ガチャ563回目:精霊種

「精霊かぁ。初めて見るな」

「そっか、ショウタ君は見たことないんだっけ」

「実は日本のダンジョンにもいるんですよ」

「そうなのか。今まで遭遇したモンスターの中で、生物として例えられない相手は、今の所ゴーレムとスライムくらいなんだよね」


 今までの冒険を思い返していると、足元にエンキ達が集まって来た。


『ゴゴ』

『プルル』

『ポポー』

『~~♪』


 どうやら、俺がつい先程考えたことと同じ思考に至ったらしく、今から楽しみだと言ってくれているようだ。


「アイラ、アレの在庫ってあったっけ?」

「そうですね。あの時は変異種は3体しか倒してませんでしたから、Ⅳまでしか在庫がありませんね」

「あー……そういえばそうだったか。まあ、即戦力という訳にもいかなくても、それでもⅣならそれなりの事はできそうか」


 俺の言葉に皆も察しがついたらしく、女性陣はキャッキャとしている。分かってないのはミスティくらいだが、彼女は仕方ない。作ってるところを見た事がないしな。

 んじゃ、その時までにを考えておくか。


「……反応なしか」


 こうして近くで喋ってるのに、あのモンスター、こっちに攻撃してこないな。非アクティブなのか?


「ミスティ、このエリアってもしかして安全なのか?」

「ん。スキルや魔法」

「スキル? ……ああ、そういうことか」


 俺は試しに『剛力Ⅶ』を使用してみた。すると、今までこちらに無関心だった精霊達が、明らかな敵意をこちらへ飛ばして来た。

 周囲を漂っていた精霊達全てが、自身を中心にして風の魔力を集めている。どうやら、今のスキル行使だけで敵対扱いになったようだ。


「『魔力』を消費する行動が気に食わないってか?」

「ん。精霊の考えはわからないけど、多分そう」


 魔法特化型の敵に対して遠距離で相手をして得をするのはソロの時くらいで、集団で動いている時はデメリットが大きい。とりあえずは接近戦を仕掛けてみるか。


「ふっ!」


 最寄りの精霊に接近して剣を振るう。相手は防具もなければ肉体もない。謎のエネルギーの塊のようなボディしか持ち合わせていない。そのため、連中の攻撃手段は魔法しかなく、近接に持ち込まれた際の反撃手段がないのだ。

 だから、接近してしまえばこちらの物だった。


『斬ッ!』


 危なげなく処理はできたが、各種耐性に『風の鎧Ⅱ』。そして高めの『頑丈』のせいか、剣の通りがあまり良くはなかったな。

 それでも切り裂けたのは、剣の性能と『剛力Ⅶ』を事前に使用した影響かな。


「おっと」


 そうして考えていると左右から風の塊が飛んできた。今のはどっちもレベル4のストームかな?

 とりあえず、この調子で戦ってみるか。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺は全員にスキルの使用禁止を命じて、単騎で精霊の群れの中央に突っ込んでは、スキルを使用して集団からの猛攻を凌ぐ戦いを繰り返していた。

 その中で発見したことだが、コイツらもしかすると仲間意識というものが無いのかもしれない。まあ不定形なエネルギーの塊みたいな奴らだから、動物みたいな仲間意識はなくても仕方がないのかもしれないが……。


「うおっとっ!?」


 知覚外から飛来してきた魔法を、すんでのところで回避する。『悪意のオーラ』のおかげで、敵の害意には敏感になったが、逆に

には反応がどうしても遅れてしまうな。


「ショウタさん、左から追加2体です!」

「後ろからも3体来るよー!」

「おう!」


 こいつらの攻撃は、その全てがだ。そのため、俺が避ければその攻撃は当然直線上に飛んでいってしまう。

 仲間の方に飛んでいけば、各々が避けるなりミスティが撃ち落とすなりで対処できるが、それ以外の方向に飛んで行った時が厄介だ。現状この島には俺たち以外の冒険者の姿はいないが、元々この島にいる住人がいるわけで……。


「ご主人様。正面から、追加で2体来ます」

「ああっ!」


 つまり何が言いたいのかと言うと、戦闘中の精霊の攻撃は無差別攻撃のため、戦闘エリアの外側にいる精霊に激突する事があるのだ。しかも巻き込まれたそいつは、俺に対してヘイトを向けるのではなく、攻撃を放った術者に向けて襲い始めるのだ。


「旦那様、背後からまた来ますわー!」

「ん。ふぁいとー」


 また新しく、巻き込まれた精霊が魔法を行使したようだ。背後から魔力の塊が渦となって飛んできていた。


「ぐっ!」


 これがまた俺狙いの攻撃ではないのが厄介極まりない。四方八方から、たまたま通過点にいる俺に向かって、魔法が飛んでくるのだ。

 それが本当に面倒くさい。


「そろそろ良いか……蛇腹剣!」


 剣が鞭と変化し、振るった瞬間前方にいた精霊が煙となった。そしてその場で勢いよく回転すると、周囲を取り囲んでいた精霊が次々と煙となって消えていく。

 それを2回、3回と繰り返せば幾重にも重なっていたモンスターの群れは、全て煙となり消え去るのだった。


「ふぃー……。今ので、何体だ?」

「68体です。ご主人様にしてはスローペースですね」

「完全魔法型のモンスターは初めてだからな。慎重にならざるをえない」

「ショウタさん、お疲れ様です」

「激しかったわねー」

「ゆっくりコツコツでいいと思いますわ!」

「ん。モンスターを撃破することで変化するスタンピード進捗値だけど、この階層は1体あたりが比較的大きいと見られてる。今ショウタが倒した敵だけでも7、8時間分くらいは遅らせたはず。だから、焦る必要はない」

「そうなのか? だいぶ緩いんだな」


 とりあえず、このまま狩りを続けて100体討伐による変化を見るか。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして俺のレベルが90に上がった頃、ようやく100体討伐が完了したらしい。煙が集まり始めた。

 精霊種のレアモンスターか。何が出るかな……。


『……ポトッ』


「……?」


 一瞬、何が起きたか分からなかった。

 集まった煙が凝縮し、一つの小さな珠を落として霧散したのだ。拾い上げてみれば、それは緑色の輝きを放つ宝玉のような存在で、見る者を引き付ける力を持っているようだった。


「これがレアモンスター、ってことはないよな」


 宝箱が出る訳でもなく、いきなりアイテムを出すとか想定外がすぎるぞ。

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