ガチャ564回目:精霊ホイホイ
突然出現した宝玉に対し、皆興味津々で近付いて来た。
「綺麗な宝石ですね」
「ん。内部がキラキラしてる」
「『鑑定』しても『宝玉』としか出ませんわ」
「かなりのエネルギーが内包されているように見えます。パワーストーンの一種でしょうか」
「ショウタ君、なんて出てるか教えてー」
「ああ」
名称:風の精霊石
品格:≪固有≫ユニーク
種類:素材
説明:風の精霊の力が濃縮された宝石。攻撃に使用する事も素材にする事も可能。
★一部精霊の大好物
「大好物? ……全員回避!」
慌ててその場から飛び避けると、俺達のいた場所に複数の攻撃魔法が炸裂した。
発動したのはレベル4のストームが4つに、レベル5のサイクロンが2つってとこか。今までサイクロンなんて使ってこなかったのに、いきなり本気出すじゃないか。
俺は急遽『空間魔法』で空中に足場を作ることにした。精霊石を狙っているなら、こうしておけば彼女達が狙われる心配はないはずだからな。
「皆、大丈夫か!?」
「大丈夫よー!」
「びっくりしましたわー!」
しっかりと『金剛外装』も残ってるみたいだしうちの彼女達は全員無事みたいだな。今は安全のために、エンキ達のいる少し後方に固まっているようだ。
安心したところで敵影を確認すべく周囲を見渡してみるが……近場に、それらしき影は無かった。
「……ん? いない?」
攻撃を仕掛けてきた相手をいくら探せども、影も形もない。念のためマップを開いても、やはり周囲にはおらず、100メートルくらい離れたところにポツポツと反応があるくらいだった。
今までスキルを使ってヘイトを集めていた時は、最大でも50メートルくらいだったはずだ。今回もそれくらい近くにいるもんだと思っていたが、まさか……。
『ゾワッ』
『全感知』に組み込まれた『危険感知』が働き、前後左右、及び足元が危険だと警笛を鳴らす。俺はすぐさまその場から飛び上がり、離れた場所に足場を作成した。
『ビュン』
『ゴォォォ!』
『ザザザザ!!』
今度はさっきよりも大多数の風魔法が飛び交い、設置していた最初の足場は粉々に砕け散った。
そして今の魔法の軌道から見て、確信した。こいつらは全部、100メートルくらい離れた位置から感知してきてる上に、そこから遠慮なく魔法をぶっ放して来ているのだ。その上、そこから近付いてくる気配すらない。
さっきまではスキルを感知しておびき寄せられた連中は、例えば感知時は50メートル離れた位置にいても、10~20メートルくらいまで近づいてきてから魔法を行使してきていた。だというのに、極上の餌を前にすると、まるでお手本のような長距離固定砲台のスタンスを取るなんてな。
魔法型に相応しい動きをするじゃないか。『知力』はあっても知性はない。機械みたいな連中かと思っていたが、極上の餌があればスタイルチェンジしてくるんだな。
「って、感心してる場合じゃないな。いつまでも手をこまねいていても敵は増え続けるだけだし、一旦この精霊石はしまうか」
この精霊石、どうやら収納してしまえば、それ以上増える様子はないようだった。そこはまあ安心ポイントではあるが、連中はやっぱり近づいてくる様子はなく、あくまでも遠距離砲台モードを続けるつもりらしい。
相手の魔力が有限とはいえ、その最大値は今までになく潤沢だ。ガス欠を待つのは得策じゃないし、あまり待ち続けるとさっき倒した100体が再出現して、巻き込み事故によってさらなる地獄を見る事になる。
けど、近付いたら近付いたで、また魔法が広範囲に拡散してややこしいことになりそうなんだよな。
俺が巻き込む心配のない空中で囮になり続けている間に、どうにかして彼女達に任せたいところだが……。スキルや魔法無しにコイツを倒すのは骨が折れるだろうし。ここの階層は、スキルを使うと敵が集まってくる関係上、殲滅が大変だし難しいな。
「まあ考えてても仕方がないか。アヤネ、ミスティ!」
俺は遠距離アタッカーの2人を呼ぶ。その間も敵の魔法は散発的に飛んできており、赤点から察するに数としては45体ほどといったところか。
「はいですわー!」
「ん。手伝う?」
「ああ。アヤネは左から、ミスティは右から倒してくれ。距離はあるけど、2人ともいけるな?」
確認しつつも、俺は『クピドの黄金弓』を取り出した。
遠距離から仕留めるならこれだろう。
「ん。余裕」
「いけますけど、魔法で倒してしまって良いんですの?」
「ああ。どうやら奴らの感知は、術者を起点とした50メートル前後らしい。だから、魔法が着弾した場所から逆算される心配はなさそうだ」
「なるほどですわ!」
「あの短い戦闘で気付けるショウタ、すごい」
最近のミスティはなんでも褒めてくれるなぁ。
2人まとめて頭を撫でてあげたくなるが、まだ魔法が飛んで来てるし全部終わってからだな。
「ん。競争する?」
「競争ですのー?」
「いや、競争するとなると、アヤネが一方的に不利だろ」
「あら、そんなことありませんわ」
ふふんとドヤる。どうやら自信があるみたいだな。
「じゃあアヤネ、ミスティと2人で競争するか? それなら俺は見てるだけに徹するぞ」
「ん。面白そう。アヤネクラスの魔法使いは知り合いにいないから、どれくらいできるのか興味ある」
「良いですわよ!」
どうやらお互いに火が付いたらしい。なら任せてみるか。
そうしてさっくりとルールというか、ミスティが自身に対しハンディキャップを取り決め勝負が開始された。まあハンデと言っても、通常弾+武技スキルなしでというもので、他のEXに含まれるスキルは使うみたいだけど。
『パンパンパンッ!』
乾いた銃声が響く度、遠くの精霊達が煙へと変わって行く。ミスティの銃の腕前は相変わらず見ていて惚れ惚れするな。最近は偏差撃ちを頑張って練習してるみたいだし、努力ができる子は好きだ。
対してアヤネは、『元素魔法』で取得したオリジナル魔法を使うみたいだ。
「『赫灼砲Ⅲ』ですわ!」
アヤネの周囲に赤い大砲が3門出現し、轟音と共に巨大な砲弾が弧を描いて飛んで行った。そして目標地点へと着弾すると、周辺にいた複数の精霊を巻き込み大爆発を、引き起こした。
たった3発の砲弾が、8体もの精霊を煙へと変えてしまった。なんつー威力だ。
「ん。アヤネ、やるね」
「負けませんわ!」
これは、ちょっとアヤネの火力を舐めてたな。いつの間にかこんなに爆発力のある子に成長していたなんて。
まあ、このオリジナル魔法、実は『ブラックウパルパ』も使って来てたから知ってる魔法ではあるんだけど。実を言うとアヤネが『元素魔法』のLv3とLv6、Lv9で取得したオリジナル魔法は、『ブラックウパルパ』が扱っていた6属性の『
俺のマジックミサイル一択とは、別ベクトルに強力なスキル構成だよなぁ。
「ん。私の勝ち」
「負けましたわ~」
そう思っていると決着がついていた。
まあ勝負するにしては、ちょっと敵の数が少なすぎたかもな。もっと100とか200とか居て、敵が密集してたらアヤネにもワンチャンあったかもしれない。
「2人ともお疲れ、いい勝負だったな」
そうして俺は2人を労うのだった。
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