ガチャ565回目:使い道を求めて
アヤネとミスティを労っていると、再び皆で集合し、競い合っていた2人を讃えた。
「それで、結局宝石の内容は、それだけだったんだ」
「素材としても使えるけれど、餌としても使える、ですか……。謎ですね」
「ミスティ様、これまでにこのアイテムのドロップ報告はありましたか?」
「ん。現物を見たってひとはいないけど、似たような話は聞いたことがある。ずっとこの階層で戦っていると、精霊達が急に攻撃的になって、無作為に魔法を使い始めるって話。もちろんエスは未経験」
「では、それが精霊石ということですの?」
「まあ、さっきまでの精霊の動きを考えれば、そうなるよな」
エスはまあ良いとして、一般の冒険者が出せた記録があるってことは、要求値はそこまで高くはないのかもな。基本的にこの階層で狩りをする人達は中央島でキャンプを張るだろうし、そうなれば同じ属性の精霊を連日ボコる訳だ。となれば誰にでも100体連続討伐は余裕だろう。
んで、こんな階層で狩りをする手練れの冒険者チームなら、精霊の変化にもいち早く気付くはずだ。だから精霊石がドロップしたとしても、攻撃的になった奴らの中心点で留まるなんて馬鹿な真似はせず、すぐに撤退していたはずだ。
そうして撤退している間に知らぬ間に宝石が破壊され、再び精霊達は非活性化して鎮まる、と。そんな感じかな?
「しっかし、精霊石かぁ。扱いに困るものが出たな。レアの代わりに出た以上何かしら意味があるんだろうけど、出した瞬間に周囲の精霊達が攻撃的になるんじゃ、色々と面倒というか……。逆に精霊達を釣るのには使えるだろうけど、そうすると遠距離持ちでないと対処が面倒になるわけで。ううーん」
あとは宝箱から出なかったって言うのも謎だよな。
まあ、見た目的に宝箱を持ち運べるような連中ではないから、そういうものだと言われるとそうなんだが。
「ん。ショウタが珍しく困ってる」
「そうですわね」
『ポポー?』
思い悩んでいると、エンリルが申し出てくれた。久しぶりに
「ん? ああ、そうだな。マッピングしておくか」
『ポポ!』
周囲に精霊達がいないことを確認してから『視界共有』でエンリルと繋がり、マップを起動する。現時点での第四層マップ反映率は50%ほどといったところか。
マップの大部分は大地も何もない空なので、この階層に来た段階で、ほとんど埋まってしまっていた。マップでこうなった以上は、シルエットで隠された4つの島と中央島以外には、大地などない事を示しているが……。隠されているものがある場合は探査機能を使用しても映らない場合があるんだよな。
第三層山頂の隠し階段のような前例がある以上、今見えている情報が全てだとは思わない方が良さそうだ。
「エンリルが調査している間は、向こうの木陰で休もうか。木々が生えている辺りは、精霊が湧きにくいみたいだしな」
そうして皆で腰を下ろして各々がくつろぎ始めるが、マキやアイラは少しやりづらそうにしていた。
「2人ともどうした?」
「いえ、その……。いつも何気なく使ってる魔法が使えなくなると、大変だなって思いまして」
「ご主人様をお世話するための濡れタオルも、いつもは水を魔法で出してから使っていますからね。今回は事前に、ミスティ様からこの階層の特徴をお伺いしていたので準備はバッチリですが」
「あー」
確かに、いつも使えていたことが途端にできなくなるとストレス感じちゃうよな。マップで敵の場所は分かるけど、正確な距離は目算でしかないし、こんな状態じゃ常に監視されているようなものか。
気が休まらないのも仕方ないか。
「2人とも、いつもありがとな」
「いえ、好きでやってますから」
「これが私の勤めですので」
マキは天使のような笑顔を浮かべ、アイラは相変わらずそっけない感じの返事をする。まあでも、アイラのこの反応からも愛情を感じられるから全然いいんだけど。
「……おっ?」
探索を続けるエンリルの視点で、気になるものが視界に入り込んだ。
「ミスティ、この島の奥に池みたいなのがあるか?」
「ん。ある」
マップには池の存在は反映されなかったが、そこにはおびただしい数の精霊たちが集まっていた。
「こんなに集まってるのも、平常運転か?」
「ん。いつものこと」
「ちなみにこの階層にも石碑はあったんだよな。風の島の石碑はここにあったり?」
「ん、ハズレ。全然違う場所」
「おっと、当ては外れたか。ちなみにそれ、残骸は残ってるのか?」
「ん。この階層は、第一層や第二層と同様にワープゲートの発見と同時に消失した。残骸が残ってたのは第三層だけ。でもそれも、先日のアレで完全に無くなった」
「ふむ」
ということは、この階層の石碑はレア関係のギミックとは関係なさそうか。
「じゃあ、ここに大量の精霊が集まってる件について、特に理由は判明してないってことだな」
「ん。私もエスも、今までは『そういう場所』としか認識してなかった。けど、ショウタに会ってからは、何かあるように思えて来た。不思議」
「まあ、本当に何もないかもしれないけどな」
そもそもの謎として、あの精霊石は、精霊の好物であるにもかかわらず、なぜ攻撃対象にされるのかが分からない。
好物なら食べるとか取り込むとかそういうことをすべきだろとは思うけど、その辺は人間と精霊との種族的な差なんだろうか?
なんというか、そこにも謎が隠されていそうなんだよなー。
『ポポー!』
考え事をしているうちにエンリルが元気よく戻って来た。ひとまず、調査はこの風の島だけにしておいたので、すぐに終わったな。他の3島に関しては、何が起きるかわからんから後回しにしたのだ。
「改めてマップで見ても、島の全域に風の精霊が散らばってる感じだな。んで、大量に密集しているのはさっきの池のポイントくらいか」
分布としては池を除けばだいたい均等。木々があるエリアだけは分布数が半減ってところか。どの赤点をタップしても表示されるのはウィンドエレメンタルだけ。やっぱ1つの島に存在するモンスターは、本当に精霊が1種類だけで、レアがいない? なら、この階層はたったの4種類だけということに……。
いや、それはないはずだ。でないとスタンピードの停止条件も、紋章も入手できないことになってしまう。どこかに別の道筋があるはずだ。
「よし、それじゃこのまま連中の密集地に行こうか」
あの池に何かあると良いんだけど……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます