのはせいぜい首から上だけだった。後になって思ったことだが、『予知』も無しによく避けれたなと思う。
「ぐッ……!」
つい先程まで頭があった場所を、不可視の『死』が通り過ぎていく。鈍い痛みと共に、視界の半分が鮮血に染まる。
何が起きたか分からなかったが、初めて感じた激痛のおかげで、逆に冷静になれた気がする。『思考加速』と『並列』を活用して、思考をフル回転させた。
「……」
まず、二重に展開していた『金剛外装』と『超防壁』だが、大精霊が放った『死』がこの身を掠めるまでは、確かに展開していたはずだ。だが、今はもうない。大精霊の攻撃によって消し飛ばされたのだろう。
理由は単純明快で、アレが持つ『結界破壊Ⅲ』だろうな。警戒はしていたが、まさか奴の
つまり、大精霊の攻撃は全て回避しなければならない事を意味していた。頼みの綱の二連外装は今回なんの役にも立たないし、一発一発が即死級の威力を秘めている。そう思うと、彼女達ではあまりに荷が重い。
唯一戦えるのはミスティくらいだが、不可視の攻撃を持つ相手に対して攻撃をバラけさせるのは得策ではない。
状況を理解し、戦いを再開しようとしたところで2つの輝きが俺に向かって飛んできた。
「「パーフェクトヒール!!」」
マキとアヤネの『回復魔法』だ。使う機会が今までとんと無かったが、なんでも吹き飛んだ四肢すら蘇るとかなんとか。
そんな強烈な光が俺に着弾すると同時に、痛みが消え、視界の赤も時間が巻き戻るように無くなっていく。痛みによって阻害されていた思考もクリアになり、視界も晴れる。本来はこの治療はありがたいものだが……。
『■■』
不味い。大精霊の興味が彼女達に向いてしまった!
奴が動くよりも先に、注意を惹き直さねば!
「フルブースト! グングニル!!」
『◆◆!?』
全力投擲のためにグングニルを構えるも、足元から不穏な音が聞こえた。
『ビシビシッ、パキンッ!』
「!?」
突如として宙に投げ出されてしまった。高速化した思考の中で、砕け散った足場が目に入る。
どうやらグングニルの重量に耐えきれず、砕け散ったらしい。
『◆■■!!』
グングニルの存在感によって再び大精霊の興味がこちらへと向き、更には指を指して来る。不可視の『死』が再び飛来するが、『虚空歩』で回避した。
『■◆! ■◆!』
「ちっ!」
大精霊は何度も不可視の『死』を放つが、その度『空間魔法』と『虚空歩』で連続回避を続ける。奴の注意を惹けた事は朗報ではあるが、それだけじゃ足りない。俺がどれだけ脅威的な存在で、目を離したら不味いか、その身に刻んでやる!
「うおおおおっ!!」
『虚空歩』と『神速』の同時使用で大精霊の直上へと一気に飛び、そこから真下に向けて照準を定め、全身全霊の投擲を行なった。
「砕け散れ!!」
『ドガッッッ!!!!』
『◆■!?』
超高速で発射されたグングニルは大精霊のボディを易々と貫き、そのまま地面に激突。噴煙を巻き上げながら島を突き破っていった。
「ぐえっ!」
まるで全身の力が抜け落ちたかのような感覚を受け、俺はろくに受け身も取れず地面に落ちた。地上ではいまだに浮島を揺さぶるほどの地響きが続いており、砂煙のせいでまるで周囲が見えない。
マップを開けば大精霊を示す特大の赤丸が存在しているし、撃破はできていないようだが……。
『ポポー!』
遠くからエンリルの声が聞こえ、砂煙が取り払われ始める。今ならヘイトも俺に向いてるはずだし、大丈夫と判断したんだろう。もしくは、俺がまともに動けない状態であることを察して動いてくれたかな。どちらにせよナイスだ。
「はぁ、はぁ……」
しっかし、グングニルか。
『神器』というだけあってとんでもない威力だが、それ以上にやばい武器だな。フルブーストを使ってまで投げたのに、たったそれだけで体力の限界までフルマラソンしたかのような疲労が全身を襲っているし、回復する気配がない。
もしかしなくても、あの投擲って、俺の体力と引き換えに威力が足されてたりするのか……?
そんな風に考えていると、次第に砂煙が晴れていき、その頃には辺り一帯の地響きは収まっていた。
「……ああ、こりゃ酷い」
美しくも神秘的だった池は、無惨な姿へと変貌していた。水があったであろう場所には、ひび割れた大地が剥き出しになっていて、その中心には世界の底が見えるかのようにどこまでも続く大穴が空いていた。
あの槍、勢い良すぎて第四層の底へと落下していったんじゃないだろうな?
『■、◆■、■◆』
声がした方へと向けば、そこには胸から下が吹き飛んだ大精霊が転がっていた。さしもの大精霊も、あの威力を前に無事では済まなかったらしい。
だが、大精霊の身体は魔力で練られた物だ。無限の魔力を持つ大精霊には大した痛手にはならないかもしれない。このままトドメを刺してやらなきゃ、復活しかねない。
「……ぜぇ、ぜぇ」
『■、■……』
大精霊の指が俺へと向けられる。
「だから、何言ってるか、わかんねえ……っとぉ!」
大精霊の指先から『死』が放たれたが、それはもうこの戦闘で何度も視ていた。至近距離の為、余裕というわけではなかったが、警戒していた以上当たってやるつもりはない。
「お前を倒すのに、近付くのはリスキーだ。そしてお前みたいな強敵相手に、遠慮はいらないよな」
首飾りを装着し、中に込められた魔力を全力で引き摺り出す。
「マジックミサイル、10倍!!」
『◆■■……!』
「だから、何言ってるかわかんねえっての!!」
放たれたマジックミサイルは、音もなく大精霊を飲み込むと、浮島を縦に貫通する光の柱が立ち昇った。柱の内部ではいくつもの爆発が起き、高い耐性を持つ大精霊も、粉々になって消えていった。
【レベルアップ】
【レベルが96から581に上昇しました】
「ふぅー……つかれたぁ」
俺は大の字になって寝転がると、俺の傍にドロップアイテムが散らばった。散らばったという事は次はないという事だ。安心して休めるな……。
「……あ、そうだ」
光の柱はもう消えているが、アイテムがこれやグングニルの穴に落ちていったら大変だからな。仲間達はまだ遠巻きに見ている段階だし、ここは俺が急いで集めなきゃ。
「……あれ? そういえば、通知が来ないな?」
それに、投げたら帰ってくるはずのグングニルも戻ってこないし。
もしかして本当に地の底まで落ちて行ったのか……?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます